あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは投資を始めて半年ほどになります。最近では、機械的に損切りをするようになり、損の幅は小さく抑えることができるようになりました。一方、利食いはタイミングを見計らっているうちにしそこねることもあり、損切りと同様、利食いも何らかの基準を設けて、機械的にやったほうがよいのではないかと思うようになりました。利食いの方法として、最も正しいのはどれでしょう?

正解は・・・
(1)、(2)、(3)の全部

我々が相場に携わるのは、リターンを求めるからです。ところが、リターンとリスクはコインの裏表のようなもので、リターンを求めることはリスクを取ることと同義です。したがって、相場で最も大切なのはリスク管理なのです。リスク管理さえできていたなら、後は自由にやりましょう。がんじがらめに自分を縛ることはありません。正解は(1)、(2)、(3)の全部となります。

リスク管理で、最も効果的なのは、思惑とは逆に行った時の損切りです。リターンの期待を放棄した時点で、リスクもなくなります。このことは、他のどのようなリスク管理も、リターンの期待を維持している限り、つまりポジションを抱えたままでいる限り、どこかにリスクが残ります。高度なリスクヘッジとは、リターンに未練を残しながら、逃げ腰の状態をつくること。完全にリスクから逃れるには、夢を捨てなければならない。ある意味、相場とはせつないものなのです。

その損切りについて、拙著『実践・生き残りのディーリング』では次のように述べています。(以下引用)

86. 損切りの徹底

損切りが難しいなどと言っているうちは、まだ駆け出しです。

損は切るもの。アゲインストのポジションは、持ってはならないものなのです。アゲインストのポジションからは、まともなものは何一つ生み出せません。必要以上のエネルギーを浪費させ、相場観を狂わせ、機会利益を減少させ、ひいては取り返せないほどの損を抱える危険をはらんでいるのです。

評価損は、実現損よりも性質が悪いのです。実現損は過去の損ですが、評価損は生きています。これからどこまでも成長する可能性を秘めているのです。また、損を切れないことを正当化するための相場観が用意されます。そうでもしないと、自己矛盾に至るからです。

さらに評価損の悪いところは、せっかく大局的な相場観が当たっていても、絶好の売り場、買い場で身動きが取れなくなることです。評価損を抱えての売り買いの余力は知れていますし、なんぴん買い等でポジションがすでにパンパンになっていたなら、お手上げなのです。ただひたすら、元のレベルに戻ることを願うのみになってしまいます。

あえて機会利益について突き詰めると、買いで下がって、評価損を抱えたのです。どこかで損切って売りに転じていたなら、逆に利益が上がっていたはずです。逆転の発想です。具体的には倍返しをします。つまり、評価損を抱えた状態では、機会利益をただ手をこまねいて見ているだけなのです。

また、評価損で恐いのは、時に損の額が一個人の耐えうる限界を超えてしまうことです。限界点はだれにでもあると思っていてください。いわゆる器量です。

限界点を超えると、どうなるでしょうか。もう、まともな思考力は失われています。今後の身の振り方、家族の顔、上司の顔、相場には関係のないことばかりが頭の中を駆けめぐります。涙をこらえる気持ちです。一種の墜落感です。私たちはそうなる前に、何か手を打たなければならないのです。

損をこまめに切ることにより、いつも偏らない相場観、冷静な判断力を持ち続けることができ、ここぞという買い場や売り場で、いつも100パーセントの力を残したままでいることが可能になります。損切りを繰り返した断続した損が積み重なっても、持ち続けた連続した損に比べるとたかがしれているのです。

ディーリングルームなどで、損に耐えて苦しんでいる姿は、傍目には美しいかもしれません。重要な仕事をしているようにも見え、忍耐強く頼もしい人という印象すらあるものです。ところが、実際には大事な決断を先送りにしている思考停止状態にすぎません。

相場は売り買い一対で取引が成立します。考え方によっては、参加者の半数は常に間違えているのです。また、上げ下げの確率は5分と5分、買っても10回のうち5回は下落します。過ちを起こさない人間はいないのです。相場で損が出たり、儲けたりするのは当たり前のことなのです。相場を間違えるのは、恥でも何でもありません。

損はでるもの。そして、損は切るものです。

損切りとは、儲けるためのコストです。損切りを早く、こまめに行ってコストを下げる。切った損はそれ以上には膨らみません。

10回買えば、うち5回は上昇します。勝負はそこでするのです。

この2、3年間は、あのウォーレン・バフェットをはじめとし、過去において負け知らずとも思えたような投資家たちが次々と敗北しました。未来が見える人間は誰1人としていませんので、相場で損切りは必須です。しかし、利食いまで、そうそう窮屈に考えることはありません。どこまでも夢を追ったり、少しの利益でも確実に残すなど、利食いにはあなたの個性を反映していいのです。

先に引用した拙著『実践・生き残りのディーリング』には、利食いに関して「簡単に利食うな、確実に利食え」とありますが、異論は多いでしょう。この部分に関しては、引用が長くなるので、ホームページを参照して下さい。

92. 利食い千人力 ―簡単に利食うな、確実に利食え―

私自身は、どちらかと言えば、(3)の「基準は設けず、反転の兆しが見えるまで引っ張る」タイプですが、大きく跳ねたような時は、できるだけ利食うよう心掛けています。利食いはどこで利食っても儲けられるのですから、あなたの自由です。自由だからこそ、難しいのです。とはいえ、その自由さが、相場の醍醐味だとも言えるのです。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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