あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

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次のテクニカルに関する説明について、「間違っているもの」を1つ選んでください。

正解(=間違っているもの)は・・・
(2)移動平均線には、単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線と3種類あるが、単純平均よりも、加重平均が、さらには指数平滑平均の方が、データとなる情報量が多く、より信頼性が高いといえる

テクニカル指標とは、ローソク足などが持つ元データ(4本値=寄値、高値、安値、終値)に情報を加えるものではなく、むしろ重要とは見なさないデータを消し去ることで、見せたいものだけを強調するものなのです。例えば、移動平均線では、4本値のうち終値だけを扱っています。また、取り扱う期間(5日線なら5日間)以外のデーターも消し去っているのです。


単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線の元データーはすべて同じです。同じデータながら、その指標が重要と見なすものにより大きな比重をかけたものに過ぎません。正解(間違っているもの)は(2)の「移動平均線には、単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線と3種類あるが、単純平均よりも、加重平均が、さらには指数平滑平均の方が、データとなる情報量が多く、より信頼性が高いといえる」となります。


これらのテクニカル指標については、昨年暮れに上梓した拙著「テクニカル指標の成績表」(参照: http://www.tradersshop.com/bin/showprod?a=528&c=9784775990926 )に詳しいので、引用します。


テクニカル指標の後に付けている☆マークは、現場での実用性の観点から、私が独断と偏見でランク付けしたものです。5つが最高、1つが最低となります。


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■サイコロジカルライン(Psychological Line)☆☆☆

サイコロジカルラインは、強気、弱気といった市場の心理を探るテクニカル指標で、日本製だと言われている。算出方法は以下の通りだ。

・サイコロジカルラインの算出式:

サイコロジカルライン=n日間の上げ相場の合計 / n

ここで、nは日足では通常12日、あるいは8日、22日を、週足では8週、13週を用いる。

前日比で上げた日が、半分の50%が普通で、25%以下だと売られ過ぎ、75%以上は買われ過ぎだとされている。25%以下からの反発が買いのタイミング、75%以上からの反落が売りのタイミングだ。

サイコロジカルラインも、極めて大雑把な指標だ。参考にとどめておいていいだろう。

■単純移動平均線(Simple Moving Average)☆☆☆☆

移動平均線を使えば、トレンドラインを引くことなしにトレンドらしきものを知ることができる。そして、移動平均線は誰が見ても同じものが見えるという客観性を備えている。

移動平均は、当日までの過去何日間かの終値の平均値を、当日の価格の上または下に点で打つ。例えば、25日移動平均は、当日までの過去25日分の終値を足し、25で割ったものを、当日の価格より高ければ上に、低ければ下に点で書く。平均値が価格の上にくれば当日の価格は平均値よりも安いので、これだけでもトレンドは下向きだと暗示されるのだ。

25日線では毎日新しい終値を足し、26日前の終値を計算式から省いていく。そして、毎日の点を結んで線とする。この線が上向きならば平均値が高くなってきているので、トレンドは上向きだと暗示されることになる。

・単純移動平均線の算出方法(5日移動平均の場合):

月曜  1010円
火曜  1030円
水曜  1040円
木曜  1080円
金曜   990円

月曜   970円
火曜  1000円
水曜  1020円

終値が以上のように推移した銘柄の場合。
今週の月曜日の朝の時点の5日移動平均は、
(1010+1030+1040+1080+990)/5=1030円
今週の火曜日の朝の時点の5日移動平均は、月曜日の終値が入れ替わる。
(1030+1040+1080+990+970)/5=1022円
今週の水曜日の朝の時点の5日移動平均は、火曜日の終値が入れ替わる。
(1040+1080+990+970+1000)/5=1016円
そして木曜日の今朝の時点の5日移動平均は、前日水曜日の終値が入れ替わる。
(1080+990+970+1000+1020)/5=1012円

これで分かるのは、今週の火曜日から価格が上向いたにもかかわらず、移動平均線は依然下向きだということだ。また、木曜日の終値が1080円以上でない限り、翌日もまだ下向いたままなのだ。そして、翌々日になって、終値が990円以上ならば、移動平均線も上向きに転じる。

つまり、移動平均線は価格を後追いする。そして、長期のものほど、後追いの傾向が強いということになる。

移動平均線は普通1本だけではなく、短期長期の2本、あるいは中期を加えた3本を組み合わせて使う。つまり、当日の価格の位置、最近のトレンド、中期トレンド、長期トレンドの組み合わせで、売り買いのサインまで出すのだ。

価格が谷を越えて上昇し始めるとき、価格が移動平均線を上抜けすれば、目先トレンドが上向いた暗示となる。短期線が長期線を上抜けすればゴールデンクロスと呼び、短期トレンドが上向いた暗示だ。そして、長期線が上向いて価格や短期線を追いかけ始めると長期トレンドも上向いた暗示なのだ。

移動平均線は4本値のうち寄値、高値、安値を捨て去り、終値だけを残すことで単純化し、過去からのトレンドをわかりやすく表示したものだ。また、取り扱っていない期間のデータもすべて捨てている。

株式市場のように大引けがある市場での終値は、デイトレーダーたちがポジションを閉じた後などで、明日に残るポジションの平均コストだという見方もできる。つまり、5日移動平均線は市場参加者全員の5日間の平均コストであり、25日移動平均線は25日間の平均コストだという考え方だ。だから、その線自体が支持線にもなり、抵抗線にもなる。

※図(短、中、長期の移動平均線と価格)は省略

相場は先を読むものだ。現在の価格ですら、明日はどうなるか分からないのに、価格を更に後追いする移動平均線とは何なのだろう。ましてや、数カ月前や1年も前の価格を推移を、今の線として提出する長期線に意味があるのだろうか。

実は、過去の数値を現在の数値と組み合わせて表示するからこそ、移動平均線は意味を持つ。例えば、ファンダメンタルズの数値で、現在の数値だけを出されてもその意味がわからない。その数値を、前月比、前年比と対比して初めて、トレンドがわかるのだ。

移動平均線を使えば、トレンドラインを使わなくてもトレンドが見える。トレンドラインは引く人によって多少なりとも違いがでるが、移動平均線は、例えば25日線ならば誰が書いても同じ線だ。したがって、短中長期の移動平均線の組み合わせにより、トレンドの継続と、転換とが客観的に見えるようになるのだ。

トレンドの転換の場合、長期線はゆっくりし過ぎていて、反転確認に時間がかかり過ぎる。一方の短期線は価格の動きに敏感過ぎて、ダマシが多くなる。つまり、何日の移動平均線を使うかのさじ加減が、移動平均線の肝ともいえる。

ちなみに、株価やFXレートの無料オンラインチャートでは、(5日線、25日線、75日線)の組み合わせが圧倒的に多い。一方、楽天infoseekのパワーチャートは(100日線、150日線、200日線)から選べるようになっている。

ここで有料のチャートシステムやエクセルで、自分だけの、例えば6日線と17日線の組み合わせで最適化をはかることは可能だ。この最適化については第七章「最適化の罠」(省略)で述べる。

移動平均線は多くのテクニカル指標の考え方の基礎となっている。また、私が最も効率的な運用方法だと提唱している「谷越えを待って買い、山越えを待って売る」という考え方にも合致する。その利用価値は高いのだ。

■加重移動平均線(Weighted Moving Average)☆☆

移動平均線は価格を後追いする。それは、長期線であろうと、短期線であろうと、どのような移動平均線を用いても、データが過去のものである限り、避けられない。

しかし、昨日の価格が、1カ月前のある日の価格と、あるいは1年前のある日の価格と同じ比重で、同じ意味でしかないのはおかしいと考えたところから、加重移動平均線のアイデアが出てきた。

加重移動平均線では、直近の価格に近いものほど重要度を大きくして、一定期間の平均値としたものだ。例えば、25日の加重移動平均線の場合、直近価格を25倍し、古くなるにしたがって倍率を減らし、最も古い25日前の価格は1倍として、平均価格を出したものである。

・加重移動平均線の算出方法(5日移動平均の場合):

月曜  1010円
火曜  1030円
水曜  1040円
木曜  1080円
金曜   990円

月曜   970円
火曜  1000円
水曜  1020円

終値が以上のように推移した銘柄の場合。
今週の月曜日の朝の時点の5日移動平均は、
(1010+1030x2+1040x3+1080x4+990x5)/15=1031円
今週の火曜日の朝の時点の5日移動平均は、月曜日の終値が入れ替わる。
(1030+1040x2+1080x3+990x4+970x5)/15=1011円
今週の水曜日の朝の時点の5日移動平均は、火曜日の終値が入れ替わる。
(1040+1080x2+990x3+970x4+1000x5)/15=1003円
そして木曜日の今朝の時点の5日移動平均は、前日水曜日の終値が入れ替わる。
(1080+990x2+970x3+1000x4+1020x5)/15=1005円

上の単純移動平均線と比較して貰いたい。価格の変化に敏感に反応する、5日のような短期線でも、単純移動平均線だと方向転換に時間がかかる。一方の加重移動平均線だと、上の例だと価格が転換して2日後には、もう転換している。

ここで、単純移動平均線での注意事項を繰り返してみよう。

「トレンドの転換の場合、長期線はゆっくりし過ぎていて、反転確認に時間がかかり過ぎる。一方の短期線は価格の動きに敏感過ぎて、ダマシが多くなる。つまり、何日の移動平均線を使うかの匙加減が、移動平均線の肝ともいえる」

つまり、価格により敏感になる加重移動平均線は“ダマシ”が多くなるということだ。これは、見た目よりも短期になっていることを意味する。加重移動平均線とは、つまるところ短期線と同じ(5日加重移動平均線は3日単純移動平均線とほぼ同じ)なのだ。

物事はシンプルなものほど対応しやすく、また間違いも少ない。加重移動平均線はむやみに計算が煩雑になるだけだ。単純移動平均線だけで十分だといえる。

■指数平滑移動平均線(Exponetial Moving Avarage)☆☆

指数平滑移動平均線(EMA)は、加重移動平均線(WMA)と同様に、直近の価格により大きな比重をかけることによって、移動平均線の持つ遅行性を解消しようとしたものだ。

WMAの過去の数値にかける比重が直線的に(5、4、3、2、1と)減少するのに対し、EMAでは平滑定数を掛けることにより、放物線上になだらかに減少する。期間的には、EMAのほうが、直近にかかる比重が高くなるのでより短くなる。

※3.51 図(WMAとEMAの比重)省略

これは、計算がより複雑化しているために、もはや手計算ができなくなっている。

私も昔、ロイターグラフィックという金融機関向けの高価な機械で、EMAの数値をいろいろ変えて最適化を試みた。結果は、5日線を3.2日線にするか、2.7日線にするかのような効果で、何しろ微妙な調整ができるので、過去10年間当て続けられたかのような最適化が行える。でも、ただ“それだけ”だ。所詮、未来のことは誰にもわからない。この最適化については、第七章「最適化の罠」(省略)で述べる。

ここまで来ると、実際に資金運用を行わない人のお遊びに近い。現場の感覚では必要のないものだ。指数平滑移動平均線の5日線を使いたい人は、単純移動平均線の3日線をお勧めする。

■RSI(Relative Strength Index)☆☆☆

1978年6月、ワイルダー(J. Welles Wilder)は、コモディティーズ・マガジン(現在のフューチャーズ・マガジン)に、終値の前日比での上げ幅、下げ幅に注目し、相場の急激な変化に対して買われ過ぎ、売られ過ぎを示すRSIを発表した。

注:
J. Welles Wilder:「New Concepts in Technical Trading Systems」
J. Welles Wilder:「ワイルダーのテクニカル分析入門」長尾慎太郎, 井田京子訳

・RSIの算出方法:

RSI=100 − 100 /(1+RS)

RS=前日比で上げた日の終値の(n−x)日間移動平均 / 前日比で下げた日の終値の(n−y)日間移動平均

n=x+y

nは通常9日か、14日。

注:
オンラインでの無料チャート、ヤフーチャートは14日を、楽天infoseekパワーチャートは9日と14日の2本を使っている。

つまり、nが14日で、上げた日が8日、下げた日が6日だとすれば、

RS=上げた日の8日間移動平均 / 下げた日の6日間移動平均 

となる。
ここでは移動平均を使うので、上げた日数ではなく、上げ幅が大きいと数値が大きくなる。そして、70や80では買われ過ぎを、逆に30や20では売られ過ぎを示唆することになる。

※4.64 図(RSI)省略

また、ここでの移動平均を単純移動平均(SMA)の代わりに、指数平滑移動平均線(EMA)を使うこともあるようだ。

このとき、直近の価格に多くの比重をかけるEMAは、つまるところ短期バイアスをかけていることになる。つまり、EMAを使った14日は、SMAの14日よりも、9日に近いことを意味している。これも、30や20以下で売られ過ぎ、70や80以上で買われ過ぎの水準とされる。

価格の急変化には常に注意を払わなければならない。タペストリー第2理論(参照ブログ: http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10300171680.html )でも説明したが、実需や長期保有の投資家が急増したり、急減することはまずない。したがって、価格の急変は多くの場合、投機筋の参入を暗示する。そして、投機筋のポジションには時間制限があるので、遅かれ早かれ閉じられるのだ。

その意味では、RSIの示唆する買われ過ぎ、売られ過ぎは、十分な説得力を持つ。問題は投機筋がどのくらいの期間保有しているかを探ることだ。9日が適当か、14日が適当なのかはわからない。その時の参入者の性質や、材料にもよるだろう。

最も注意をしなければならないのは、滅多にない実需や長期保有の投資家に急変化が起きたときだ。この場合には、買われ過ぎだと思い売ってもなかなか売り物は出てこない。むしろRSIを信じて売っているのは投機筋なので、いずれ買い戻すことになる。

RSIは、売買の指標というより、買われ過ぎ、売られ過ぎといった相場の状況を教えてくれるものとすれば、利用度は高い。
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これらの説明で明らかなように、選択肢の(1)と(3)は、正しくそのテクニカル指標の特徴を捉えています。


(1)「サイコロジカルライン」は、psychologicalすなわち「心理的な」という意味を持ったテクニカル指標。過去の一定期間、たとえば12日間の価格が前日比で何勝何敗であったかに着目し、勝率が高ければ高いほど「そろそろ下がる」、低ければ低いほど「そろそろ上がる」と判断するものである


(3)オシレーター系指標の「RSI」は、過去の一定期間、たとえば9日間の値幅に対する上昇幅の割合をグラフ化したもので、一般的に30%以下を売られすぎ、70%以上を買われすぎの水準と判断する。ただし強力なトレンドが発生している場合、RSIの値が上や下に張り付く場合があり注意を要する


したがって、正解(まちがった説明)は、(2)の「移動平均線には、単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線と3種類あるが、単純平均よりも、加重平均が、さらには指数平滑平均の方が、データとなる情報量が多く、より信頼性が高いといえる」となります。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「その他の問題」で、さらに勉強しましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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