あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[ニュースに関する問題]

東洋経済新報社から3カ月ごとに発売される「会社四季報」。現在では証券会社のウェブサイトなどでも気軽に閲覧でき、「投資家のバイブル」として多くの投資家に親しまれています。ここで問題。「会社四季報」といえば、その業績予想やコメント次第で株価が変動する「四季報相場」が存在するとも言われますが、実際の取引において、どの程度注意を要するものでしょうか?

正解は・・・
(2)現在の株価は、「次の会社四季報の業績予想が上ブレそうだ」といった投資家の予想も含め、さまざまな要素を織り込んで形成されるもの。1冊の書籍に株価を動かすほどの力はなく、「四季報相場」の影響を考慮する必要は特にない


「会社四季報」は企業の有益なファンダメンタルズ情報を与えてくれます。ところが、ファンダメンタルズ分析は、投資対象そのものを分析するもので、株価との間に、有意性のある関連は見られないのです。正解は(2)の、「現在の株価は、『次の会社四季報の業績予想が上ブレそうだ』といった投資家の予想も含め、さまざまな要素を織り込んで形成されるもの。1冊の書籍に株価を動かすほどの力はなく、『四季報相場』の影響を考慮する必要は特にない」となります。


投資対象のファンダメンタルズと、株価との間に密接な関係がないなどと言うと、何のことを言っているのか、かえって混乱する人がいることでしょう。株式投資は企業のファンダメンタルズを判断して行うものというのが、通説だからです。PERなども、株価と、企業収益との関係を表したもので、投資判断の手掛かりとされています。


では、ここにファンダメンタルズ的に申し分のない銘柄の例を上げ、過去3年ほどの株価の推移を見てみましょう。


ビジネスウィーク誌は、アメリカで最も読まれ、それなりの権威を確立しているビジネス誌の1つです。そのビジネスウィーク誌の2009年9月末の号で、2009年の世界1優れた企業に選ばれたのが、日本の任天堂です。2位はグーグル、3位はアップルですから、堂々の金メダルです。
(参照記事: http://www.businessweek.com/globalbiz/content/sep2009/gb20090930_066258.htm


ここで、「会社四季報」に出ている、任天堂の収益を見てみましょう。

2007年3月期、売上9665億円、営業益2260億円、経常益2888億円、1株益1363円、
2008年3月期、売上1兆6724億円、営業益4872億円、経常益4408億円、1株益2012円、
2009年3月期、売上1兆8386億円、営業益5553億円、経常益4487億円、1株益2182円。


任天堂は2006年の3月期から4期連続で増収増益を達成し、2009年3月期は最高益となりました。これを何と、無借金経営で達成しているのですから、ビジネスウィーク誌ならずとも、ピカピカの銘柄だと言うのに異論はないでしょう。


では、株価はどう推移したでしょうか?

2007年3月末の株価:34250円、高値:2007年11月1日73200円。
2008年3月末の株価:51400円。
2009年3月末の株価:28450円、安値:2009年12月4日20140円。


先のビジネスウィーク誌の記事が出た後も売られ続け、2カ月後に安値を付けています。もっとも、2010年3月期は減収減益予想(売上:1兆5000億円、1株益:1799円)となりましたが、逆に株価は反発し、3月26日には32650円の高値まで買われました。


ファンダメンタルズを頼りに投資をしていれば、34250円で、73200円で、51400円で、28450円で買い続け、減益予想が出始めた2万円台の前半ですべてを損切り、ドテンの空売りで、今は評価損が1万円ほどという、悪夢の状態に至ります。


「証券会社のアナリストはずるい。自分たちは情報を独り占めにし、顧客には嘘の情報を与えて損をさせる」などと言う人もいますが、そんなことはありません。もともと、投資対象のファンダメンタルズと、株価との間に密接な関係などないのです。これこそが、公然の秘密なのです。


ファンダメンタルズ的にどんなに良い銘柄でも、誰も買わなければ上がりません。任天堂のようなピカピカ銘柄でも、誰かが売れば下がるのです。反対に、赤字銘柄が急騰することも、相場では当たり前のように起きています。


もっとも、増収増益を長く続けていれば、いつか上がる。あるいは、赤字の垂れ流しが続けば、いつか債務超過で破綻すると断言することは可能です。とはいえ、その長い期間の間に、肝心要のファンダメンタルズや、企業を取り巻く経済環境が変わってしまえば、どうなるか分かりません。増収増益の任天堂ですら、2年以上にわたって株価が下げ続け、4分の1ほどに売り込まれたのです。


相場で大事なのはタイミングです。「会社四季報」が、売り買いのタイミングに使われることはあるでしょう。とはいえ、それはそれとして、割り切って使うべきなのです。


それでは、一体何が、最も効率的な運用というものかは、私のブログにまとめてありますので、参照して下さい。
(参照ブログ: http://ameblo.jp/dealersweb-inc/entry-10495002242.html


私もファンダメンタルズの数値はチェックしています。「会社四季報」は企業のファンダメンタルズを知るのに、非常に有益な情報を与えてくれます。とはいえ、投資におけるファンダメンタルズ分析は、参考に留めておくのが無難です。正解は(2)の、「現在の株価は、『次の会社四季報の業績予想が上ブレそうだ』といった投資家の予想も含め、さまざまな要素を織り込んで形成されるもの。1冊の書籍に株価を動かすほどの力はなく、『四季報相場』の影響を考慮する必要は特にない」となります。

見事正解だったあなたは・・・

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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