今週の解答
[投資心理に関する問題]
あなたはあるメーカーに勤務している友人と酒を飲んでいました。その場で友人が、「うちのライバル会社が画期的な商品を発表すると一部の人たちが噂をしている」と話していました。気になって調べてみたところ、そのライバル会社の株価は、ここ最近は特に材料もないせいか、ずっと横ばいでした。このような場合、どうするのがよいでしょうか。
(3)噂につられて値上がりする可能性もあるが、先行きは分からないので、少しでも値上がりの兆しが見えたらすぐに買えるよう注視する
株価は様々な要因で動きます。画期的な新商品の開発は、おそらく企業収益に貢献するだろうことから、株価の買い材料になりえます。しかし、ここではい
くつもの不確定要素があります。まずは、その噂が真実かどうか、次に、真実だとしてもいつ頃発表するのか、また、すぐに発表されるとしても収益に貢献するのか、最後に、収益に貢献したとしても株価に反映されるかどうか、です。仮に、その不確定要素が最初の段階で否定され、ガセネタだったとしても、買って株価が上がれば儲かります。つまり、あれこれと詮索を続けるよりも、株価を注視する方が、安全かつ確実なのです。
正解は、(3)の「噂につられて値上がりする可能性もあるが、先行きは分からないので、少しでも値上がりの兆しが見えたらすぐに買えるよう注視する」となります。
株価は噂でも上がるのですから、(1)のように「根拠のない噂に惑わされるべきではないので、手を出さない」のでは、みすみすのチャンスを逃すことにもなります。たとえば、先日(2009年4月末)の新型インフルエンザ対策関連で、多くの紡績関連銘柄が出来高を伴って急騰しました。とはいえ、マスクの需要などで実際に収益が上がるとしても、多くの銘柄が20%も急騰するほどの収益に貢献するとは思えません。ほとんどは単なる連想ゲームで買っているだけなのです。それでも、上がるのですから、短期で儲けたいなら手を出さないと決め込むのは間違いです。
なぜなら、上げるかも知れないが根拠がないから買わないという姿勢は、根拠さえあれば下げる銘柄でも買って持ち続けるという愚を犯す危険につながるからです。
また、(2)の「『噂で買って事実で売る』はセオリーの1つ。思惑通り値上がりしなければ損切ることを前提に買ってみる」方法で、十分な収益が上がるとは思えません。なぜなら、まだ価格が動きだしてないうちは、「買える噂」ほどの値打ちがないからです。根も葉もない噂でも、真実でも、多くの人が信じれば動きだします。それまでは、値動きを注視しながら、待つ忍耐が必要です。
相場は恐い所です。あなたが聞いた噂を仕手筋などパワーを持つ人間が聞いたなら、まずは空売りを仕掛けておいて、多くの人が損切り、安くなったところで大量に仕込むようなこともします。その時、あなたがポジションを抱えていなければ、下値が固まったと見えたところを買えばいいのですが、持っていたなら損切りすることで手一杯になってしまうのです。
相場観や、噂といった材料は、相場がこう動くだろうと準備するのに必要です。しかし、実際に売り買いを始めるには、価格にその兆候が現れてからにします。今回の問題の正解は、(3)の「少しでも値上がりの兆しが見えたらすぐに買えるよう注視する」で、上げ始めてから買っても遅くないのです。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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