あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[ニュースに関する問題]

株や為替のニュースでは、「材料出尽くしで〜」「織り込み済みで〜」「利益確定の〜」「失望感から〜」「嫌気され〜」といった具合に、価格変動について様々な理由が説明されます。かつて、社会人としての第一歩は経済紙を読みこなすこと、と教わった方も多いでしょう。では、個人投資家としては、これらのニュースとどう付き合うべきでしょうか。

正解は・・・
(2)揺るがない事実としての「値動き」は確かに重要だが、世間に広く報じられる価格変動の理由付けにも、コンセンサスとして一定の価値はある。後講釈に聞こえるとしても一応は聞き、そこを出発点に自分の考えを組み立てるのが良い

相場で最も信頼できる情報は値動きそのものです。ところが、値動きは動いた後になってからしか分かりません。つまり、常に後追い情報なのです。相場がなぜ動くかを知り、次の動きを予測するためには、値動き以外の情報も知る必要があります。正解は(2)の「揺るがない事実としての『値動き』は確かに重要だが、世間に広く報じられる価格変動の理由付けにも、コンセンサスとして一定の価値はある。後講釈に聞こえるとしても一応は聞き、そこを出発点に自分の考えを組み立てるのが良い」となります。


私は値動きを観察し、値動きに反応せよとして、プライスアクション理論なるものを提唱しています(以下引用)。


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・プライスアクション理論(Price Action Theory)

相場は情報戦の最前線などとも言われるが、どの情報も当てにならないか、遅いかだ。未来に起きる確率の高い情報は、インサイダー情報なのだから、利用すると罰せられることになる。

ところが、相場には誰もが知ることができて、最も信頼に足る情報がある。価格情報だ。価格は、その背景にあるすべてのことを織り込んでいるだけではない。価格の上げ下げが、そのままあなたの収益につながるのだ。

星の動きや、昆虫、微生物などをひたすら観察することから、何かを見つけ出す自然科学のように、相場で最も大切なのは、価格を観察することだ。

価格を観察し、価格の動きに反応することが、最も効率的な運用だと説明したものが、プライスアクション理論だ。

相場は投機(仮需)を縦糸に、投資(実需)を横糸に編み上げる、タペストリーのようなものだといえる。投機(仮需)は市場の担い手ともいえ、リスクを取って実需相手の取引をしたり、流動性を提供することにより、キャピタルゲインを得ようとする。一方の投資(実需)は資金の調達や運用、あるいはモノの売却や購入のために、市場を利用する。市場はどちらが欠けても正常には機能しないのだ。

投機の方は、借入金というレバレッジ効果で量的には大きいのだが、いつか返さねばならないという時間の制限がある。膨らんだポジションは必ず閉じられるので、ボラティリティ(価格波動)に関与する。チャート上の縦軸の力だ。

投資は保有(または売り切り、買い切り)という形で、量的には制限があるが、時間的には非常に長く(売り切り、買い切りは無限に)相場に影響を与えている。チャート上では横軸に与える力となり、トレンドに影響を与えるのだ。

限られた時間内では投機の力の方が強いのだが、ならせばネットゼロの売買である投機には、トレンドがつくれないのだ。

投機資金、投資資金という2つの異なった資金の性格をかんがみると、時間効率的に収益を上げ得るのは投機だということがわかる。また、価格変動を求めて必ず行き過ぎ、膨らめば閉じるという投機資金の性質を理解すれば、投機が売り過ぎて割安になったところを買い、買い過ぎて割高になったところを売る、ロングショートの戦略がもっとも効率よく収益を狙えることになる。一方、長く寝かせることができる資金では、投資の方がより安定的に収益が狙えるのだ。

中長期の投資は、マクロやミクロのファンダメンタルズの数値を信じるところから始まる。国や企業が発表する数値を信じることなしには、投資物件に対する評価が行えず、投資を始めることができないのだ。そして、不正会計やスキャンダルなど予期せぬイベントが発覚し、株価が急落することになっても、その銘柄を推奨したアナリストが責められることはない。騙される方には罪がないからだ。

一方、キャピタルゲイン狙いの投機が信じるのは、基本的には値動きだけなのだ。投機の売買には必然性がなく、おまけに時間的な制限があるので、値動き以外を信じる余裕がないともいえる。

とはいえ、投資、投機、いずれも場合も、収益に直結するのは値動きのみだ。

相場で最も大切なのは値動きそのものだ。他のあるゆるすべてのことは、値動きに集約されて、その結果として損益が発生する。ファンダメンタルズ的に、テクニカル的に、あるいは他のすべての観点から「良い物件」でも、値動きがなければ損益は発生しない。自分の思惑と逆に行けば損が出る。

相場では、初めに値動きありき、であり、最終的にも値動きなのだ。

プライスアクション理論は、中長期の投資をも含めた資金運用の、すべての拠り所を価格の動きに求めるものだ。

現場のディーラーは、上が重い、下が堅いといったプライス感覚に応じて売り買いを行う。その感覚の根拠は、値動きと、そこに何かを加えるならば出来高だけだ。つまり、だれでもが入手できる値動きと出来高をおさえることで、歴戦のディーラーと同じような運用ができるのだ。売り過ぎて割安になったものの下値が堅くなればロングをつくり、買い過ぎて割高になったものの上値が重くなればショートをつくる。これで投機資金の行き過ぎを取ることができる。

投資にもプライスアクション理論は適用できる。ファンダメンタルズ的にどんなに良い銘柄でも、すぐに値上がるとは限らない。また、最終的に値上がるにしても、上げ始めるまでに数カ月、数年を要することもある。一方、ファンダメンタルズ的には価値が認められない銘柄が急騰し、数倍に値上がりすることも日常茶飯事だといえる。

プライスアクション理論は中長期の投資にあたっても、一切の先入観を持たない。値動きや出来高をみて、急騰の可能性の条件を満たしたものを買っていくだけなのだ。つまり、ファンダメンタルズの良し悪しには関係がなく、上げ始めたものだけを効率的に狙えるのだ。このことはまた、ファンダメンタルズの悪化であろうが、不正会計やスキャンダルであろうが、どんな理由ででも、値下がるものは売り払うことをも意味している。


プライスアクション理論の要点:

・キャピタルゲインは価格の変動によってのみ得られる

・あらゆる投資尺度、材料は、理論価格収斂型であっても、予測型であっても、価格が反応して初めて、成否が判明する

・投資尺度が正しい場合でも、基礎となる条件が変われば、結果がともなわない場合がある

・投資尺度が正しく、基礎となる条件が不変でも、まったく別の要因で失敗することもある

・すなわち、「価格の動き」そのもの以外のすべてを完璧に押さえていても、価格が思惑に反することのリスクを排除することはできない

・したがって、最大のリターンを追求しながら、同時にリスクが最小であるという、最も効率的な運用とは、価格の動きのみに反応することである

私はこのプライスアクション理論を、タペストリー第1理論(http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10295633030.html)、第2理論(http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10300171680.html)とともにまとめて、タペストリー・プライスアクション理論と呼んでいる。(引用終り)
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ここで、プライスアクション理論を資金運用の現場に適用するのに実用的なのが、テクニカル分析なのです。


テクニカル分析は現在までのすべての値動き情報を材料として扱うので、タイミングを取るのに適しています。しかし、「板一枚下は地獄」、「一寸先は闇」といったように、相場のリスクとリターンは背中合わせ、先のことは決して分からないのです。


テクニカル分析はまた、サポートラインの内側では買えるが、外側は売らねばならないというように、180度、簡単に手のひらを反すものです。谷越えを判断して買ったり、思惑違いで安値を更新すれば損切ったりするのには適しているのですが、相場の大局観を持つことには役立ちません。


とはいえ、先のことは分からないからと、行き当たりばったりの生活を続けていれば、きっとどこかで追い詰められてしまいます。着実に何かを残したり、積み上げたりするには、先のことは分からないなりに予測して、計画性を持たねばならないのです。


そのためには、いまの相場がどうして動いているのかを、ファンダメンタルズ分析を含めた、あらゆる角度から分析する必要があるのです。その分析の着眼点が良く、緻密であれば、先の事が分からないはずの相場観が、それなりに当たるようにもなってきます。


ここで、他の選択肢もみてみましょう。


(1)情報として信頼できるのは、「その日、何が、どれだけ、いくらで買われたか、売られたか」という事実だけ。常套句的な理由説明には根拠がなく無視して良い。そもそも理由など分かるはずもなく、考えること自体がナンセンスである


これは先のことなど考えても分からないからと、考えること自体を放棄してしまっています。これでは、あなたの成長もまたありません。


(3)プロの送り手によるニュースには、市場関係者に取材した上で書かれたものも多く、解説の信頼性は高い。記者は、個人投資家より豊富な情報を持っており、その情報に無料または安価で触れられるのだから、参考にしないのは損である


これは(1)とまったく違うようでいながら、自分で考えないという点に共通点が見られます。自分で判断せずに受け入れるだけでは、やはり、あなたの成長はあまり望めません。


相場は様々な材料で動きます。拙著「矢口新の相場力アップドリル『為替編』、『株式編』」(参照:http://dealersweb.ken-shin.net/bookshop.html)では、それぞれの材料が持つ市場価格への影響力をドリル形式で詳細しています。これらを自分の頭で考えながら解いていくことで、あなたの相場力はアップしていきます。ぜひ、トライしてみて下さい。


買ったものの値が上がれば収益でます。逆に下げれば損失となります。その意味では、値動きは絶対で、決して逆らってはなりません。しかし、上げるにはそれなりの理由があり、下げるにも理由があります。それを知ろうとしなければ、いつまでたっても値動きに惑わされ、右往左往しなくてはなりません。自分の気持ちをコントロールするためにも、値動きの理由を探らねばならないのです。


正解は、(2)の「揺るがない事実としての『値動き』は確かに重要だが、世間に広く報じられる価格変動の理由付けにも、コンセンサスとして一定の価値はある。後講釈に聞こえるとしても一応は聞き、そこを出発点に自分の考えを組み立てるのが良い」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

書籍

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矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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