あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[ニュースに関する問題]

オバマ大統領は2009年8月25日、米国連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に、サマーズ国家経済会議(NEC)委員長ではなく、バーナンキFRB議長を再指名しました。さて、ここで問題です。仮にバーナンキ氏が、来年1月末の任期満了直前に、重病や事故など突発的でやむを得ない理由により議長に就任できない事態となった場合、ドル/円相場はどのように反応すると考えられるでしょうか。

正解は・・・
(1)リスク懸念から円高・ドル安にふれた後は、悪材料出尽くしにより短期間で大きく戻す可能性が高い。どれほどの要人であっても代わりを務める人間はいるもので、この種の材料の影響は長くは持続しない

相場を動かす材料は様々ですが、相場のトレンドに影響を与えるものと、ボラティリティに影響を与えるものとに大別されます。連銀議長は要職で、その再任や変更は大きなイベントですが、日米の資金の流れを変え、相場のトレンドに影響を与えるほどの決定的な意味を持つものではありません。正解は(1)の「リスク懸念から円高・ドル安にふれた後は、悪材料出尽くしにより短期間で大きく戻す可能性が高い。どれほどの要人であっても代わりを務める人間はいるもので、この種の材料の影響は長くは持続しない」となります。


ここで、トレンドとボラティリティについて、簡単に復習しておきましょう。


トレンドとは、上げ相場、下げ相場など、多少の価格の揺らぎはあっても、一定期間は一方向に進む相場の動きです。例えば、年初から年末まで1年で30%上げた市場がある時、その市場は上昇トレンドだったといえます。


ボラティリティとは、価格の揺らぎそのものです。1年で30%上げる上昇トレンドの市場でも、毎月、毎週、毎日とみていくと、必ず上げ下げを繰り返しているものです。仮に、ほとんど揺らぎを伴わず、一定のペースで30%上げた市場があるとすれば、その市場のトレンドは上昇相場ですが、ボラティリティはほとんどゼロです。


どうすればボラティリティが大きくなるのか、その気になれば、あなたにでも実験することができます。出来高の小さな銘柄を探し、それなりにまとまった株数を成り行きで買うと、おそらく価格は跳ね上がります。そして、成行きで売ると、今度は急落します。こう聞くと、何となく儲けられそうでも、実際の実験はやめて下さい。


出来高の小さなものを成り行きで買うと、思いの他、買いコストが高くなり、成行きで売ると、売りコストが安くなって、ほとんどの場合は損失で終わるのです。


この上げて下げるのがボラティリティです。その価格の揺らぎがどんなに大きなものであっても、こういった売り買いで相場のトレンドをつくることはできません。これは溜池に大きな石を投げ込んだのと同じで、波立ちはしても、その影響は短期間でしかないのです。


一方のトレンドは流れです。こちらは、ゆったりと流れる川に浮かんだ葉っぱが、風を受けて一時的に上流に向かうことがあっても、いずれは下流に流されて行くように、方向性がはっきりとしています。金融商品では割高から割安への流れが見て取れます。経常収支がらみの資金の流れも、金利差による資金の流れも、突き詰めれば、割高から割安へと資金は流れるのです。


材料が相場にどのような影響を与えるのかを推し量るには、その材料がトレンドにつながる資金の流れを変えるものか、溜池に石を投げ込むようなものかを考えねばなりません。流れの強さや規模、溜池や石の大きさを探るのはその後です。


これらの感覚は、「矢口新の相場力アップドリル『為替編』、『株式編』」(
http://dealersweb.ken-shin.net/bookshop.html)で磨いて下さい。


では、資金の流れにつながるニュースとはどういったものなのでしょう?


経常収支や貿易収支、あるいは、各国の外貨準備高に関わるようなニュースです。現在のFX市場で、こういった類の最も大きなニュースになり得るのは、中国が完全変動相場制を採用することです。その意味では、現指導部が力を失う可能性あるニュースならどんなものでも、市場に大きなインパクトを与える可能性があります。あの膨大な外貨準備がどうなるか以上の、大きなニュースはありません。


現状では、米連銀の議長が誰になっても、それほどのインパクトはないでしょう。連銀議長だけでなく、大統領が誰になっても、経常収支や金利動向が大きく変わるようなことは考え難いのです。欧州の主要国や日本も同様で、政権が変わっても、大きな資金の流れが変わることはありません。成熟した市場経済の国々は合理的に資金が流れていますので、それこそ計画経済に移行するなどのドラスティックな変化でもない限り、資金は割高から割安に流れます。


極論すれば、米連銀議長の進退は、FX市場にとって溜池に石を投げ込むようなイベントです。その石が大きくて、波立ちも大きければ、その分反動も大きいだけのことです。


正解は、(1)「リスク懸念から円高・ドル安にふれた後は、悪材料出尽くしにより短期間で大きく戻す可能性が高い。どれほどの要人であっても代わりを務める人間はいるもので、この種の材料の影響は長くは持続しない」となります。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「ニュースに関する問題」で、さらに勉強しましょう。

書籍

このコーナーが本になりました!第二弾発売中
矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2

マネーのまぐまぐ!で連載中の「目指せ!相場の勝ち組〜矢口新の『トレードセンス養成講座』」が本になりました。過去の問題から、特に相場力アップに役立つ50問をピックアップ。矢口氏の書き下ろし解説もついて、自分の頭を使って考え相場の“基礎体力”を養うためのヒントが満載です。ぜひご覧ください。

『矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2』の詳細はこちら

プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

メールマガジン

矢口新のメルマガ

さらに詳しく勉強してみたい方にはこちらの無料メルマガをおすすめします。

相場を知る・より安定した将来設計のために

投資運用の基本を押さえれば、やればやるほど上達します。自己責任の時代。相場で飯を食いたい。息の長い相場生活を送りたい。そんなあなたへ、相場のプロからひとこと、ふたこと。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

メールアドレス 規約に同意して
まぐまぐ!・有料メルマガ
相場はあなたの夢をかなえる─有料版─

ご好評のメルマガ「相場はあなたの夢をかなえる」に、フォローアップで市場の動きを知る ー有料版ー が登場。本文は毎週月曜日の寄り付き前。フォローアップは週2〜3回、ホットなトピックについて、より忌憚のない本音を語る。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

【840円/月(税込)/毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く)】

購読申込み