今週の解答
[ニュースに関する問題]
株価が急騰した時などに、ニュースで「持たざるリスク」という言葉を目にすることがあります。個人投資家はこの「持たざるリスク」をどのように理解し、どのように対処するべきでしょうか?
(2)「持たざるリスク」は機関投資家にとっての言葉で、十分な買い持ちではない状況での相場上昇はリスキーだということ。個人投資家にとっては、さほど神経質になる必要はない
機関投資家は運用成績で評価が下されます。相場上昇時に買っていないと、「持たざるリスク」に曝されます。一方、個人投資家がそこまで思いつめることはありません。正解は、(2)の「『持たざるリスク』は機関投資家にとっての言葉で、十分な買い持ちではない状況での相場上昇はリスキーだということ。個人投資家にとっては、さほど神経質になる必要はない」となります。
機関投資家は常に運用競争をしています。ライバル会社と比較して、相場上昇時にキャッシュポジションを大きいことは「買えてない」ことを意味しますので、運用競争に負けてしまうのです。反対に、相場下落時にキャッシュポジションが小さいと、「買い過ぎている」ことになりますので、こちらも運用競争に負けてしまいます。
つまり、プロの投資家は市場動向だけでなく、ライバル会社の動向をも気にしています。そして、それらを気にし過ぎると、絶対リターンではマイナスでも、市場(パッシブ運用)やライバル会社に勝てれば、「良し」とする、本末転倒のようなことにも至ります。
この点は、絶対リターンだけが重要な個人投資家とは異なります。
機関投資家は、あまり見通しに自信がないような時にでも、それなりのポジションを常に抱えています。また、取り扱う資金の大きさも、機動的な運用を妨げる重石となっています。それでも弱気な時には、ライバル会社や市場連動型のパッシブ運用ファンドに比べて、どうしてもキャッシュ比率が高くなってきます。
そこで、市場に上げられると、「持たざるリスク」が顕在化するのです。
他の選択肢を見てみましょう。
(1)株価の下落局面だからとポジションを軽くしすぎると、明日やってくるかもしれない反騰局面で利益を得るチャンスをみすみす逃してしまう、ということ。そうならないよう、常にポジションをとっていくべきだ
個人投資家、機関投資家の別なく、値下がり局面で大きなポジションを持っていると、大きな損失につながるのは明らかです。判断の過ちは避けられないとしても、下げるのを承知でポジションを持ち続けることに、何ら合理的なものはありません。
個人投資家のメリットは、機動的に動けることです。
相場が谷へ向かっている時には、空売りしないまでも、買いポジションを持っていてはいけません。買うのは、谷越えが確認できてからなのです。もちろん、確認できたと思ったのに、思惑違いだった時には損切る必要があります。
(3)個人投資家は、投資資金をキャッシュのまま置いておくことでインフレリスクに晒されるということ。売買のカンが鈍る恐れもあるので、キャッシュ比率が高くなりすぎないよう気をつける必要がある
個人投資家のメリットは、どのような形で資金を運用してもいいことです。
株式市場が下げている時には、多くの場合で、債券市場は上げています。FX取引は、通貨交換の取引ですから、ドル円でドルが下げている時には、円が上げています。インフレの時には商品相場が上げ、デフレの時には債券が強含みます。預貯金でも実質的なリターンが期待できるようになります。
何で運用してもいいのです。視野を広げれば、「持たざるリスク」などと、思い詰めなくてもいいのです。
一方、機関投資家は、運用商品が限定されています。上げるか、下げるかに加えて、ライバル会社との競争があります。個人投資家に比べて、不自由な存在なのです。
正解は、(2)の「『持たざるリスク』は機関投資家にとっての言葉で、十分な買い持ちではない状況での相場上昇はリスキーだということ。個人投資家にとっては、さほど神経質になる必要はない」となります。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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