あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

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株式投資において、この銘柄は信用買い残が多い、信用売り残が多いといったことがよく指摘されます。では、現在の信用倍率や貸借倍率が将来の株価に与える影響について正しく説明しているのは、以下のうちどれでしょうか?

正解は・・・
(3)信用倍率や貸借倍率は将来の需給関係を示すが、実際の株価は実需や出来高など他の要素にも左右されるため、直ちに将来の株価を左右するものではない

相場はバランスです。需給要因やファンダメンタルズ、テクニカルズ、目先の材料などに影響されて、上げたり下げたりします。「これだけ見ていれば大丈夫」というようなものはないのです。正解は、(3)の「信用倍率や貸借倍率は将来の需給関係を示すが、実際の株価は実需や出来高など他の要素にも左右されるため、直ちに将来の株価を左右するものではない」となります。


相場は様々な要因で動くことが知られています。例えば、政治的要因、規制、要人のコメント、市場介入、金融政策、経済指標、投資家動向などはどの市場でも共通の価格変動要因だといえます。ここに債券市場ならインフレ率が外せないし、株式市場なら企業収益が重要です。FX市場なら通関統計、商品市場では、実体経済での需給や在庫情報が重要です。


ところが、どんな要因をもってしても、相場は誰かが売り買いしなければ動かないといった、共通の性格に行き当たることに気付きます。同じことを反対側から確認すると、何も材料がなくても、誰かが売り買いすれば相場は動くのです。


ここで、注意を促したいのは、市場の要因だけでなく、売り買いする当事者の側にも、資金の性質における多様性があるということです。


市場参加者を大別すると、実需(投資)筋と、仮需(投機)筋に分けられます。


株式市場における実需とは、資金調達のために株式を発行、売却する企業が供給サイドにいます。一方、企業を所有するためや、経営に対して発言権を得るために株式を購入する資本家や投資家、割り当てられた資金を必ずどこかの株式で運用する年金基金や、株式ファンドなどの長期投資家が需要サイドにいます。


実需(投資)をポジションという観点から分析すると、保有目的であり、短期間では転売しないことが特徴です。


一方、株式市場における仮需とは、証券会社のディーラーや、デイトレーダー、あるいは、キャピタルゲイン狙いのファンドなどです。今回の問題のような信用取引での売買は、典型的な仮需なのです。


仮需(投機)をポジションという観点から分析すると、キャピタルゲイン狙いであり、時間の問題で反対売買されることが特徴です。


相場は買えば上がり、売れば下がります。それによって価格は上下動を繰り返すわけですが、ほとんどの参加者がポジションを膨らませたり閉じたりしている傍らで、静かに売り切り買い切り、あるいはそれに準じた長期保有をしている人がいるからこそトレンドができるのです。この「ポジションの量と保有期間とが相場の方向を決める」ことを説明したのが、タペストリー第1理論(http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10295633030.html)です。


つまり、売り切り買い切りや長期保有を行う実需筋、あるいは長期投資家がいないと、市場はキャピタルゲイン狙いの、買ったものは必ず売り、売ったものは必ず買い戻す投機筋だけとなり、相場は上げ下げを行うだけで方向性を持たないのです。


一方、投機筋が市場に参入する動機は、そのものに対する需要ではありません。外為銀行のディーラーや、証券会社の相対取引では、顧客に市場を提供するというサービスのために参入します。また、キャピタルゲイン狙いのヘッジファンドや個人投資家は、ドルや円が必要なわけでも、特定の会社の株主になりたいわけでもありません。対象物件は何でもいいから、買ったものを売って、キャピタルゲインで儲けたいのです。


そして、時間効率的に最大の収益を狙おうとすれば、短時間で大きな値幅が一番です。つまり、大きな値幅があれば、多くの投機筋は利食ってきます。あるいは、思惑とは逆に行けば、損切ります。ポジションを閉じるのです。


また、基本的に投機筋は時間に制限のある資金を扱っています。信用取引などの借入金には返済期限があり、あえて期限を設けていないものでも、その期間、金利がかかっています。また、金融機関のディーラーやヘッジファンドなどは、短期的な収益を期待されているので、適当な値幅で利食っておかないと、会社や顧客が望んだ時期に収益を渡せないのです。


仮需(投機)は、レバレッジを効かした大量の売買で、価格の変動を作り出しますが、長くポジションを持たないので、トレンドの形成には関与しないのです。


これをまとめると、「トレンドは実需・投資によって、ボラティリティは投機によってつくられる」といえます。これを説明したのが、タペストリー第2理論(参照:http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10300171680.html)です。


そのことを理解していると、選択肢(1)の「現在の信用買い残・売り残の多さは、強力な仮需筋の存在を示唆する。このような銘柄には継続的に投機的な資金が集まるため、買い残が多い銘柄ほどさらに上昇、売り残が多い銘柄ほどさらに下落する」というのは、目先の動きには当て嵌まることがあっても、中長期的にはまったく当て嵌まらないことが分かります。


そして、どこまでが目先で、どこからが中長期かの見極めが難しいのです。


また、選択肢(2)の「信用買い、信用売りのポジションは一定期間後には必ず閉じられるため、将来的にはほぼ確実に、買い残が多い銘柄の株価は下落し、売り残が多い銘柄の株価は上昇する」も、偏った見方です。


仮需は必ず閉じられるものの、それまでの間に実需の変化が起きてしまえば、アウトです。例えば、買い残の多さを頼りに空売りを持ち続けている時に、市場価格の何割増しかでTOBがかかると、損失が確定してしまいます。


相場はバランスです。実需、仮需、多くの要因や材料を秤にかけて、どちらに分があるかを見るものです。


正解は、(3)の「信用倍率や貸借倍率は将来の需給関係を示すが、実際の株価は実需や出来高など他の要素にも左右されるため、直ちに将来の株価を左右するものではない」となります。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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