今週の解答
[個別銘柄に関する問題]
あなたが保有しているある銘柄は、ファンダメンタルズが良いため、これまでは順調に値上がりし、含み益が10%程ありました。そんな時、不祥事が発覚し株価が下落しました。しかし、下落は一時的だったようで、翌日からは株価は横ばいの状態になり、結果、含み益は5%程度にまで小さくなっています。このような場合、どうするのがよいでしょうか?
(1)とりあえず不祥事の影響は既に消化したと判断し、保有し続ける
せっかくの銘柄に不祥事が起きてしまう。まことに残念なことですが、そのようなことは投資につきものです。もともと手掛かりとしていたファンダメンタルズそのものが、真っ赤な嘘であったということにさえ遭遇します。過ぎたことは過ぎたこと、生き残るためには今からのことを考えねばなりません。今のところ、横ばっているのですから、売り買いを判断するには材料不足です。正解は(1)の「とりあえず不祥事の影響は既に消化したと判断し、保有し続ける」となります。
不祥事の影響を判断するのは簡単なことではありません。当初は些細な出来事と思えたことが、企業の体質に関わる根の深い問題であることはめずらしくありません。このような場合には、株価が織り込んだと思えた時に、次々と関連した不祥事が頻出し、続落し始めることになります。
一方、些細な出来事でしかなかったものが、初期対応の拙さから、とんでもない影響を与えてしまうこともあります。不二家の場合などは、同社の工場が「消費期限」は満たしているのに、安全性、品質に何ら問題のない「賞味期限が1日過ぎた」牛乳を使用したことを、社内のコンプライアンスに違反したとかで大騒ぎしたことが、2ヶ月以上にわたる全商品の生産・販売の中止に至りました。
不幸なことに、TBSテレビの『みのもんたの朝ズバッ!』が、魔が差したか悪ノリか、捏造報道で不二家をいじめ抜きました。後にTBSは二度にわたって釈明、謝罪しましたが、一度失われた不二家の信用は戻りませんでした。以降の不二家は赤字で、株価も2008年10月にはとうとう100円を割れ、当時の3分の1以下になりました。仮に真相を知っていたり、影響を軽く考えてナンピン買いなどしていたなら、破滅に近い損失もありえたでしょう。
このような場合に、たとえば、選択肢(2)の「不祥事の影響は消化された上、絶好の買い場が来たと判断し、買い増す」ようなことをしていれば、大変な目にあってしまいます。あなたの銘柄も、不二家のように、不祥事の前と後とでは、ファンダメンタルズも別物になっているかも知れません。
その意味で、選択肢(3)の「横ばいになったとはいえ、不祥事という想定外のリスクが発生したので、含み益のある今のうちに手仕舞う」のは、悪くありません。ところが、また不二家の例をあげると、『みのもんたの朝ズバッ!』の放映は2007年1月ですが、そこから株価は約50%も値上がりし、3月に高値をつけるのです。つまり、テレビ報道による不二家の不祥事が本物だと思われていた時に株価は上昇し、嘘だと判明してから下落しています。
もし、あなたが、ファンダメンタルズが良いと思いつつも、不祥事ゆえに小さな利益で売ってしまっていたなら、値上がりを見て惜しくなってしまい、今度は高値でつかまる可能性だってあるのです。
株価とニュースの関係はなかなか複雑です。あなたも、ああでもない、こうでもないと迷い続けるより、値動きに身を委ねましょう。正解は(1)の「とりあえず不祥事の影響は既に消化したと判断し、保有し」ておいて、いったん下げ止まったところを抜けてきたら売る。そうでなければ、上値が重くなるまで、持っていていいのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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