今週の解答
[資金管理に関する問題]
もっと値上がりするはずと株を持ち続けて結局損失を出したり、天井圏で利食ったつもりがその後さらに値上がりしてガッカリしたり。個人投資家にとって、損切り以上に難しいのが「利食い」ではないでしょうか。利益を最大化する利食いの姿勢は?あなたがもっとも正しいと思うスタンスを選んでください。
(3)損切りラインを決めておくのは大切だが、利食いのタイミングはケースバイケース。あらかじめ利食い幅を固定せずに、その都度、最大限の利幅を狙っていくべきだ。利益確定は、明確なトレンドの反転を確認してから行う
実のところ、利食いにこれだけが正しいというものはありません。そんななかで、利食いはケースバイケースだと言い切った、(3)の「損切りラインを決めておくのは大切だが、利食いのタイミングはケースバイケース。あらかじめ利食い幅を固定せずに、その都度、最大限の利幅を狙っていくべきだ。利益確定は、明確なトレンドの反転を確認してから行う」が、今回の正解となります。
利食いにこれだけが正しいというものはないのですが、(1)の「株価の下落局面で積極的にナンピンして平均買い単価を下げ、株価が2倍になったところで持ち株の半分を売却するのが良い。こうすることで、手元にキャッシュを確保しながら、実質タダで株券を手に入れることができる」というのは、明らかな間違いです。
(1)が機能するには、株価が必ず下げ止まり、そこからコストを回復するのみならず、2倍になるとの前提が必要です。ところが、株価がどこで下げ止まるかなど、誰にも分からないのです。ぴかぴかの銘柄(例えばGE)の株価でも10分の1ほどにまで売り込まれるのが相場です。これでも儲けられるような運用は、最早異次元の運用で、個人投資家が目指すべきものではありません。
(2)の「総運用資金から1回のトレードで許容できるリスクを逆算し、先に損切りラインを設定する(例えば4%)。その上で、長期的に『損小利大』になるよう利食いラインを設定する(例えば8%)。このようなルールに機械的に従うのが良い」は、一理のある方法です。例えば、システム運用では、このような方法も考えられるでしょう。
この方法の欠点は、コストに近い(例えば4%)損切りの方が、遠い(例えば8%)利食いよりも早く、頻繁についてしまうことです。例えば、1週間で上下に5%ぶれるのが当たり前のような銘柄だと、損切りは簡単につくが、利食いはなかなかつかないことになります。つまり、やればやるほど実現損が膨らむ恐れがあるのです。
世の中には様々な見方があるのですから、私の考え方にも、賛否両論があるかと思います。とはいえ、100%の方が賛同してくれると思うのは、未来は見えない。先のことは分からないということです。相場であれこれ悩むのも、すべては先のことが分からないためなのです。
そこで分からないなりに、トレーディングで何とか利益を残そうとした考え方が、損を小さく、利益を大きくということなのです。つまり、どちらに行くのか分からないのだから、思惑に反した時にはすぐに損切っておき、思惑通りの時はどこまで行くのかずっと引き伸ばそうとするのです。
私は、トレーディングの極意は「谷越えを待って買い、山越えを待って売る」ことだとしています。
谷越えを確認したと判断できたなら買います。そして、谷越えではなかったと判明したなら、つまり、底抜けしたなら損切ります。ここでの損切りコストは、谷越え確認に要した値幅+αです。すなわち、底値から2%上げたところで谷越えだと判断したなら、損切るのは、その安値を下回ったところ、2%+αなのです。
そして、思惑通りに上げ始めたなら、今度は山越えを確認したと判断できるまで引っ張るようにします。
実際にはどうするか、失敗例も含めた実例を大サービスしましょう。
以下は、有料メルマガ「矢口新の-買える谷越え日本株!【プラチナ】」の、先週(8月17日号)の結果です。
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(2009年8月14日終値基準)
ETRY T/P S/L PER PBR MB/SR 3088マツキヨ 2065 2350 1995 12.9 1.1 0.54 4503アステラ(継2) 3650/*3520 3870 3520/*3480 12.6 1.6 0.16 4708もしもし(初) 1870 2120 1745 15.7 2.2 2.05 4967小林製薬 3640 3750 3540 16.5 1.9 0.14 8279ヤオコー(継3) 3100/*2925 3400 2940/*2870 12.5 1.8 0.09
ここで、
ETRY:仕込み参考価格
T/P:利食い参考価格
S/L:損切り参考価格
PER:株価収益率(株価収益率が低いほど、利益に比べ株価が割安)
PBR:株価純資産倍率(1以下は、株価が企業の解散価値より低い)
MB/SR:信用買い対売り倍率(1以下は買い残より空売り残が多い)
(継):ゴールド銘柄に数字の週間、継続登場中
(初):ゴールド銘柄に5週間で初登場
そして、先週の仮想売買の結果です。
マツモトキヨシ BuyMo2040 Low2025-2040-2040-2095-2275 c2300 +12.7 アステラス製薬 BuyMo3590 Low3510(3520) -1.9% BuyWo3520 Low3490-3490-3490-3480 c3490 -0.9% もしもしHライン BuyMo1865 Low1829-1810-1783-1777-1801 c1815 -2.7% 小林製薬 BuyMo3620 Low3590-3590-3630-3690(3750)c3960 +3.6% ヤオコー BuyMo2995 Low2915(2940) -1.5% BuyWo2905 Low2885-2880-3875-2860 c2900 -0.2%
当初の参考価格/*変更後の参考価格
BuyMo月曜寄値の購入価格。Low安値 c引値
BuyWo水曜寄値の購入価格
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メルマガは週一の発行(プラチナ版は毎日フォローアップ)なので、右端の週末価格で一応閉じたことになります。
等金額を上の5銘柄に投資したとすれば1.82%のプラスです。市場は先週3.4%のマイナスでしたので、差し引き5%以上アウトパフォームしたわけです。
この5銘柄中上げたのは2銘柄だけ、マツモトキヨシは利食い参考価格をかなり上に設定したために、週間の上げ幅をすべて取ることができました。一方、小林製薬は前の高値が重く見えたために、その手前に利食い参考価格を設定したため、上げ幅9.4%のうち、3.6%しか取れませんでした。利食いの失敗例です。
下げた銘柄のうち、もしもしホットラインは損切り参考価格に届かなかったために、下げ幅のすべてが損失。アステラス製薬とヤオコーはいったんの損切りの後、買い直し、一時的にはプラスもあったものの、最終的にはわずかながらも損失で終わりました。それでも、どちらも合わせて、それぞれ2.8%、1.7%の損失でしかありません。
上のように5つ投資して、1つが成功、1つが利食いミス、3つが損失というのは、損小利大を心掛けるトレードの典型的なパターンです。それでも、損失が小さいと利益が残るのです。
プラス1.82%というのも、このプラチナ版の取れる週の平均に近いものです。失くす週もありますので、均すと、年率30%くらい取れると思います。損小利大は機能するのです。
もっとも、このメルマガは人様にリアルな情報を提供することで、人様に迷惑をかけたり、自分の評価が地に落ちたりするリスクを負っているわけですから、一切の冒険は避けています。小林製薬の利食い参考価格が低かったのも、安全に、安全にと心掛けているためです。
上の実例でも分かるように、損切りは簡単です。難しいのは損切り後の再挑戦や、利食いなのです。どちらにも、これだけは正しいという答えはありません。相場は紙一重のリスクを取るものだからです。
今回の正解は(3)の「損切りラインを決めておくのは大切だが、利食いのタイミングはケースバイケース。あらかじめ利食い幅を固定せずに、その都度、最大限の利幅を狙っていくべきだ。利益確定は、明確なトレンドの反転を確認してから行う」になります。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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