あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

低PER・PBRを条件にスクリーニングをかけ有望と思われる銘柄を見つけたあなた。チャートをチェックしたところ、5年ほど前に一度大きく上昇したことがあるようですが、その後下落、じりじりと値を下げ、ここ数年は上場来安値圏を推移しています。直近の業績は回復傾向にありますが、出来高が日に数株〜数十株(売買単位は1株から)と極端に少ないのが難点です。この銘柄を先回りして買い集めたいあなた、どのような方法をとるのが良いでしょうか。

正解は・・・
(3)現在の状況では買いを入れるべきではない。多少なりとも株価が上向き、出来高が増えてくるまで今のまま観察を続けるべきである


出来高のない銘柄とは、誰も注目していない銘柄です。そういった銘柄は、あなたの買いで株価を押し上げてしまい、あなたの売りで押し下げてしまいます。そんな銘柄に、あなたが積極的に関わる理由はありません。正解は(3)の「現在の状況では買いを入れるべきではない。多少なりとも株価が上向き、出来高が増えてくるまで今のまま観察を続けるべきである」になります。


もっとも、キャピタルゲイン狙いの投機的な売買だけが、株式投資ではありませんから、好財務、好業績といった銘柄が、割安に放置されていたなら、そういった企業を応援する意味でも、株式を保有していいのです。そして、先回りして買うと決めたのなら、他の人が注目して集まってくる前に仕込んでおきたい気持ちは分かります。


そのような場合に、出来高の少ない銘柄に、まとまった買い物を入れると、自分の買いでストップ高に張り付いた状態が起きるのようなことがあるので、(1)の「自分の買い注文で価格が変動してしまわないよう、また他の投資家に悟られないよう、毎日1〜数株ずつ、少しずつ買い集める」を、正解とした人もいることでしょう。買うと決めたのなら、買うべきだという考え方にも、それなりの説得力があります。


ところが、私が気になるのは、あなたの銘柄の探し方です。低PER・PBRを条件にスクリーニングという、安易な方法で見つけた銘柄に、それほど、こだわる必要がありますか?


そもそも、低PER・PBRの銘柄ならば、いつかは必ず上がるのだとは言い切れません。株価が動かずに持ち続けているうちに、収益力が下がればPERが上がってきます。また、赤字で資産を取り崩したり、資産価値が減少すればPBRも上がり、いつの間にか割安ではなくなってしまうのです。そんな時に、流動性のない銘柄だと、なかなか購入した価格で売り払うことができません。


あるいは、企業収益が順調で、PER・PBRが更に下げ続けても、あなた以外の誰も買わなければ、あなたが儲けることはできません。あなたが株式投資でキャピタルゲインを得たいなら、誰かが、あなたより高値でその銘柄を買う必要があるのです。誰かが売買する、つまり出来高のある銘柄でないと、株価は動きません。


それでも、あなたがその銘柄は特別だとこだわるのなら、スクリーニングなどではなく、自分の目と耳、足で、その企業を調べてみてはどうでしょう? その結果、やはりその銘柄を買いたいのでしたら、選択肢(1)でも、正解です。但しその場合は、投資というより、出資です。


選択肢(2)の、「自分の買い注文による価格変動はいずれ解消されるものなので神経質になる必要はない。それよりも仕込み完了までのスピードを重視し、板をみて納得できる価格を決めたら、毎日できるだけまとまった数の買いを入れていく」はどうでしょう?


出来高のない銘柄に厚い板は期待できません。売り値の数字だけを見て、まとまった買いなど入れてしまったら、そのままストップ高まで上昇する可能性があります。


そして、どこかの時点で十分な売り物が出てくれば、もともと買い手はあなたぐらいしかいないので、元の低迷していた株価のレベルまで急落します。その後は、何もなかったかのように、上場来安値の近辺に留まるのです。


あなたがラッキーなら、あなたのようにスクリーニングで割安だと思った人が、あなたのようにストップ高まで買い上げてくれる時が来ます。そこで、あなたがなすべきことは、自分が買ったコストで、やれやれ売りをすることです。やっと、ババを引かすことができました。


もちろん、その銘柄に多くの人が注目して、徐々に株価が上昇することも考えられます。それでも、高く買ってしまっていたなら、コストまで回復するのにそれなりの時間を要するのです。また、多くの人が注目することは、売り買いに現れますので、自分だけの思い込みより、出来高を見ている方が確実です。


銘柄を絞り込むのに、スクリーニングは非常に便利です。せっかく便利なツールを使うのですから、PERやPBRだけでなく、売買高(出来高)もスクリーニングにかけてみてはどうでしょう? キャピタルゲインを狙うならば、売買高(出来高)の方が、PER・PBRより、はるかに重要なのです。


私が提供しているエスチャート(http://s-dealing.com/)では、出来高急増を知ることができ、底値圏から上げかけているような、節目にきている銘柄に出会うことができるのです。


誰も気付かない宝物が、スクリーニングで見つかるとは思わない方が現実的です。上げる銘柄は、誰かが気付き多くの人が注目するから上げるのです。その意味で、出来高に注意を払うことはとても重要なことなのです。


この問題の正解は(3)の「現在の状況では買いを入れるべきではない。多少なりとも株価が上向き、出来高が増えてくるまで今のまま観察を続けるべきである」となります。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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