今週の解答
[その他の問題]
あなたは、日本の株式市場のトレンドを見極めるには、売買代金シェアの高い外国人投資家の動向にとりわけ注意する必要があるという内容の本を読みました。中長期のトレンドフォロー戦略をとる場合、この視点を、自分のトレードにどう生かすべきでしょうか。
(3)投資家主体別売買動向や、外資系注文状況が役立たないというわけではないが、投資家の思い通りに相場が動くわけでもない。株価の動きが何より大切なので、投資家動向にかかわらず、相場についていくようにする
相場は様々な材料で動きます。個々の投資家も様々な事情や意欲を持って相場に臨みます。売り手、買い手が拠り所とする材料や、有無を言わせぬ事情、大小の意欲などがぶつかり合い、値がついたものが出合いです。したがって、正解は(3)の「投資家主体別売買動向や、外資系注文状況が役立たないというわけではないが、投資家の思い通りに相場が動くわけでもない。株価の動きが何より大切なので、投資家動向にかかわらず、相場についていくようにする」となります。
選択肢の(1)は、外国人投資家の動向は短期トレードに役立つ。一方(2)は、中長期のトレンドフォローに役立つと言うものです。どちらも役立たないわけではありませんが、それを拠り所にできるわけでもありません。もし、それほど役立つのなら、外国人投資家は百戦百勝となり、何とかショックや、ヘッジファンドの破たんなども起らなくなります。
私は、タペストリー第1理論(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/J066.html)で、以下のように述べています。
「短期中期の価格変動は、その期間にわたって、大きなポジションを保有する人の意向を反映します。日中の動きでは、日計りの人たちが最も力を持っています。RSIなどのテクニカル分析は、そういった人たちの行動の跡を分析したものといえるでしょう。大きなトレンドは、実需など長期にわたってポジションを保有する(正確には市場からその分のポジションを消す)人の売り買いをネットアウトすることで類推できます。市場でのすべての出合を、保有期間に応じて似たようなポジション同士を相殺し、ミスマッチで残った売り手買い手のポジションの保有期間を比較するのです。最終的に相場は、ポジションが長く消された方向へと動きます」
また、タペストリー第2理論(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/J021.html)では、以下のように述べています。
「投資は保有という形で、相場に長く影響を与えます。トレンドに影響を与えるのです。投機の方は、借入金というレバレッジ効果で量的には大きいのですが、いつか返さねばならないという時間の制限があります。膨らんだポジションは必ず閉じられるので、ボラティリティ(価格波動)に関与します。つまり、投資はチャートの横軸に、投機はチャートの縦軸により大きな力を与えます。縦軸は価格ですから、投機の方が効率的に儲けることが可能です」
これらのことは、言葉を換えれば、投資家、投機家の売買動向を完璧に押さえれば相場が分かるというものです。そして、それはリアルタイムで、すべての出合いを押さえることができればということでもあります。
つまり、前場で大きな出合いがあり、その内訳が、年金勘定の買いに日計りディーラーたちが売り向かったことが判明すると、一時的に株価が下がるようなことがあっても、日計りディーラーがポジションを閉じるその日の大引けまでには、株価は必ず上がります。
しかし、後場になって、株価が上げたところで別の年金勘定がより大きな売りを入れれば、そこから株価は急落します。その年金が外国のものであろうと、本邦のものであろうと、買い放し、売り放しの年金は、日計りより長い目で見ると強いのです。
このように、市場での出合いがすべて見えたなら、相場の動きはほぼ分かるようになります。「ほぼ」と言うのは、それでも未来は見えませんので、次の瞬間に別の決定的な売買が起きれば、それに従うことになるからです。上の例では、前場の動きでは引け高だったはずなのに、後場の売り物によって、逆に引け安となるからです。相対取引のマーケットメーカーで圧倒的なシェアを持つところは、圧倒的に有利なのですが、決定的ではありません。
相場は情報戦の最前線などとも言われますが、どの情報も当てにならないか、遅いかです。未来に起きる確率の高い情報は、インサイダー情報ですから、利用すると罰せられます。
実は、相場で唯一信頼に足る情報とは、価格情報、つまり値動きだけなのです。値動きは過去から現時点までのすべての出合いを網羅した、完璧な情報です。残念ながら、未来のことは分かりませんが、他の情報でも、未来が確実に分かるものはありません。
相場は実需と、キャピタルゲイン狙いの仮需とで動きます。その実需と仮需は、経済の動き、資金の流れなど様々な要因によって誘発されます。相場はそれらのすべてに注意を払う必要がありますので、外国人の売買動向にも注意を払うのです。
とはいえ、外国人の売買動向は多くの要因の中の1つでしかありません。そして、全投資家動向を含むすべての要因を反映したものが、価格の動きです。したがって、例えば、昆虫や微生物をひたすら観察することから、何かを見つけ出す自然科学のように、相場で最も大切なのは、価格を観察することです。
価格を観察し、価格の動きに反応することが、最も効率的な運用だと説明したものが、プライスアクション理論(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/J065.html)です。私は上記の2理論と合わせて、タペストリー・プライスアクション理論を提唱しています。
この問題の正解は、(3)の「投資家主体別売買動向や、外資系注文状況が役立たないというわけではないが、投資家の思い通りに相場が動くわけでもない。株価の動きが何より大切なので、投資家動向にかかわらず、相場についていくようにする」となります。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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