今週の解答
[その他の問題]
長らく狭いレンジで推移してきた銘柄が動意付いた際の相場の見方として、間違っているものはどれでしょうか? 次の3つの中から1つ選んでください。
(3)大量の出来高を伴って株価が下抜けした場合、相場は灰汁抜けしたと判断する。セリング・クライマックスの様相を呈したのち、一転、強気の相場に変化すると考えられる
長らく横這ってきた株価がどちらかに抜けた場合は、抜けた方についていくのが原則です。この問題での正解(間違っている見方)は、(3)の「大量の出来高を伴って株価が下抜けした場合、相場は灰汁抜けしたと判断する。セリング・クライマックスの様相を呈したのち、一転、強気の相場に変化すると考えられる」となります。
もっとも、先のことは誰にも分かりませんので、「抜けた方についていく」というのも、あくまで過去の経験則でしかありません。テクニカル分析とは、過去のデータをもとに行うパターン分析ですから、今日、これまでの期待を裏切るデータが出てしまえば、すべてを修正しなければならないのです。
他の選択肢もみてみましょう。
(1)大量の出来高を伴って株価が上抜けした場合、相場は相当に強いと判断する。今後、一段高の可能性も充分に考えられる
株価が長い間、狭いレンジ内で推移すると、売り買いしても儲けられないことから、出来高が減少していきます。また、出来高が減少するということは、参加者が少ないということですから、レンジを形成する高値安値を抜く力も、なかなか得られません。
そこに、大きな買い物が入ると、見合った売り物がすぐには出てこないことから、株価は上抜け、更に上伸する確率が高まります。
一方、大きな売り物が出てくれば、買い手が間に合わずに下抜けし、更に続落する確率が高くなるのです。
このように、出来高の急増は、大きな買い手、売り手の出現を意味することが多いので、相場の転機を表すことが多いことで知られています。
従って、(1)は、その通りだと言っていいでしょう。
(2)少ない出来高で株価だけが上抜けした場合、相場は値動きと裏腹に弱さを内包していると判断する。近いうちに上昇した株価を支えきれなくなる恐れがある
株価が長い間、狭いレンジ内で推移すると、売り買いしても儲けられないことから、出来高が減少していきます。また、出来高が減少するということは、参加者が少ないということですから、レンジを形成する高値安値を抜く力も、なかなか得られません。
少ない買い物でも、たまたまそれに見合う売り物がなければ、株価は上抜けします。しかし、株価が上がったことで売り物が出てくれば、それを支えるだけの買い手が出てくるかどうかは分かりません。出来高が少ないと言うことは、まだ多くの人が注目している訳ではないからです。
その意味で、(2)も、その通りだと言うことができます。
(3)大量の出来高を伴って株価が下抜けした場合、相場は灰汁抜けしたと判断する。セリング・クライマックスの様相を呈したのち、一転、強気の相場に変化すると考えられる
セリング・クライマックスとは、しばらく下落局面が続いた後に、大量の出来高を伴って、更に急落することです。つまり、これまで評価損に耐えに耐えていた人たちが、もう堪らないと一斉に投げ売りすることにより生じます。一方で、売りから入って手早く儲けようと、空売りする人も急増します。
この状態で一定時間が過ぎると、長く持てないような人の買いポジションがなくなり、目先のキャピタルゲインを求めて売った人のポジションだけが残ります。それが、いわゆる灰汁抜けで、もうそこからは下がらなくなるのです。そして、そこからは一転、上昇相場が始まります。
(3)の答えと、セリング・クライマックスとの違いは、(3)では、まだクライマックスに至るほどの下落局面が続いていないことです。まだ(3)は下げ始めで、ここからが下げ相場の本番です。いきなりでは、クライマックスを迎えることができないのです。
長らく狭いレンジで推移してきた銘柄が、大量の出来高を伴って株価が下抜けした場合、そこから新たな下げ局面が始まると考えることができます。
つまり(3)は間違っているので、この問題の答えは(3)の「大量の出来高を伴って株価が下抜けした場合、相場は灰汁抜けしたと判断する。セリング・クライマックスの様相を呈したのち、一転、強気の相場に変化すると考えられる」となります。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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