あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[ニュースに関する問題]

あなたは日本株専門のスイングトレーダーです。2010年X月、金利据え置き観測が大勢を占める中、米連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年0.5%とすることを決定しました。ドル円相場は一気に1円ほど上昇し、ニューヨークダウは約50ドル安で引けています。これを材料に日本株を手がけるとしたら、どのようなスタンスが望ましいでしょうか。

正解は・・・
(3)円安ドル高を念頭に、自動車、ハイテクなどの輸出関連株をまずは打診買い。うまく利が乗るようなら買い乗せ、駄目なら損切り、と臨機応変に売買する。この材料が日本株に与える影響は、事前に決めつけないほうがよい

金利と株価の関係は複雑です。金利を上げる環境は株式市場にプラスでも、金利上昇は企業収益にマイナスだからです。ましてや、アメリカの利上げですから、日本株への影響はさらに複雑です。ここでは、事前に決めつけないことを念頭に入れながらも、円安ドル高に反応してみてはどうでしょう?


正解は(3)の「円安ドル高を念頭に、自動車、ハイテクなどの輸出関連株をまずは打診買い。うまく利が乗るようなら買い乗せ、駄目なら損切り、と臨機応変に売買する。この材料が日本株に与える影響は、事前に決めつけないほうがよい」となります。


米連邦準備制度理事会(FRB)などの金融当局が、政策金利FFレートを上下させる目的は、主に景気対策とインフレ対策です。好景気につられて物価が上がるような、両者に矛盾がない時は、インフレ抑制と持続的な経済成長のために、金利が引き上げられることになります。一方、景気は弱いが、商品相場の上昇などにより物価も上昇するような時には、どちらに優先順位をおくかの微妙な調整を迫られることになります。


一連の政策の中で、米国が政策金利の引き下げに転じたのは2007年9月のことで、サブプライム・ショック後の信用収縮、景気後退懸念から、それまでの5.25%から4.75%に引き下げました。以来2008年12月の0.25%への引き下げまで続き、2009年10月の時点のFFレートは0.25%のままに留まっています。


その間、商品相場は乱高下しましたが、過去の水準からみると、金価格が史上最高値を更新し、原油価格が3,4倍で高止まりしているなど、インフレ懸念がないとは言えません。


次回、政策金利が引き上げに転じるのは、景気の底入れが確認できたとして、インフレ対策に乗り出す時でしょう。つまりその時には、株価上昇の環境が整っていると、金融当局が判断した証しとなります。


ところが、金利の上昇は企業収益の圧迫要因ですので、いずれ株価の下げ要因となってくるのです。今回の問題でニューヨーク・ダウが下げたのはそのためです。しかし金融当局が、株価が大崩れするとの懸念がある時に、金利引き上げに転じることは、まずないと思っていていいでしょう。


FRBは例外的ですが、他国の金融当局が、政策金利を上下させる目的には、景気対策とインフレ対策の他に、外国為替対策があります。(FRBにとっての外為政策の優先順位は低い)


金融市場での割安とは、同じ投下資金で、より多くのリターンが期待できることを意味します。高金利は、同じ投下資金で、より多くの確定金利収入が得られるので、割安を意味します。そして、割安のものは、通常、割安感がなくなるまで買われるのです。


もちろん、投資では、信用リスクや流動性リスクなども判断の材料とされますので、より複雑な動きをしますが、原則的には金利の上がった通貨は買われるのです。今回の問題でドル円が上昇したのはそのためです。


さて、次回の米国の利上げが日本株に与える影響ですが、基本的にはプラス要因だと考えていていいでしょう。米国景気の底入れも、円安ドル高も、日本株にはプラスの要因だからです。


ここで今回の選択肢を見ておきましょう。


(1)米国株が下落したことからも分かるように、市場が十分に織り込んでいないタイミングでの金融引き締めは株価にマイナスなので、日本株も同様に売りで良い。この材料は、日本株にマイナスに働く可能性が高いと判断する

米国株の下落は、想定外の驚きに対処しただけです。利上げの環境は、米景気が最悪期を脱したことを、金融当局が認めたのですから、株式市場にもプラスです。また、史上最低水準の0.25%から、わずか0.25%ほどの利上げでは、企業収益への影響も限られています。むしろ、金利水準も正常化へ戻り始めたのですから、長い目ではプラスなのです。


(2)利上げができるほどに本格的な景気回復が始まったとみて、割安銘柄を買い遅れることのないよう、前場開始から業種にこだわらず積極的に買っていくのが良い。この材料は、日本株にプラスに働く可能性が高いと判断する

史上最低水準の0.25%から、0.25%の利上げは、景気の底入れを示唆することはあっても、本格的な景気回復かどうかまでは分かりません。業種にこだわらず積極的に買えると、決めつけるのはどうかと思います。


(3)円安ドル高を念頭に、自動車、ハイテクなどの輸出関連株をまずは打診買い。うまく利が乗るようなら買い乗せ、駄目なら損切り、と臨機応変に売買する。この材料が日本株に与える影響は、事前に決めつけないほうがよい

世界一の経済国であり、日本にとって一、二の貿易相手国である米国の景気底入れの恩恵を真っ先に受け、円安ドル高メリットを享受できるのは輸出関連株です。それでも、値動きには逆らわず、臨機応変に対応する(3)が正解です。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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