あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[ニュースに関する問題]

あなたは日本株を中心に運用するスイングトレーダーです。我が国で、上場企業の法人実効税率が約30%になること、消費税率が15%になること、上場株式のキャピタルゲイン税率が30%になることの3つがほぼ同時に決まったとします。今後、日本株に対して、どのようなスタンスで挑むべきでしょうか。

正解は・・・
(3)法人実効税率の引き下げ+消費税率の引き上げのセットはやや株式フレンドリー。利益が出る前から譲渡益税を気にしても仕方がないので、当面これまで通りの取引で良い。過剰反応によるボラティリティの高い展開があるなら望むところだ

増税2つに減税1つが株式市場に与える影響は、実のところ難しい問題です。難しい時は、これまで通りでしばらくやってみることです。正解は(3)の「法人実効税率の引き下げ+消費税率の引き上げのセットはやや株式フレンドリー。利益が出る前から譲渡益税を気にしても仕方がないので、当面これまで通りの取引で良い。過剰反応によるボラティリティの高い展開があるなら望むところだ」になります。


日本のGDPの約3分の2は個人消費が占めています。現在5%の消費税率が15%に引き上げられることは、景気にとってのマイナス要因です。


一方、株式市場は上場企業の資金調達の場であり、投資家にとっての運用の場です。この時、現在40%で、世界一高いとされる法人実効税率が30%に引き下げられることは、企業収益にプラスに働き、株価上昇の要因です。しかし、投資家が売買で得たキャピタルゲインへの課税が、現在の優遇税制の10%から、元の20%を飛び越して、30%に引き上げられると、株式投資の魅力が相当分損なわれます。


つまり今回の問題は、景気にとってマイナス、企業収益にはプラス、投資物件としての魅力にはマイナスの綱引きが、現状の日本株市場へどのような影響を与えるかを見るものです。


選択肢を1つずつ見てみましょう。


(1)法人実効税率の引き下げは業績を向上させる買い材料だが、キャピタルゲイン税率の引き上げは資金の逃避に繋がる売り材料で、効果は相殺される。消費税率のアップによる景気悪化を見越し日本株を手仕舞い、あらためて売りから入るのが良い


(1)は、分からないなりに、マイナス要因の1つとプラス要因1つとを相殺してゼロと見なし、残る消費税率アップのマイナス要因だけを考えてみるものです。ここで悩ましいのは、景気と株価の相関関係が必ずしも証明されていないことです。


世界53カ国の何十年にも及ぶデータをもとにした調査では、最も高い成長率の国々の株式は、平均で年率6%のリターンだったのに対し、最も低い成長率の国々の株式の平均リターンは、年率12%だったのです。


もちろん、この調査をもって、景気のマイナス要因を株価のプラス要因だとするのは短絡的に過ぎますが、正の相関関係もまた信じるに値しないのです。つまり、消費税率アップを材料に、売りから入るのは危険だということです。


(2)消費税の引き上げのみでは景気が悪化するが、同時に法人実効税率を引き下げるなら、むしろ景気にプラスとなる可能性もある。問題はキャピタルゲイン税。日本株から資金が逃避する恐れがあるためウェイトを落としていくのが賢明だ


これも分からないなりに、マイナス要因の1つとプラス要因1つとを相殺してゼロと見なし、残るキャピタルゲイン税率アップのマイナス要因だけを考えるものです。


周知の如く、日本株市場の主力プレーヤーは外国人です。この時、相手国と日本の間にキャピタルゲイン課税免除条項のある租税条約が結ばれていれば、日本では課税されません。また、租税条約が結ばれていなくても原則非課税となっています。例えば、アメリカとは租税条約が締結されていますので、原則課税免除です。もっとも、アメリカでの納税義務が発生し、税法以外にも外為法等留意すべき点がありますが、これは今回の問題からは外れます。


また、もう1つの主力プレーヤーである日本の機関投資家にも、個人に対するようなキャピタルゲイン課税は適用されませんので、今回の問題からは外れます。また、機関投資家はどんな場合にでも、ある程度は投資しますので、この影響の大きさを考えるのは難しいのです。


そこで、今回で一番問題となるのは、あなた自身がその課税を嫌うかどうかです。自分の取り分が減るのを嫌って日本株投資を止めた後、仮に長期上昇局面に入ったとして、平静でいられるかどうかです。


(3)法人実効税率の引き下げ+消費税率の引き上げのセットはやや株式フレンドリー。利益が出る前から譲渡益税を気にしても仕方がないので、当面これまで通りの取引で良い。過剰反応によるボラティリティの高い展開があるなら望むところだ


「法人実効税率の引き下げ+消費税率の引き上げのセットはやや株式フレンドリー」かどうかは難しいところです。消費税率を引き上げても、必要な消費は必ずしも減らないでしょう。そこで、売上を伸ばし、利益に対する税率が下がれば、企業収益は相応分伸びますので、株式フレンドリーです。とはいえ、消費税率アップが決定的な売上減少につながる産業があるかもしれません。つまり、セクター分析がより重要となるのです。


また、相場は波動を伴って動きますので、ボラティリティが高まっての行き過ぎを押さえたり、利益を伸ばしたりするのはスウィングトレーダーにとって重要です。


こうしてみると、難しいながらも正解は、(3)の「法人実効税率の引き下げ+消費税率の引き上げのセットはやや株式フレンドリー。利益が出る前から譲渡益税を気にしても仕方がないので、当面これまで通りの取引で良い。過剰反応によるボラティリティの高い展開があるなら望むところだ」となるのです。

見事正解だったあなたは・・・

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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