あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

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あなたはこれまで、ウォーレン・バフェット氏をはじめとした著名な投資家の手法を書籍などで学び、それを参考に投資してきました。しかし、「100年に一度」といわれる金融危機の影響で、これまでの投資手法は通用しなくなったという話も耳にします。実際、バフェット氏も、直近の投資では大幅な損失を出しているといいます。こうした昔からの著名な投資家の手法は今後も参考になるのでしょうか。

正解は・・・
(2)通用しなくなった部分もあるが、多少は参考になる

人類はいまだに古代中国や古代エジプト、ギリシャ・ローマ時代に発明されたものを使っています。人間、本質的なところは古今東西それほど変わらないようです。ウォーレン・バフェット氏をはじめとした著名な投資家の手法も、投資の本質を踏まえたところが多いので、あれほどの成功を収めたのです。ところが、割安株投資、成長株投資、あるいは、著名投資家による、たとえば、バフェット型投資などは、通用する時期と、通用しない時期とがあります。したがって、正解は(2)の「通用しなくなった部分もあるが、多少は参考になる」になります。


私は投資運用に興味を持つ前に、仕事として外為市場に携わりました。したがって、投資関係の書物を手にした時には、既に自分なりの相場の見方を持っていました。多少は自分でも本を買いましたが、私の本を出版してくれた出版社が、何十冊もの投資関係の本を送ってくれましたので、一通りのものには目を通しています。「読書とは、実は自分探しの為だ」という人がいますが、多くの本の中で印象に残っているのは、やはり自分と同じような考え方の人なのです。


ウォーレン・バフェットについても、Buffettology の原書に目を通しましたが、内容は覚えていません。バフェットの投資法を要約すると、少数の本当に良い会社の株式を、長期間にわたって保有することかと思います。よく知られた銘柄は、コカ・コーラやGEでしょう。


この場合の良い会社とは、財務内容や企業収益はもちろんのこと、企業の理念や経営者の人格なども含まれるようです。ところが、こういったファンダメンタルズの良い会社でも、タイミングを間違えると、なかなかうまく行かないのは、皆さんも経験済みかと思います。


では何故、ウォーレン・バフェットの場合にはうまく行ったかと言うと、大量に買い、長く保有したからです。そして、氏は自分の見方を積極的に公開し、賛同者を募ったからです。皆で買って、長く保有すれば、その銘柄は上がらないまでも、下がることはありません。


長期投資は、買うと長く保有するので、長期的に株価を押し上げます。一方で、投機資金が買ったものは比較的短期間のうちに売り払うので、一定期間の間しか株価を支えません。したがって、ウォーレン・バフェットや、余裕資金で長い目で買う人が多い株価は、比較的安定して上昇します。サブプライムショック後にうまく行かなくなったのは、賛同者の資金繰りがつかなくなってきたので、換金売りが出始めたためです。余裕資金が余裕のある資金ではなくなってしまったのです。投資銀行という業態がなくなるという、未曾有の変化時には、バフェット型の投資は機能しないのかも知れません。

つまるところ、株価は需給が決めるのです。ここのところは、私のタペストリー・プライスアクション理論(TPA理論)では、次のように説明しています。


1.市場価格はポジションの量と保有期間により変動する(タペストリー第1理論)


2.市場の価格変動はキャピタルゲイン狙いの「時間制限のある売買」によってつくられ、トレンドは実需や長期投資などの「保有」によりつくられる(タペストリー第2理論)


3.市場価格の変動を利用するすべての資金運用で、唯一信頼にたる拠り所を提供するものは、価格の動きそのものである(プライスアクション理論)


1と2は価格変動の仕組み、3は運用理論です。著名人の投資法を私の理論で解説するのはおこがましいと思われるかも知れませんが、私自身、実際の運用で導き出した理論ですから、正しいかどうかは読者の方々がご自分で運用するなかで判断して下さい。


他の選択肢を見てみます。


(1)の「投資の本質は変わっていないので、大いに参考になる」というのは、著名人の投資法を、本質的な部分で理解していれば、その通りです。つまり、多く買って長く保有すれば株価が上がるのは事実です。値下がりしているGE株でも、ほとんどすべてを買い占める気で買えば上がります。とはいえ、そうすると今度は流動性がなくなって売るに売れなくなります。


しかしバフェット式に、財務内容や企業収益はもちろんのこと、企業の理念や経営者の人格が良いところを買っていれば、必ず報われるのかというと、それは疑問です。


たとえば、GE株は2000年8月の47ドル台の高値から、2003年2月に17ドル台まで売られ、2007年10月頃の38ドル台まで戻るのに、4年半かかっています。その後はまた売られ、2009年3月4日には5.73ドルの安値をつけました。GEは少なくとも安値をつけた時点では、アメリカの事業会社で5、6社しか残っていないトリプルAの企業(3月12日にAA+に格下げ:S&P)だったのです。良い株でもタイミングを間違うと、大変な目に合うということです。バフェットとはと言うと、昔から持っていたのものに加えて、サブプライム・ショック後に大量に買い増ししていますから、普通の投資家が真似をするとナンピン買いにより破滅していたでしょう。同株は3月4日の安値の後反発、3月27日は10.78ドルで引けています。買うなら、谷越えの今なのです。


(3)の「状況が一変してしまった今となっては、ほとんど参考にならない」というのも、そうとは言えません。バフェット式は信用が収縮し、成長率がマイナスの時には機能しずらいのですが、いずれどちらも反転します。そうなれば、再び機能し始めることと思います。


私がこの養成講座で常に言っているのは、答えを鵜呑みにするのではなく、自分で考え、自分に合った答えを、自分で見つけろということです。著名投資家の手法だけでなく、私のTPA理論も、あなたにとっての正解は(2)の「通用しなくなった部分もあるが、多少は参考になる」程度に留めておくのがいいのです。

見事正解だったあなたは・・・

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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