今週の解答
[その他の問題]
あなたは大勢の日本人がそうであるように、自分の英語力に自信がありません。投資家・トレーダーとして成功を収めるためには、どのようなスタンスで、どの程度の語学力を目標にするのが良いでしょうか。
(1)日本語だけではどうしても有益な情報に触れる機会に乏しくなる。海外Webサイトの市況ニュースや各種開示資料、テレビの報道などを多少は読解・リスニングできる程度の英語力は欲しいものだ
インターネットでひと頃、大きな事件があった時など、テレビ東京以外のどの放送局でも同じ時間帯に同じニュースを流しているのが話題になっていたのをご存知ですか? どちらかというと、テレビ東京を揶揄するようなニュアンスでしたが、すべての国民が同時間に1つの同じニュースにしか接しられないというのは異常です。テレビだけでなく、日本の新聞でも同じような傾向があります。
これは、相場には常に買い手に見合った売り手がいるのにも関わらず、買い手の情報にしか接しられないようなものなのです。長く相場を続けるには、やはりそれなりに視野を広げたいものです。正解は(1)の「日本語だけではどうしても有益な情報に触れる機会に乏しくなる。海外Webサイトの市況ニュースや各種開示資料、テレビの報道などを多少は読解・リスニングできる程度の英語力は欲しいものだ」になります。
相場とは面白いものです。上げ相場の時には、何しろ現に価格が上がっているのですから、上げ材料にばかり目が行きます。これは個人投資家だけでなく、百戦錬磨を自負してきた金融機関のディーラーや、ヘッジファンドも同じです。だからこそ、サブプライム問題で躓いたり、原油や他のバブルに、何度も何度も引っ掛かるのです。これはすべて、相場には相手がいることを忘れてしまった、独りよがりから起こります。
もちろん、サブプライム問題や原油価格の高騰が海外発であることからも分かるように、海外の情報に接していたからといって、それだけでバブルに巻き込まれないとはいえません。情報は受け身である限り、なかなか思うように活用できないのです。
現在の世界は情報に溢れています。たとえば、日本の安土桃山から江戸初期の時代に生きたガリレイ、元禄時代に生きたニュートン、江戸末期のダーウィンよりも、私たちの方が、情報も知識も豊富です。この3人のうちガリレイにいたっては、ニュートンやダーウィンが発見したことすら知らないのです。私たちは、マルクスやアインシュタインも知っています。月の裏側がどうなっているかも知っています。なのに、なのに、、、です。
インターネットによる情報の氾濫を危惧する人もいますが、インターネットの情報はそこにあるだけですから、氾濫してくることはありません。情報の氾濫をもたらしているのは、むしろ情報の発信元だと自負しているところです。おかげで私たちは、情報の絶対量だけは、おそらく過去のどんな偉人、賢人たちよりも持っていることと思います。
なのに、物の本質を発見してくれた偉人、賢人はもとより、おそらく過去の普通の人たちよりも、私たちの生きていく上のでの知恵は乏しいのではないかと思います。なぜなら、私たちのは、与えられた情報、知識ばかりだからです。楽をさせてくれるところには気をつけた方がいいかも知れません。楽をしているうちに、どんどんバカになっていきます。
テレビと、ラジオと、書物と、どれが一番楽できると思いますか? テレビはまるで自分が見聞きし体験したかのような楽をさせてくれます。5感のうち、味覚、臭覚、触覚だけを想像で補います。ラジオは視覚も想像で補います。絵のない書物は5感のすべてを想像で補うのです。自分で補うものが多い方が、自分の能力が高まるだけでなく、騙されることも少なくなります。体験は自分の5感のすべてを実際に使うので、書物よりもはるかに生きていく能力を高め、騙されることが少なくなります。そうすると第6感も鋭くなるのではないかと思います。
とはいえ、世界中で起きていることを実際に体験することはできません。ほとんどは想像で補います。その時、情報に騙されないようにするには、自分の体験の豊富さが物を言います。どこかおかしい、ありえない、嘘だ、というようなことが分かりだすのです。
日本語の情報がおかしいと思った時、日本語の情報だけでは埒があきません。たとえば、あれほど大きな問題となった、日本人の身近にも影響を与えたサブプライム問題、リーマンショックでさえ、「嘘だ」と思った私が、自分なりに納得するためには、直接アメリカの統計局の資料を当たる必要があったのです。(参照:サブプライム・ショックの要点:http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10275436987.html)
それが分かったからといって、目の前の相場にどう役立つというものではありませんが、人の意見に惑わされて右往左往することがなくなります。こうして自分で情報を探るのも、インターネットがなく、英語が分からなければ望めないことです。
グローバル化の時代ですから、私たちの生活も、相場も、世界の動きと密接に繋がっています。英語が分からなければ、自分たちの生活に影響していることさえ、マスコミの意図通りに理解するしかありません。つまり、彼らの理解の限界が、情報の量や質の限界となります。先方に悪意がなくても、結果的に騙されてしまうことを防ぐには、最小限の英語の知識は不可欠でしょう。
ところが、相場では、幸いにして価格がすべてを反映してくれますので、他の何も知らなくても、騙されたままでも儲けることができます。価格以外の情報や知識は、絶対的な意味を持たないのです。
その意味では、(3)の「語学力は投資家に求められる能力のごく一部。過去の成功者を見ても、必ずしもその方面で秀でてはいなかった。日本語で読めるニュースや、翻訳されたレポートに優れたものはいくらでもある。苦手な言語の習得に時間をとられるくらいなら、他に割くのが得策」だと言う人もいるでしょう。
「どうせ私を騙すなら、死ぬまで騙して欲しかった」 騙されていても、死ぬまで知らずに幸せならば、それはもう真実と変わりがありません。騙されてもいないのに、疑心暗鬼で不幸せよりも、余程いい。なにしろ、嘘でも噂でも、思い通りに相場が動けば儲かる世界です。とはいえ、せっかく情報が意味を持つ世界にいて、それを活かすには英語が役立つ世界にいて、楽することを選ぶのはもったいないと思います。
私は、海外の人が読んでいるものと同じ情報を得たいと思う人向けに、経済・相場英語を、毎日数行だけ学ぶメルマガを発行しています。(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/eigo.html)。それもこの火曜日で1560号となりました。ずっと読んでくれている方々は、随分英語が読めるようになったことと思います。無料ですし、時間の負担もあまりないと思いますので、ぜひ購読して下さい。
(2)の「国際投資の時代に、言語の壁は日本人投資家にとって多大なハンデとなっている。時間とコストを費やしてでも、海外で職業トレーダーとしても通用する程度の高度な英語力を身につけたい。また英語に限らず、他言語にもどん欲に挑戦する姿勢が必要である」というのは、情報や知識は絶対的な意味を持たない相場の世界では、そこまで思い詰めることはありません。とはいえ、一所懸命に学んだことは決して無駄にはなりませんので、やりたい人は思う存分やって下さい。どこで何が開けるかも分かりません。
何事もバランスです。私は(1)の「日本語だけではどうしても有益な情報に触れる機会に乏しくなる。海外Webサイトの市況ニュースや各種開示資料、テレビの報道などを多少は読解・リスニングできる程度の英語力は欲しいものだ」くらいから始めて頂きたいと思います。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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