あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

あなたは最近、株式投資を始めました。とりあえず名前を知っている銘柄を適当に売買したところ、全体の7割のトレードで利益が出ました。ただ取引額が小さかったのもあってか、さほど利益が出なかったのが不満です。今後、トレードで大きな利益を出すには、どの程度の勝率を目指すべきでしょうか。

正解は・・・
(3)勝ち負けの回数ではなく、1回1回のトレードで「大きく勝つ方法」「小さく負ける方法」を徹底的に考えるのが正しい。それによって勝率が20〜30%、時に10%に落ちたとしても、それで構わない

ルールは守らねばなりませんが、相場では結果がすべてです。その結果というのは、勝率ではなく、得失点差です。つまり、最終的に収益を残すことを目的としています。正解は、(3)の「勝ち負けの回数ではなく、1回1回のトレードで『大きく勝つ方法』『小さく負ける方法』を徹底的に考えるのが正しい。それによって勝率が20〜30%、時に10%に落ちたとしても、それで構わない」となります。「それで構わない」というより、「それはそれで致し方ない」というところでしょうが、、、


プロでも勝率自慢をする人を見かけることがありますが、どういうことなのでしょう。彼がプロである限り、勝率で評価されたり、ボーナスが増えたりしたことは決してないはずです。


個人投資家でも同じです。収益が伴っていなければ、勝率自慢はむなしいだけで、むしろ下手なことを吹聴しているようなものなのです。自分のことを振り返っても分かるでしょう。嬉しいのはどれだけ残したかであって、損しながら勝率を高めても、嬉しかったことはないはずです。


他の選択肢を見てみましょう。


(1)の「株価はランダムに動くので、トレードも10回トライして5勝5敗、勝率50%を目指すのが自然。損切り幅よりも利食い幅を大きくとるようにすることで利益を出すことができる」という、ランダムとはどういう意味なのでしょう。


アメリカ発の「ランダムウォーク」という理論があります。


「random」を英辞郎で引くと、【形】無作為{むさくい}の[な]、任意{にんい}の、手当たりしだいの、でたらめの[な]、成り行き任せの、行き当たりばったりの、乱雑{らんざつ}な、(大きさ・形が)不ぞろいの[な]、(言葉{ことば}などが)でまかせの、とあります。


そして「random walk」を引くと、ランダムウォーク、迷い歩き、乱歩、酔歩{すいほ}、また random walk hypothesis は、千鳥足仮説。と出ています。


つまり、相場の動きは酔っ払いの足取りのように、どこに向かうのかは予測不可能だというのがランダムウォーク理論なのです。


とはいえ、科学とは、一見無秩序な、混沌としたもののなかに、観察によって何らかの秩序を見出すものです。混沌を混沌だと認識しただけでは、ランダムウォーク理論は科学的な理論とは呼べないでしょう。


テクニカル指標の1つ、ボリンジャーバンドに用いられている正規分布の標準偏差は、ランダムウォーク理論をもとにしています。すなわち、「どう動くかわからないので、値幅の確率を調べてみました」というものです。つまり、「どちらに動くかわからないが、どれだけ動くかには秩序的なものがあります」というのがランダムウォーク理論なのです。

注:
正規分布の標準偏差では、40から60の間に約68.3%、30から70の間に約95.4%、20から80の間に約99.73%、10から90の間に約99.9937%、0から100の間に約99.999953%%が含まれる事が知られている。

受験生などの学力偏差値では、
偏差値60以上(40以下)は、全体の15.866%、100人中上位(下位)16位以内、
偏差値70以上(30以下)は、全体の2.275%、100人中上位(下位)3位以内、
偏差値80以上(20以下)は、全体の0.13499%、1000人中上位(下位)2位以内、
偏差値90以上(10以下)は、上位(下位)それぞれ全体の0.00315%に含まれることになる。


相場でいうと、仮にボラティリティが16%の銘柄があるとすれば、今日の終値が昨日の終値の上1%下1%以内に収まる確率が約68.3%、上2%下2%以内に収まる確率が約95.4%などとなります。


とはいえ、あなたが選んだ銘柄の株価が、本当にランダムに動くのか、あるいは上げ下げは50%の確率なのかは、別問題です。なぜなら、一個人が行う取引の回数が少な過ぎて、有効なサンプリングが取れないからです。


例えば、確率だけみていれば、あなただけでなく、どの一個人も宝くじに当たることはありませんが、誰かは必ず当たるのです。もっとも、死ぬか生きるか2つに1つというような言い方では、宝くじでも、当たるか外れるか2つに1つの、50%の確率(?)なのですが。


確率論はともかく、売り買いには必ず相手がいることを考えると、謙虚に、自分が勝つも負けるも半々だと覚悟し、その中での得失点差を高めるようにすればいいのです。


その意味では、選択肢(1)を正解にしてもいいのですが、「勝率50%を目指す」というのが引っ掛かりました。勝率は高いに越したことはないのです。一方で、低くても収益が残れば問題がありません。つまり、勝率そのものは、それほど重要ではないのです。


(2)「5勝5敗で、利益だけを伸ばせると考えるのは楽観的すぎる。『塵も積もれば』で、着実に利益を積み重ねるには70〜80%の勝率が欲しい。究極的には、勝率を限りなく100%に近づける努力が必要だ」では、相場の目的が勝率になってしまっているようです。


勝率100%というのはあり得ませんが、90%以上に高めることは、意外に簡単です。株価が持ち値を上回ればすぐに利食う。下回れば、ナンピンし続けて持ち値を下げ、株価が少しでも持ち値を上回れば利食います。これで、勝率は簡単に90%を超え、それなりに大きな収益を残すことができます。


実は、これがかっての投資銀行のディーラーや、有名ヘッジファンドの秘策の1つでもありました。ナンピンは、巨大な資金力を持つところが行えば、99%ぐらいの確率で勝つことができるようになります。それでも節度を越してしまえば破たんするのが、多くのディーラーやヘッジファンドが辿った歴史でした。


あなたの勝率が7割なのに、利益が少ないのは、もしかすると、勝率にこだわって、利幅が小さくなっているのかも知れません。その場合には、勝率ではなく得失点差にこだわるようにすることで、あなたの収益は改善します。


あるいは、リターン率が高いのに、絶対利益額が小さいというのでしたら、取引額を大きくすればいいのです。それなりの利幅で勝率が7割でしたら、それなりのレバレッジを考慮してもいいでしょう。しかしながら、小さな利幅をレバッレジだけで大きくするモデルは、いつか破たんします。


私は拙著「実践・生き残りのディーリング」(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/bookshop.html)で、「3勝7敗のディーリング」を提唱しています。これは、勝率の目標が30%という意味でなく、思惑違いや、利食いの失敗による負けが7割でも、収益が残るディーリングを心掛けろということです。勝率そのものに振り回されてはいけません。


正解は、(3)「勝ち負けの回数ではなく、1回1回のトレードで『大きく勝つ方法』『小さく負ける方法』を徹底的に考えるのが正しい。それによって勝率が20〜30%、時に10%に落ちたとしても、それで構わない」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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