今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたが保有している銘柄は、好業績の発表をきっかけに出来高を伴い大きく上昇しました。あなたはできるだけ利を伸ばそうと保有し続けていますが、ここにきて株価は、まだなだらかに上昇してはいるものの、出来高が小さくなってきています。このような場合、どうするのがよいでしょうか。
(1)トレンドの転換を確認してから利食うという基本を守り、反落を確認するまでは保有し続ける
出来高はテクニカル指標の信頼性を高め、市場のエネルギーを表します。とはいえ、実際の値動きに勝る重要性はありません。株価が上昇しているうちは、まだ上を狙いたいものです。正解は(1)の「トレンドの転換を確認してから利食うという基本を守り、反落を確認するまでは保有し続ける」になります。
ある銘柄が低位から中位、値がさへと上昇していく過程で、出来高に変動がなければ、売買金額は自然に上昇していきます。いっぽう、株価が上昇しているのに売買金額に変動がなければ、出来高が減少していることを意味しています。このように、出来高は資金の流入、流出を暗示していることから、相場の「エネルギー」を表してくれます。株価の位置と、そのエネルギーとを複眼的に判断することで、相場の強弱を推し量ることも可能です。これらのことから、相場の出来高と株価の関係は次の4つに大別できることになります。
1)株価上昇+出来高大=多くの資金が流入:相場が強い
2)株価上昇+出来高小=流入資金が増えていない:弱さを内包
3)株価下落+出来高大=資金が流出:相場が弱い
4)株価下落+出来高小=流出資金に歯止め:強さを内包
この見方を適用すると、今回の問題は「2)株価上昇+出来高小=流入資金が増えていない:弱さを内包」が当てはまります。当然といえば当然で、好業績の発表というニュースのインパクトが、いつまでも続くはずがありません。ニュースに反応して買った人たちは、どこかで利食いたいと考えています。また、仮に前年比で2割増益なのを、2、3週間で2割近く上げていたなら、株価収益率で見た残りの1年間の上昇余地はほとんどないことになります。好業績により買った時には割安でも、買われた後は割安ではないので、もはや新規資金を引き付ける魅力に乏しいのです。
もっとも、それでも株価が上がっているのは、上げ相場に入っているからとキャピタルゲインを狙った投機資金が入っているからです。このようにして相場は、買いが買いを呼ぶ、上げが上げを呼ぶ局面を迎えます。その時、レジスタンスとなる前の高値などの節目がないと、どこまで上げるか、じっと持ったままで待つことになります。チキンレースではないですが、恐くなって降りたら負けです。
どこまで上げるか、まだ分からない、手掛かりさえないのですから、選択肢(2)の「出来高の減少は弱さの表れなので、確実に利食うために今すぐ手仕舞う」は、単なる思い込みで不正解です。
ましてや、(3)の「出来高の減少は今後の値下がりの可能性が強くなっている表れなので、一気に利を伸ばすためにもドテン売りする」ようなことをすると、今まで上げたせっかくの利益を吹き飛ばし、一気に損失を出すに至る危険を冒します。弱さを内包することと、これから下げることとは違います。
とはいえ、上げた相場はいつか必ず下がります。そして、どこかで売って利益を確定しなければ、資金はその銘柄に張り付いたままです。そこで、利食いの目標を予め設定することになります。考え方の例とすれば、
1)前の高値近辺
2)ここからの更なる急騰
3)逆に、一定幅(率)の下落
4)ボラティリティの急低下
5)テクニカル指標の売りサイン
6)他の上げそうな銘柄との入れ替え
などです。
今回の問題の正解は(1)の「反落を確認するまでは保有し続ける」ですが、上記のように、他の手掛かりもあるのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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