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あなたが、テレビの経済ニュースの意味を解説したり、週末に株価チャートをチェックする姿に影響されたのかもしれません。小学校5年の息子が株取引に興味を持ち始めました。調べたところ、子どもの口座開設が可能な証券会社はあるようです。将来的に、お金や投資のリテラシーが高い大人に育てたいとは思っていますが、小学生のうちからトレードできる環境は必要でしょうか?

正解は・・・
(3)お金や投資の知識・技術は大人になってからでも充分に身につく。口座開設も、本人が、しかるべき時に、自分自分で行うべき。子ども時代は、学業や遊び、友達付き合いに集中させるのが良い

子供時代には、子供時代にしか味わえないことがあります。思春期には思春期でしか味わえないことがあります。投資は大人の世界です。いきなり大人の世界に入ってしまうと、もう子供時代の喜びも、思春期の喜びも、本来のものとは違ってしまいます。正解は3)の「お金や投資の知識・技術は大人になってからでも充分に身につく。口座開設も、本人が、しかるべき時に、自分自分で行うべき。子ども時代は、学業や遊び、友達付き合いに集中させるのが良い」となります。


投資は知識とノウハウ、経験さえあれば、設備や人手、時間をほとんど要しない、最も効率的な資金運用の手段です。いわば、アナログ的に一歩一歩積み上げることなしに、いきなり下層階から最上階まで到達することも可能な、デジタルな世界です。子供の時に子供時代を体験せずに、中抜きで上階に行ってしまうと、もう一歩一歩積み上げることができなくなってしまいます。そうなると、人間的に問題のある人になってしまったり、本人が幸せを感じることができなくなったり、挫折した時に立ち直れないことになる場合があるのです。


子供は遊びやゲームの中で、社会生活を学んでいきます。遊びやゲームにはルールがあり、勝ったり負けたりしながら、悔しさを学び、振舞い方を学びます。それは、誰かに教えられたり、本で読んだりするものではなく、近所の子供たちや学校の友達と時には喧嘩をしながら、真剣に得とくしていくものです。


子供の世界では、勝ち負けだけが絶対ではありません。どんなに強くても、ゲームがうまくても、卑怯な手ばかりを使ったり、威張ってばかりいると友達はできません。時にリーダーになったり、時にリーダーに従ったりしながら、指導力や協調性も見につけていきます。子供は子供同士の社会生活の中で、喜怒哀楽を体験し、生きる力を身につけていくのです。そういったものは、残念ながら投資運用からは学べません。儲けはしたが、刑事被告になったような人たちは、子供の頃に遊ばなかったのかも知れません。


また、子供時代の喜怒哀楽は、小さな世界で起こり、小さな心に感じさせますので、大人のように大局的に処理することができません。何もかもが、世の中の一大事のように刺激を与えてくれます。たとえば、夏祭りで食べたものが、何よりもおいしく感じたり、子供の頃の花火が一番きれいだったように覚えているのです。また、ひどく叱られたりすると、世の中が終わってしまうかのように悲しいのです。


そんななかで、大人の世界を垣間見ることは、自分だけが少し上に昇った気にはなっても、実は純粋な喜びからは遠ざかってしまいます。そして、二度と、何も知らない素朴な頃の自分には戻れないのです。


時間は不可逆的に進みます。大人は子供に戻れないのです。子供時代を子供として、思春期を思春期として味わわないことは、かけがえのないものを失ったことになるのです。焦らなくても、死なない限り、誰でも大人になり、老人になっていきます。


投資が大人の世界だというのは、勝つとお金が入るからです。お金があれば、子供でも、大人以上の力を持てるからです。とはいえ、そのお金は積み上げて得たものではなく、いきなり手にしたものです。それ自体が問題ですが、もっと問題なのはうまく行かなくなった時です。


大リーグの松井選手(両人とも)やイチロー選手がスランプに至った時の脱出方法を聞いたことがありますか? 彼らを大リーグ選手にした積み上げを、コツコツと繰り返すのです。つまり、彼らはいきなり大リーグ選手になったのではなく、子供時代からの地道な積み上げの上に、結果としているのです。だから、スランプなっても自分を見失うことがないのです。


私はプロの投資家ですが、いきなりプロになったのではありません。やはり、ディーラーとしての積み上げがあり、相応の努力もしてきました。このコラムのように、自分を振り返りながらコツコツと書き物もしています。


また、投資生活にも波があり、人生にも波があります。その波を客観的に見つめ、波に呑まれないようにするには、その人の総合力が必要です。その人が多くの物を見、体験し、何を感じてきたかが、重要になるのです。


あなたの子供には、大人の世界を早く見せるようなことを考えず、子供として子供の世界で過ごせるように見守ってあげましょう。子供の頃は遊んで、興味に任せて勉強や読書をして、いろんなことをやるものです。かけがえのない子供時代、思春期を、そのままの形で味あわせてあげましょう。


したがって、この問題の正解は、3)の「お金や投資の知識・技術は大人になってからでも充分に身につく。口座開設も、本人が、しかるべき時に、自分自分で行うべき。子ども時代は、学業や遊び、友達付き合いに集中させるのが良い」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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