あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

金融資産の3割強を勤務先(上場企業)の自社株で、残りを銀行の定期預金で保有しているあなた。最近、もう少しリスクを取って積極的に資産運用をしたいと考えるようになりました。勤務先からは貸し付け制度を使って自社株をさらに買い増してはどうかとの提案もあるのですが、どのような方針で臨むべきでしょうか?

正解は・・・
(3)資産の3割強が自社株の現状では、さらに株式を買い増す余地は少ないが、株式を買うなら極力、自社株と別のセクターやETF。その他、債券や外貨建て商品も組み合わせリスク分散を図るべきである


長い間には、想像もつかないことが起きるものです。何事も、絶対安全と決めつけることはできません。リスク・リターンは、分散している方が賢明なのです。正解は(3)の「資産の3割強が自社株の現状では、さらに株式を買い増す余地は少ないが、株式を買うなら極力、自社株と別のセクターやETF。その他、債券や外貨建て商品も組み合わせリスク分散を図るべきである」となります。


十年一日の如し、毎日、毎日、同じことの繰り返しと、日常を嘆く人がいるかと思いますが、後で振り返ると、10年とは「何があるか分からない」ほどの長い時間です。そのあたりは、「10年ひと昔」と題して、ブログ(http://ameblo.jp/dealersweb-inc/day-20100503.html)にまとめていますので、ご覧下さい。


ブログでも触れていますが、10年前に、誰がGM(ゼネラルモーターズ)やAIG(アメリカンインターナショナルグループ)が破綻すると想像できたでしょうか? 共に、世界を代表する業界トップの会社でした。それでもGMの方は、しばらく前から業績の悪化が見られたのですが、AIGにいたっては、フォーブス誌の世界優良企業2000社番付2007年版で、全業種通算で世界第6位に、保険セクターでは第1位にランキングされていたのです。そんな会社が1、2年で破綻するのなら、どんな会社なら安全なのか、簡単には分からなくなってしまいます。


他の実例を挙げればきりがないほど、「世の中、何が起こるか分からない」のです。そして、「何が起きても大丈夫」だと思えない人は、できるだけ、いろいろな可能性を考慮して、「これが起きたなら仕方ない」レベルにまで、リスクを分散するのが「備え」というものなのです。


その観点から、他の選択肢も見てみましょう。


(1)自分の努力や勤務先の収益向上をリターンに反映させやすい自社株制度は、資産運用の大きな武器。貸し付け制度を積極的に活用して、自社株を買い増していくのがよい


あなたは、いくつかの点で勘違いをしています。


1つ目は、自分が努力すれば、会社の収益が向上すると考えていること。上場企業レベルの会社になると、自分1人の努力で会社の収益を左右できることは、ほとんどありません。


2つ目は、努力が収益に直結すると考えていること。もし、それが真実ならば、破綻した企業は、役職員の努力が足りなかったことになります。事実は、どんなに努力しても、それが収益には現れないこともあるのです。


3つ目は、収益が上がれば、自社の株価が上昇すると考えていること。実際のところは、業績と株価とが、数年にわたって反比例するかのように動く銘柄は、枚挙に遑がないほど挙げることができます。


そして、何より問題なのは、あなたはフローでの収入も、ストックでの資産も、すべて自社に依存してしまっていることです。これでは、あなたはレバレッジをかけて、自社に投資していることと同じです。思惑通りに行かない場合には、すべてをなくすリスクがあるのです。


(2)自社株一辺倒では、万一、勤務先が業績不振に陥った場合に、株価の下落と給与の減少により二重の損失を被る恐れがある。リスクヘッジのため、自社とライバル関係にある同業他社の株式を購入したい


あなたは、自社に過大に依存する(1)の恐さに気付いているようです。気付いていながら、業界そのものにはレバレッジをかけて投資してしまっています。


分散投資の基本は、反対方向に動くものを同時に保有しながら、その配分の妙で収益を上げるというものです。


一方、何にも投資せずに銀行の定期預金で保有していることにもリスクがあります。ガソリンや野菜の値段が大きく変動していることでも実感できますが、定期預金しているうちに、本格的なインフレがやってくると、あなたの資産は大きく目減りしてしまいます。また、大きく円安に振れると、今の値段ではアイパッドも買えなくなってしまうのです。


正解とした(3)の「資産の3割強が自社株の現状では、さらに株式を買い増す余地は少ないが、株式を買うなら極力、自社株と別のセクターやETF。その他、債券や外貨建て商品も組み合わせリスク分散を図るべきである」だけが、それなりにリスクヘッジができているといえるのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

書籍

このコーナーが本になりました!第二弾発売中
矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2

マネーのまぐまぐ!で連載中の「目指せ!相場の勝ち組〜矢口新の『トレードセンス養成講座』」が本になりました。過去の問題から、特に相場力アップに役立つ50問をピックアップ。矢口氏の書き下ろし解説もついて、自分の頭を使って考え相場の“基礎体力”を養うためのヒントが満載です。ぜひご覧ください。

『矢口新のトレードセンス養成ドリル Lesson2』の詳細はこちら

プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

メールマガジン

矢口新のメルマガ

さらに詳しく勉強してみたい方にはこちらの無料メルマガをおすすめします。

相場を知る・より安定した将来設計のために

投資運用の基本を押さえれば、やればやるほど上達します。自己責任の時代。相場で飯を食いたい。息の長い相場生活を送りたい。そんなあなたへ、相場のプロからひとこと、ふたこと。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

メールアドレス 規約に同意して
まぐまぐ!・有料メルマガ
相場はあなたの夢をかなえる─有料版─

ご好評のメルマガ「相場はあなたの夢をかなえる」に、フォローアップで市場の動きを知る ー有料版ー が登場。本文は毎週月曜日の寄り付き前。フォローアップは週2〜3回、ホットなトピックについて、より忌憚のない本音を語る。「生き残りのディーリング」の著者の相場解説!

【840円/月(税込)/毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く)】

購読申込み