今週の解答
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株初心者のあなたは、東証一部の大型株を中心に数日〜1週間以内のスイングトレードを始めました。最初の1カ月はザラ場を見ず、4本値とテクニカルを参考に取引したところ収支はトントン。振り返ってみると、ギリギリで買い指値が刺さらなかったり、吹き値で利食えずに利益を逃した日が結構ありました。パフォーマンス向上のためには、昼間、ザラ場を見るべきでしょうか?
(2)基本がスイングだとしても、状況に応じて指値を成行に変更したり、吹き値売りを試みるといった臨機応変な対応をとれるようにするため、ザラ場は極力見るようにしたほうが良い
相場はザラ場に動いています。引け後に4本値(寄値、高値、安値、終値)として記録されるローソク足などのチャートは、結果報告でしかありません。可能な人は、できるだけザラ場を見た方がいいのです。正解は(2)の、「基本がスイングだとしても、状況に応じて指値を成行に変更したり、吹き値売りを試みるといった臨機応変な対応をとれるようにするため、ザラ場は極力見るようにしたほうが良い」となります。
ザラ場とは、寄り付きから引けまでの間こと、取引時間中のことです。あなたが参考にしている4本値はザラ場でついた寄値、高値、安値、終値です。途中経過を見ずに、結果だけでいいとするなら、スポーツ観戦で、実際の試合内容に興味を持たず、試合結果だけでスポーツを語るような、トンチンカンなことになりかねません。
もっとも、あなたが自身でも野球をやられていて、長年にわたってプロの試合も見続けていたなら、スコア結果が閲覧できるウェブページを見ただけで、試合の大体の展開がイメージできるようになるかと思います。しかし、例えば馴染みのないスカッシュの試合で、対戦者とスコア結果だけで、試合のイメージがつかめますか?
あなたは株の初心者なのですから、まずはザラ場を見ることで、値動きのイメージを養うことが先決なのです。
他の選択肢を見てみましょう。
(1)日計りではなくスイングなので、ザラ場から得られる情報は実際の取引にはさほど役立たない。成績向上のためには指値の置き方などを工夫するべきである
あなたの考えるように、ザラ場から得られる情報は実際の取引にはさほど役立たないというほど、日計りとスイングトレードとは違うものなのでしょうか? あるいは、トレーディングと長期投資とは、まったく別物なのでしょうか?
ここでは、テクニカルズを重視するか、ファンダメンタルズを重視するかで、対照することができます。
極め付きのトレーディングは、シカゴの先物市場でのピット内での取引です。そこは、極端にいえば、値動きと出来高以外の情報から遮断された世界です。つまり、実際の売り買いの判断にファンダメンタルズが考慮されることはなく、値動きや出来高を反映するテクニカルズでさえ、過去のものが重きをなすことはありません。
そのような状態でも、多くの人が一財産を築くほどの収益を上げています。とはいえ、何々ショックと言われるような、ファンダメンタルズの激変を伴った大動きでは、かなりの人がそれまでに築いた財産のすべてを失って退出させられているのです。
一方、極め付きの長期投資は、ある時期には世界一と言われていたミューチュアル・ファンドを運用していた著名ファンドマネージャーがいみじくも語った、「1年後の株価は分かるが、明日の株価は分からない」といったような投資です。
これを私の言葉で解説するなら、「ファンダメンタルズ(=実需)を反映するトレンドは分かるが、目先の材料で売り買いしている短期トレード(=仮需)がつくる価格の揺らぎは分からない」となります。
これは大変危険な考え方で、ファンダメンタルズが不変ならば、どんな評価益にでも耐えるのみならず、積極的にナンピンすることにつながるのです。また、ファンダメンタルズの急変にも弱いので、いつかどこかで破綻することになります。つまりは、価格変動リスクに事実上無頓着だという、こういう考え方の投資家が世界一になれたような、恵まれた時代があったということでしょう。
このように、短期トレード、長期投資の区別なく、テクニカルズもファンダメンタルズも重要です。また、どちらも、安く買って高く売ることで収益が上がります。
とはいえ、収益につながった時間が短い方が、年率で表されるような期間収益に勝ります。加えて、1日のうちに売買が完結するデイトレでは、資産を食うこともありません(当日返済では金利がかからない)。その意味では、短期トレードの方がより優れた運用だということになるのです。
(3)余裕があればザラ場を見て、そこで得られた情報を4本値やテクニカルの補足として用いる程度で良い。値動きに過敏に反応し、事前に入れた指値を変更したりするのはスイングトレーダーとしては避けるべきである
値動きには敏感にならねばなりません。とはいえ、過敏になるのは避けるべきです。では、どこまでが敏感で、どこからが過敏かは、結果だけが教えてくれます。
抗原抗体反応(アレルギー反応)は、異物が体内に侵入すると反応することで、あなたが病気になることから守ってくれていますが、過敏になると花粉症や喘息のように、今度はその反応が命にも関わります。これも、結果だけがすべてです。
この辺の匙加減はプロでも難しく、常に修正しながらバランスを取っているというのが実情だといえます。簡単に、過敏になるなといって、敏感さを失ったら終わりなのです。
長期投資やスイングトレードが、デイトレに勝ると思うのは誤解です。どちらも、谷越えを買い、山越えを売るように努めることで、効率的な運用ができるのです。
とはいえ、デイトレでは他に何もできないほど疲れるので、年齢とともに、ある程度は非効率になるのを覚悟で、よりゆったりとしたトレードに移るのです。
また、サラリーマンの方々も昼間の仕事で忙しいから、スイングや、長期投資を行うのです。
事件が現場で起きているように、相場はザラ場で動いています。可能な人は、できるだけザラ場を見た方がいいのです。正解は(2)の、「基本がスイングだとしても、状況に応じて指値を成行に変更したり、吹き値売りを試みるといった臨機応変な対応をとれるようにするため、ザラ場は極力見るようにしたほうが良い」となります。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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