あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

株式投資を初めて1年、IPO株が初めて当選したあなたは、公募価格30万円でその株を10株購入しました。各社の初値予想は35〜45万円で、安全を考えなるべく早く利益確定しようと考えていたのですが、フタを開けてみると、実際の初値は公募価格を大きく下回る25万円に。いきなり15%以上の含み損を抱えてしまいました。この事態にどう対応し、どう反省するべきでしょうか。正しい組み合わせを選んでください。

正解は・・・
(3)【対応】(1)と同様に、なるべく早く全株を処分する。【反省】株式市場で売買されている銘柄が4000近くもあるなか、あえてIPO株を手がける合理性はなかった。公募・セカンダリーの違いに関わらず、自分の投資対象としてそもそも不適切だった。

あなたの投資は、当初から問題を抱えています。自分の判断でもない値上がり予想を手掛かりに、素早く利食おうとしていたことです。そんなことができるのなら、誰でも同じことをするでしょう。つまり、多くの人が本気で持とうとしていない銘柄なのですから、値上がりしないのです。正解は、(3)の「【対応】(1)と同様に、なるべく早く全株を処分する。【反省】株式市場で売買されている銘柄が4000近くもあるなか、あえてIPO株を手がける合理性はなかった。公募・セカンダリーの違いに関わらず、自分の投資対象としてそもそも不適切だった」となります。


金融市場には、スキャルパー(scalper)と呼ばれる人たちがいます。頭皮をはぐ人という意味で、わずかな利ざやを求めて売り買いをする人たちです。シカゴなどでの先物市場でピットに入って取引をしている人たちや、地場の証券ディーラーと呼ばれる人たちの多くがスキャルパーです。彼らは、買って上げれば、すぐにでも利食おうとします。


ところが、市場で取引するのがスキャルパーばかりだと、実際に利食えるのは、運動神経の良いほんの一握りの人たちだけです。ほとんどの人はコストで利食うことができず、損切りで終わるのです。なぜなら、誰もが、買った瞬間に売りを考えているからです。あなたのIPO投資と似ていますね。


スキャルパーが儲けることができるのは、彼らとは違う発想で、保有しようとする人たちがいるためです。何時間か保有しようとする人たちがいると、買いで入ったスキャルパーの利食いのチャンスは何度か訪れます。長期間保有しようとする人が大勢いると、スキャルパーは買い回転の効いたトレードができるようになります。


個人や機関投資家が、ある銘柄を比較的短期間にせよ「保有」しようとする時には、様々な理由があるでしょう。なにしろ、4000近い銘柄の中から、ごく一部の銘柄だけを保有するのです。その時、そのIPOを保有しようとする根拠が、他の4000銘柄よりも強いものなのでしょうか?


私はIPOに応募したことがありません。したがって、IPOを保有しようとする人の根拠が分かりませんので、なぜ、私がIPOに興味がないかを述べることにします。


・テクニカル分析につかえるデータが皆無なこと
私は、相場で最も大切なのはタイミングだとしている。テクニカル分析はタイミングの判断には欠かせないものだ。したがって、過去の価格データのないIPOでは、売り買いのタイミングが分からない。

・ファンダメンタルズ分析が難しいこと
選択肢(1)のように、「事前に業績や株数、同業他社との比較、需給面など検討の上で投資すべき」だとしても、IPOでは歴史の浅い企業が多いので、データ面で不足がある。また、創業何十年といった歴史のある企業のIPOでも、公開データが不十分な場合がある。

・流動性のデータがないこと
これまで市場取引されたことがない銘柄に、出来高などのデータがあるはずもない。これでは流動性リスクがどれだけあるかの判断ができない

・自分のポジションが把握できないこと
当選や配分とやらで、実際に自分が保有することになる株数が、事後にしか分からない。あまり興味がないので、仕組みの詳細は知らないが、他のオークション形式のものから類推すると、人気がなく値下がりするものは多く買え、人気があり値上がりするようなものは少なくしか買えないので、割に合わない。


これが私がIPOを避ける理由です。他の選択肢が不正解な理由も同様です。


一時のIPOブームの時には、ほとんどの初値が事前予想よりも高く、多くが儲けることができたと聞きます。そんな時ならまだしも、今、目先の儲けのためのIPO投資でもないかと思います。


IPOに応募するなら、目先の含み損などに一喜一憂せず、事業の将来を見据えた長期投資です。IPO投資はリスク管理が難しいのですから、上場による大きな資金調達という決断をした、経営者と夢を共有する気持ちが必要でしょう。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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