今週の解答
[投資心理に関する問題]
トレードは買いも売りもすべて自分で決められる反面、孤独な仕事でもあります。これまで独力でトレードに取り組んできたあなたは、パフォーマンスの頭打ちとストレスに悩みはじめました。参考書の類はあらかた読み尽くしましたし、かといって身近に相談できる人もいません。最近はブログを書いたりSNSサイトに参加するなど、同好の士を募る方法がたくさんありますが、個人投資家は積極的に「トレード仲間」をつくるべきでしょうか?
(1)通常の友人・知人とは別に、気兼ねなくトレードの話や雑談ができる仲間はもちろんいたほうが良い。またその際、相手の相場観や手法の別にはこだわらず、いろいろな人の考え方に触れるくらいのつもりでちょうどよい
相場は人が行います。あなた自身も人です。人である限り、機械のようには振る舞えません。孤独を感じ、パフォーマンスが落ちたからストレスを感じるのか、ストレスを感じるからパフォーマンスが落ちたのか、どちらか分かりません。まずは、ストレスを取り除くようにしましょう。孤独を感じるのなら、仲間を求めましょう。
今回の問題での正解は(1)の「通常の友人・知人とは別に、気兼ねなくトレードの話や雑談ができる仲間はもちろんいたほうが良い。またその際、相手の相場観や手法の別にはこだわらず、いろいろな人の考え方に触れるくらいのつもりでちょうどよい」となります。
相場であなたが向き合っているビッド・アスクの向こうには、売買を行っている人間がいます。あなたが買いたい時、たった1円や1銭上には売りたい人がいるのです。あなたが買えると思っている時に、なぜ、売りたいと思う人や、売らねばならない人がいるのか、そういうことは、自分だけの世界を築いていたり、自分と同じような人と交わっているだけでは分かりません。一見、相場とは関係がないように思えるようなことも見聞きし、学び、体験することで、総合的な判断ができるようになります。
相場へのアプローチの仕方は様々です。例えば、一口にデイトレと言っても、板情報を読んで素早く売買し、小さな利益を積み上げる1カイ2ヤリ(1円で買って2円で売る)から、寄り付きで買って(売って)引けで閉じる、寄引システム的な売買まで、売買頻度は数十回から売り買い1回だけまでの違いがあります。
ファンダメンタルズの変化が、毎日、売りが買いに変わるような大変化を遂げるようなことが、頻繁にあるはずもなく、ましてや、一日のうちに数十回も変わることなどありません。つまり、デイトレーダーは、ファンダメンタルズをほとんど見ないか、まったく見ないで売買をしていることになります。
テクニカル指標でも、最も一般的にデータとして使われるのは毎日の4本値(寄値、高値、安値、終値)を記録した日足ですが、1カイ2ヤリ・タイプのデイトレでは、ほとんど役立てることができません。昨日までのチャートを見て、ザラ場の細かな動きに対応することはできないからです。
デイトレに限らず、キャピタルゲイン狙いのトレーディングは、トレンドではなく、主に価格の揺らぎを取りにいきますが、ファンダメンタルズ分析は、価格の揺らぎに対してはまったく無力です。また、テクニカル分析でも、トレンド指向のものでは、価格の揺らぎを扱いかねて、「ダマシ」として扱うのです。
あなたが、トレンド指向なら、トレーディング指向の人と交わり、意見やノウハウを交換することは、ビッド・アスクの向こう側を知ることにもつながり、有益です。
逆に、あなたがトレーディング指向ならば、トレンド指向の人から学べることはたくさんあります。儲ける儲けないを超えた、投資物件そのものの価値を知ることにも繋がるからです。
違う立場や考え方の人と交わうことで、相場の理解が深まり、孤独感が癒されたなら、一石二鳥ではありませんか?
他の選択肢も見てみましょう。
(2)自分のトレードの精神的な支えになったり、知識の補強になる相手を選ぶなら交際してよい。相場観を共にしている、似たような売買手法を用いておりアドバイスがもらえる、自分より運用成績が良い、などの条件が考えられる
自分と似たような人とだけ接していると、いつまでたっても、ビッド・アスクの向こう側が分かりません。
また、メンターになるような人とだけ交わると、その人の影響力から抜け出せなくなる可能性もあります。相場は、権威への挑戦でもあるのです。
(3)他人と相場観を共有したからと言って相場が思ったように動くとは限らない。また、わざわざ他人に儲かる手法をレクチャーするお人好しもいないだろう。食うか食われるかの相場で仲間を求めることが、そもそも間違っている
孤独感からパフォーマンスの低下、ストレスとつながってきているのに、自分だけを見続けていては、トンネルから抜け出すことは困難です。自分だけの考えで世の中を見ていること自体が、孤独感、パフォーマンスの低下、ストレスの原因かも知れないのです。
自分から心を開いて、もっと多くの人に接して下さい。あなたの考えるような人ばかりではないことが分かるでしょう。
相場は総合力です。いろいろな物を見聞きし、体験することで、見方の幅が広がり、ゆくゆくは相場力アップにもつながるのです。
正解は、(1)の「通常の友人・知人とは別に、気兼ねなくトレードの話や雑談ができる仲間はもちろんいたほうが良い。またその際、相手の相場観や手法の別にはこだわらず、いろいろな人の考え方に触れるくらいのつもりでちょうどよい」となります。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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