あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

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あなたは相場の勉強をしています。テクニカルにおける「61.8%戻し」「38.2%押し」といった概念は、そこに自然界の神秘的な力が作用しているにせよ、いないにせよ、相場の経験則として、まあそんなものか、と納得がゆきました。しかし、例えば相場の動きと太陽黒点が連動するという仮説はすんなり飲み込めませんでしたし、金融占星術など正直、いまでも眉唾ものと感じています。このような、科学的に解明しづらい概念や手法とは、どのように向き合うのが良いでしょうか?

正解は・・・
(2)相場で生き残りたいなら、ジンクスや占いはもちろん、論理的に説明しづらいアノマリーの類は率先して排除しなけければならない。不確実なものに惑わされず、投資対象の値動きを注視することを心がけるべきだ

相場で最も大切なのは、値動きを注視し、値動きには逆らわないことです。選択肢の中で、唯一その点に言及した、(2)の「相場で生き残りたいなら、ジンクスや占いはもちろん、論理的に説明しづらいアノマリーの類は率先して排除しなけければならない。不確実なものに惑わされず、投資対象の値動きを注視することを心がけるべきだ」が正解です。


ここで、問題文にある「61.8%戻し」「38.2%押し」とは、フィボナッチ係数と呼ばれるものです。


13世紀のイタリアの数学者、レオナルド・フィボナッチ(Leonardo Fibonacci)は面白い配列の数字を発見しました(なんでも、それ以前にインドで発見されていたもののようです)。この数列はフィボナッチ数列と呼ばれ、最初の数項は、0、1、1、2、3、5、8、13、21、34、55、89、144、233、377、610、987、、、と続きます。この後の数字に何が来るか、想像できるでしょうか?


最後の2つの数字を足したもの(610+987=1597)が続きます。そして、前の数字、例えば377を、後の数字610で割ると、0.6180327、、、89を144で割ると、0.6180555、、、つまり、どの数字も1つ後の数字の約61.8%となるのです。そして、この比率を一種の黄金分割と考えます。


黄金分割だから、ミロのビーナスの体型のように、万人にとって美しく感じられる比率だということになります。つまり、半値戻しと同じように、61.8%や、38.2%(=1ー0.618)の戻しが心地良いので、押し目、戻しはそこまでとされているのです。


もっとも、最前列に近い、1や2分の1、3分の2なども、全戻し、半値戻し、3分の2戻しなどとして重要です。


このフィボナッチ係数は、エリオット波動のベースともなっています。つまり、上昇5波動、下降3波動の8波動。この3、5、8という数字の全てが、フィボナッチ数です。この大きな基本波動を細分化すると、上昇21波動、下降13波動の34波動になります。この13、21、34もフィボナッチ数です。さらに細分化すると、上昇89波動、下降55波動の144波動となります。これら55、89、144もまた、フィボナッチ数なのです。


また、ギャン・チャートのベースとなるギャン・アングルの基本角度45度は、そのまま宇宙に届く線だといわれています。一目均衡表の9日や26日という数字もまた、神秘的な数字だとみなされているのです。


これを非科学的だと呼べるものかどうかは、私には分かりません。


世間で科学的と言われているものが、必ずしも科学的に証明可能なものばかりではありません。時々、深海から見たこともないような魚(?)が発見されるように、自分たちの知識はまだまだ限定的です。極論すれば、私たちは地球に関してさえ、まだ象の尻尾だけを見て、象とは蛇のように細長いものと思っているのと、大差ないかも知れないのです。


科学的、非科学的というのは、合理的で客観的か、そうでないか、という区別なのだと思いますが、飛行機が飛ぶのは非科学的だという説もあるのです。つまり、理数学的には飛行機が何故飛ぶのかは解明されていないと聞きます。その意味では非科学的なのですが、現に空を飛んでいる飛行機を客観視することができずに、非科学的だと決めることもまた非科学的でしょう。


自分が知らない、自分には理解できないというのは、まさしく主観なのですから、その主観を元に、神秘の数字やフィボナッチ係数、天文学、占星術と金融市場との関係を否定するものまた、非科学的だといえるのです。


世の中、宇宙といった方が正確でしょうが、微妙なバランスの上に成り立っています。太陽の黒点の変化や、星座の位置関係が、地球の磁場や降り注ぐ宇宙線を変化させ、地球の気候やイオンの量、動植物の動向に影響を与えることは否定できないかも知れません。毎日の、日の出、日の入り、満潮、干潮、月の満ち欠けのヒトへの影響もあるでしょう。


人間の知力や知識の限界から、そのことを「科学的に」証明することができなくても、現実の変化の観察から、占星術や占いが発展してきたと考えることもできます。現に飛行機が飛んでいるのと同じです。


昔は、空を見て天気の変化が分かる人が多かったように、おそらく昔の人達の方が、太陽や星、空、雲、風、潮、海の色、川の音など、様々な自然の変化の観察に優れ、敏感だったことと思います。


また、戦に明け暮れていた時代には、民族や国の存亡が1つの戦の勝敗にかかっていることもあったでしょう。そういった時代の、むしろ私たちよりも生存における能力を持っていた人たち、最高の知識レベルの人たちが頼ったのが東西の占星術などの占いなのです。切実度や影響の大きさは金融市場どころではないのですから、迷信だと切って捨てるのはどうかと思います。


他の選択肢を見てみましょう。


(1)の「納得のいかない手法を無理に利用する必要はないが、すべてオカルトと決めつけるのも早計。大勢が気にしている概念や手法は、理由はどうあれ、それなりに効力を発揮することが多く、知識として持っていて損はない」というのは、必ずしも間違いではありません。とはいえ、知識として持っていて、損につながってしまう可能性も否定できません。最も大切なのは、値動きなのです。


(3)の「月は人間の生体リズムに大きな影響を与える。相場も人間の営み。天体の活動と相場に相関性がないと決めつける理由はどこにもない。金融占星術に限らず、先入観を捨てて自分自身でデータを検証していく姿勢が投資家には必要だ」も同様です。データを検証し、相関性を発見できれば利用価値が高いでしょう。しかし、ほんの数パーセントでも例外が起きる可能性のある限り、リスク管理は欠かせません。そしてリスク管理とは値動きの観察からのみ可能なのです。


相場で大事なものはたくさんあります。ファンダメンタルズや需給も重要です。しかし、値動きに反応することは、他のすべてを天秤の一方に乗せてもこちらが重く、究極的には他のことはすべて無視していいくらい重要なのです。


ここでの解説で分かるように、正解(2)の「相場で生き残りたいなら、ジンクスや占いはもちろん、論理的に説明しづらいアノマリーの類は率先して排除しなけければならない。不確実なものに惑わされず、投資対象の値動きを注視することを心がけるべきだ」は、何もそこまで、という頑なな姿勢で、自分の可能性を狭めてしまっているように思えます。にもかかわらず、正解としたのは、唯一この答えだけが、値動きの重要性を何よりも優先しているからです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「その他の問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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