あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

週末に四半期決算の発表を控えた某企業の株価が、月〜水曜日に3連続陽線を引いて急上昇、木曜日のきょうも堅調に推移して午前の取引を終えました。長く続いた底値圏で買いを入れていたあなたは現在、大きな含み益を得ています。ニュースでは「好決算先回りで注目、一段高の展開も」と報じられているようですが、さて、午後からどのように取引するべきでしょうか?

正解は・・・
(1)株価上昇の理由が好決算期待にあるのか、それ以外にあるのかは分からないが、ともかく、底値圏で仕込んだ銘柄に大きな含み益が乗るというのはトレードとして成功の部類に入る。決算前後の株価は乱高下しがちで予想は難しい。きょう明日中にいったん利益を確定したい

将来のことは誰にも分かりません。相場で長く生き残っていくには、何があるか分からないことを前提に動く方がいいのです。正解は(1)の、「株価上昇の理由が好決算期待にあるのか、それ以外にあるのかは分からないが、ともかく、底値圏で仕込んだ銘柄に大きな含み益が乗るというのはトレードとして成功の部類に入る。決算前後の株価は乱高下しがちで予想は難しい。きょう明日中にいったん利益を確定したい」となります。


これは難しい問題です。なぜなら、利食いに関したことだからです。損切りは自分が間違えているので、そのことを認めるか認めないかだけですが、利食いは、これまでの自分が正しいために、どうしても判断が甘くなってしまいます。


ここにない、ベスト・アンサーは「臨機応変に動く」ですが、それでは、答えたことになりません。そこで、どれが答えかという短絡的なことでなく、どういったケースで利食うかをここで考えていきましょう。


まずは、他の選択肢を見てみましょう。


(2)好決算が発表された場合、来週以降の株価はさらに上値を追う可能性が高い。もっとも、業績が振るわなければ売られるが、現時点で大きな含み益を得ていることから、トータルで損をするリスクは低いと考えられる。この有利な状況を生かし積極的に買い増しを行い、週末を持ち越して、大きな利益を狙いたい


問題は、株価がどこまで好決算を織り込んでいるかです。2割増益と出ても、株価が今週だけで2割上げていたなら、単純に考えて、織り込み済みです。もちろん、予想を上回る増益のケースもあるのですが、逆のケースもあり得ます。


ここからの上げ下げの確率が5分5分なら、含み益を背景に、勝負がしたくなるものです。ケース・バイ・ケースなどと言いながら、これまで私なども十中八九は勝負してきました。こういった性癖はなかなか治らないので、おそらく、これからも私自身は勝負することと思います。そして、一度それに勝ってしまうと、それが成功体験になり、ほとんど常に勝負するようになるのです。


ところが、買われたところから更に買って、それでも勝てるケースはそれほど多くありません。特に、選択肢のように買い増ししていると、少しの下げでも利益のすべてをなくしてしまうのです。


長く続いた底値圏からの急騰。ここで、買い増しする時は、決算発表などの不確定要因がない時に限りたいものです。


(3)決算発表を目前に控え株価が上昇するのは良い傾向だし、ここで売ってしまうのはもったいないが、連日の上げによりさすがにテクニカル面では過熱感も出てきている。そこで、決算発表前後は現在のポジションを保有しつつ、もし安い場面があれば押し目買いを入れていく、くらいのスタンスが望ましい


ここから安い場面があるとすれば、急騰が続いた買われ過ぎのところで、陰線が出ることを意味します。オシレーター系のテクニカル指標は、まず間違いなく売りシグナルを出します。


この時、決算の数値が良いのに売られたのであれば、材料出尽くしで売られ、一勝負が終ったということです。決算の数値が悪い場合は、失望売りなのですから、これまで買っていた人の投げがしばらく続きます。いずれにせよ、あえて売られたところを買う理由がこれだけでは不明です。


最近のこの講座の問題では、「勝負するかしないか」が、問われていることが多いように思います。そして、ほとんどの場合の私の答えは「冷静に」です。もちろん、勝負に当っては冷静に判断することが必要なのですが、自分自身に対する戒めからも、のべつ幕なしに勝負するのではなく、冷静に勝負時を見極めることが大事だと言っています。


今回の問題では、長く続いた底値圏からの急騰という、「谷越え」を買えという私などが勝負したくなる要因があります。底値確認済みなら、今度は上値を確認に行くものです。そんな考えで、私は勝負してしまうのです。とはいえ、それはどこまでいっても私の相場観に過ぎず、夢想の域を出ていません。


ここでの現実は、決算発表という大きな不確定要因を前にして、既にそれなりの利益を手にしているということです。例えば、サッカーの試合の後半ロスタイムで、1点リードがある状態です。得失点差を狙ってここで勝負をするのは、確かに最後までゲームを面白くするでしょうが、「魔物」を起こしてしまう恐さがあります。頂けるものは、きちっと頂いておくことが重要なのです。


正解は(1)の、「株価上昇の理由が好決算期待にあるのか、それ以外にあるのかは分からないが、ともかく、底値圏で仕込んだ銘柄に大きな含み益が乗るというのはトレードとして成功の部類に入る。決算前後の株価は乱高下しがちで予想は難しい。きょう明日中にいったん利益を確定したい」になります。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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