あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[資金管理に関する問題]

FXを始めたあなたが、実際に何度か取引をしてみて感じたのは、経済指標の発表や要人発言の前後はいつもより値が飛びやすく、またスプレッドが広がるのだな、ということでした。さて、ここで問題。これらのイベントが事前に分かっている場合、ロングであれショートであれ、何らかのポジション調整をするべきなのでしょうか?

正解は・・・
(3)値動きがあってナンボとはいえ、リスク管理も重要。急激な価格変動の可能性を念頭に、いつもよりポジションを軽くするのが良い。イベント後は、値動きを見ながら買い乗せ、あるいはドテン売りなど臨機応変に対応する

値が飛び、スプレッドが広がるということは、思い通りの価格では売買できないということです。最悪の場合には、利食いのはずの売買が、損失で終わることもあるのです。その時、ポジションが大きいと、心身ともにその大きさに見合ったダメージを受けてしまいます。正解は、(3)の「値動きがあってナンボとはいえ、リスク管理も重要。急激な価格変動の可能性を念頭に、いつもよりポジションを軽くするのが良い。イベント後は、値動きを見ながら買い乗せ、あるいはドテン売りなど臨機応変に対応する」となります。


現場のディーラーたちにとって、経済指標の発表や要人発言といったイベントは、さながら格闘技の選手が月に何回かのリングに上がるような心持で迎えます。


自分が動く側は、どのディーラーが早くまともなレートを出してくれるかを見極め、発表とともに間髪を入れずに直通電話で、例えば「10本プライス、プリーズ」、あるいはもっとフェアに「10本売りたい」などと伝えます。その時に、長く待たされたり、あまりにひどいレートを提示されたりすると、次のイベントでは他のディーラーを呼ぶようなるのです。


値を建てるマーケットメーカー側は、顧客が興味を失わないぎりぎりの広いスプレッドをできるだけ早く提示し、売り買いのスプレッドで儲けようとします。この時、誰よりも早く値を建てれば、どんなに広いスプレッドでも、顧客はどことも比較ができないので売買する確率が高いのです。


こう書くと、非常識に高い売り値を買われたマーケットメーカーは、しめしめとほくそ笑みそうなものですが、往々にしてそこまで買うのかと不安になり、損を出しながら、自分もより高い売り値でカバーすることもしばしばです。もちろん、ほぼ瞬時に安い売り値を買い、利益を確定することも多々あります。


ここで注意を要するのは、多少スプレッドが開いているとはいえ、すぐにレートが取れて、すぐにカバーできるインフラがあることです。インフラとは、ハード面だけでなく、レートを出してくれる人がいるというソフト面が、より重要です。


一方、誰よりも早く、しかも狭いスプレッドでレートを提示したのに見送られると、マーケットメーカーは時間の無駄をした気がして、その顧客の評価を密かに下げます。


ディーラーの世界は極めて狭い世界です。金融機関の数は限られており、その中でも、市場をサポートするとの気概を持つ者は、更に少なくなります。どんなに大手の金融機関に勤めていても、自分勝手なディーリングを繰り返し、市場で「えげつない奴」だと評判が立っていたなら、荒れた相場で、皆が苦しい時には、後回しにされてしまうのです。


とはいえ、「えげつない奴」の集団では、仲間うちでは親分子分でサポートしながら、市場の新参者をいじめたりします。これは、おそらく国民性や業界を問わず、どこの世界でもあることでしょう。


また、そういった作為的なものとは無縁でも、何しろ瞬時に億円以上単位の金額がやり取りされますので、言った言わないの水かけ論もしばしばです。金融機関は、そういったトラブルに備えてすべての会話を録音しています。非常にピリピリとした世界なのです。


プロのディーラーにとって、あなたのような個人投資家は「お客さん」です。と同時に、プロのディーラーたちも、あなたと同じリスクを取っています。あなたがいつもディーラーを助けていて、覚えられていれば別ですが、そうでなければ、ディーラーが苦しい時には、あなたは後回しにされてしまうのです。


そうなると、あなたはポジションを抱えたままで身動きがとれず、損失が拡大していても呆然と見ているだけになります。


イベント時は、プロのリングです。アマチュアの格闘家でも、プロより強い人がいるように、個人投資家でもプロのリングに上がることは可能です。とはいえ、インフラ不足なので百戦錬磨のプロたちよりも、不利な条件で戦うことになるのです。リスク管理は必須でしょう。


(1)の「値が飛びやすいということは、普段よりも難しい相場ということ。あえて手を出す必要はない。一旦、すべてのポジションを精算し、イベント通過後にあらためて買いなり売りなりで入り直せば良い」は正論です。


このコラムのタイトルが「安全確実な資産運用」であって、「トレーディングセンス養成講座」でなければ、正解だといえます。なにごともバランスです。イベント時は面白いので、小さな額で遊んでみましょう。リスクばかり見ていたなら、何もできなくなります。


(2)の「値幅が期待できるイベント前後は絶好の稼ぎ時。相場が動意づく時に参加していないようではトータルで勝つことはできない。いつも通りに取引すればよく、これといったポジション調整は不要である」は、無謀の一言です。


したがって、正解は(3)の「値動きがあってナンボとはいえ、リスク管理も重要。急激な価格変動の可能性を念頭に、いつもよりポジションを軽くするのが良い。イベント後は、値動きを見ながら買い乗せ、あるいはドテン売りなど臨機応変に対応する」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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