あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

「継続疑義解消の見込み」のIRを出し、翌日の場中でS高にタッチする場面もあった銘柄に、あなたは十分割安と判断して大量の買いを入れました。ところが1週間後には株価、出来高ともに元の水準に戻ってしまい、その過程でも買い下がったため不相応に大きなポジションになったと感じています。8%ほどの含み損が出ていますが出来高が少なく売りづらい状況です。正しい対応は?

正解は・・・
(3)これ以上の買い下がりは避けるべきだが、自らの不用意な売りで相場を崩すのはもっと避けたい。特に期限を決めずに、この銘柄の出来高で十分こなせる程度に分け、少しずつ少しずつ、冷静に売っていくのが良い

今回の問題は、敗戦処理の問題です。負けが決まったからと言って、損失を拡大してしまったなら、再起するのが困難になります。ここでは出来るだけ損失を膨らませない選択肢を選ぶ必要があります。正解は(3)の「これ以上の買い下がりは避けるべきだが、自らの不用意な売りで相場を崩すのはもっと避けたい。特に期限を決めずに、この銘柄の出来高で十分こなせる程度に分け、少しずつ少しずつ、冷静に売っていくのが良い」となります。


あなたはいくつかの間違いを犯しました。まず、会社のIRが、「継続疑義解消の見込み」と発表したからといって、ストップ高まで買われた銘柄を追いかけたことです。


継続疑義、つまり、会社が事業を続けられるかどうかを疑われるほど赤字が続いている会社が、その疑義が解消になったとしても、「買える銘柄」になったとはいえないでしょう。空売り可能な銘柄であれば、その買い戻しが入るくらいで、いきなり優良銘柄に化けることはありません。ストップ高まで上げたのは、上出来だったといえます。持っているなら売るべきところです。


次に、流動性のない銘柄を買ったことです。継続疑義に至るような銘柄は、一般の取引には向きませんので、流動性が落ちることもしばしばです。主要銘柄でさえ、荒れた時には流動性が落ちますので、特殊な銘柄の取引には相当の注意を払う必要があったのです。


加えて、そんな銘柄をナンピンしたことです。


買い下がっていくと、買いコストがどんどん下がっていくことから、勝つ確率が高まってきます。つまり、下げる過程で、同量のナンピンをかけると、半値戻しで評価損から脱出できるのです。それで、ナンピンを勝つための秘訣だとして、日常的に利用する人が出てきます。


しかし、その分ポジションは倍増していますので、そこから下げれば今までの2倍のスピードで評価損が増えていきます。そこで、その大きな評価損から抜け出そうと、ナンピンを繰り返すことになるのです。


ナンピンを効果的に使うことができるのは、巨大な資金力があるところだけです。どんなに売りが出てきても、それを買い取る資金力があれば、相場を支えることができます。とはいえ、そんなことをして行きつくところは、その会社の買収です。継続疑義の会社がそれ程魅力があるかどうかはさておき、あなたがするべきことではないはずです。


買い占めてしまうと、どんなに資金力があっても、売るに売れない状態が発生します。資金を回収したければ、つまるところ、買い手の望む価格で売るしかなくなるのです。したがって、巨大な資金力があるところでも、ナンピン買いでは手酷い目にあってきました。


つまり、あえて特殊な投資をし、かつストップ高近くを買う。流動性に欠ける銘柄を大きく買う。ナンピンする。これだけの間違いを犯せば、なかなか収益を上げることはできません。負けを認めて、どうやって資金を回収するかを考えるべきです。


他の選択肢を見てみましょう。


(1)の「割安と判断した上での投資なら、今さら持ち株を急いで売る理由はない。自分が辛抱してホールドし続けてこそ下落を避けられる。適宜、買い下がりながら、株価の反発と出来高の上昇を待ちたいところ」では、傷口が広がるばかりです。


また、何を持って割安だと判断したのでしょう。継続疑義だったのですから、業績が順調なはずがありません。赤字のまま会社が継続すると、資産はどんどん減っていきます。また、純資産倍率で割安だったとしても、会社が解散した時、あなたがその倍率分の資産を何らかの形で受け取ることができるかどうかは、簡単なことではないと思います。


(2)の「まずは、誤った取引の代償として、通常以上の損失もやむを得ないと認識する。その上で次善策として、1週間程度以内に全株を売却するのが良い。自分の売りで株価が下がっても、抱え続けるよりはマシである」のように、不良資産を抱えて身動きできないよりも、思い切って売り払って、すっきりしたい気持は分かります。


とはいえ、自分の売りで株価を押し下げて、そうでなければつかないような安値で売り払うのは、やはり賢明な策だとは思えません。負けは負けでも、できるだけ高く売り払って、できるだけ多くの資金を回収しないと、何も次には繋がりません。敗戦処理もまた、戦の一部なのです。


相場はいいものが必ず上がる、悪いものは必ず下げるという単純なものではありません。どんな場合にでも、一番大切なのはタイミングです。タイミングは天が与えてくれるものばかりではありません。駆け引きもタイミングの重要な要素です。ここは冷静に、自分の動揺を悟られないように、より高く売る忍耐がいるのです。


正解は(3)の「これ以上の買い下がりは避けるべきだが、自らの不用意な売りで相場を崩すのはもっと避けたい。特に期限を決めずに、この銘柄の出来高で十分こなせる程度に分け、少しずつ少しずつ、冷静に売っていくのが良い」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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