あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[その他の問題]

あなたは会社勤めをしながらトレードし、コンスタントに年収の3割程度の利益を出せるようになりました。そこで、専業としてトレードに割く時間を増やせば、もっと利益を出せるのではないかと考えるようになりました。あなた自身、トレードが楽しく向いていると感じています。一方で定期収入がなくなることへの不安も多少あります。このような場合、どうするのがよいでしょうか?

正解は・・・
(3)少しでも不安を感じるようなら、専業トレーダーになるべきではない

トレーディングとは非常にデリケートなものです。プロのディーラーでも、A社で成功したからといって、B社でも必ず成功するとは限りません。あなたが会社勤めのかたわらで成功しているからといって、専業でも成功するという保証はないのです。あなたの定期収入がなくなることへの不安は、もっともな不安です。正解は(3)の「少しでも不安を感じるようなら、専業トレーダーになるべきではない」となります。


プロのディーラーが勤めている会社を変わると、様々な取引環境が変わります。使える資金、保有期間、ロスリミット、その会社の取引執行能力、機器、情報などに加え、自分に対する期待度や、周りの人間関係などです。そして、これらのすべてがディーリングに微妙な影響を与えます。売り買いで損益を分けるタイミングは、実のところ、紙一重であることも多いので、この微妙な影響が勝負を決めることもあるのです。


相場では技術がなくても、運があれば儲けることができます。たとえば、2007年の前半には、外為信用取引での脱税の摘発が相次ぎました。何億円や10数億円も脱税していた人たちの中には、主婦や高齢の不動産業者など、プロの投資家とは呼べない人たちがいました。私は、その人たちの運は強いと思います。2007年8月にはサブプライム・ショックで急激な円高となったのですが、その人たちは摘発のおかげで、おそらく既に円売りポジションを閉じていたと思われるからです。おそらく、儲ける時も、その運の強さが役立ったのでしょう。一方で、それらの儲け話につられるように、2007年の前半に外為信用取引を始めた人たちも多かったと思います。タイミングとしては最悪でした。


また、ネット取引で巨額の富を築いた個人投資家も、あれ程の収益はもちろん技術があってこそなのですが、取引を始めた時期が良いなど、運も味方しなければあそこまではいけません。逆に言うと、どんなに技術があっても、運に見放されていたなら、なかなか思うようには儲けることができません。もっとも、運気は何かをきっかけにある日突然変わることがあるので、その日に備えて技術を磨いておくことは重要です。


あなたの場合も、環境が変われば、これまで通りに行くとは限りません。もっと儲けられるかもしれないし、うまく行かなくなるかもしれません。専業になると時間は手にしますが、必ず何パーセントかは儲けなければならないというプレッシャーがかかってきます。そのハードルを下げるためには、当初の元手を多くする必要があります。つまり、絶対に30%の利益を上げる。最低でも生活費は600万円いる。とすれば、元手が2,000万円になって初めて、専業のトレーダーになることができます。そして、予定通り30%で運用でき、予定通りの生活費で賄えたなら、元手はそのまま2,000万円です。しかし、万一急な出費でもあったなら、運用資金が不足して、これまでの計画が狂ってきます。


また独立すると、何でも自分の考えで行えるという自由と引き換えに、孤独を得ます。何をしてもいいということは、自分ですべてのことのルールを決めなければならない、ということでもあるのです。こういった「環境の激変」の中で、いままで通りの収益を上げなければならないのです。


2009年の今、世界は100年に一度とも言われる激変期にいます。創業以来100年も200年も続いていた会社が多く潰れていく時代です。「量の拡大」を追い求めた結果、地球環境そのものが過剰消費、過剰開発に耐えきれないところまできています。あなたが今いる会社もどうなるか分かりません。会社が大丈夫でもあなた自身がどうなるかも分かりません。自ら求めて専業トレーダーにならなくても、結果的に、専業トレーダーになるしかないかもしれないのです。それまでは会社に勤め、将来に備えて運用資産を増やしておくことが、リスク分散にもつながります。


もちろん、ここぞと思える時には、勝負をかけることもいいでしょう。私自身も、2007年、2008年の2年間は、退路を断つ気持ちもあって、この講座以外のすべての仕事を断り、タペストリー・キャピタル・ファンドの設立、運用に邁進しました。リスク分散を捨てて、勝負に出たのです。結果は、残念ながら頓挫しました。しかし、唯一続けていたこの講座とメルマガのおかげで、有料メルマガを発行することがで
きています。


専業のトレーダーになると、収入のすべてをトレーディング収益に頼ることになります。そこから住居費、光熱費、生活費、保険料、年金、市民税などを定期的に支出します。お子さんがいれば教育費も必要です。収入は不定期なのに、支出は定期的です。そう考えると、定期収入の重みが分かってきます。定期収入がなくなることへの不安は、まっとうな不安なのです。「少しでも不安を感じるようなら、専業トレーダーになるべきではない」のです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「その他の問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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