あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[個別銘柄に関する問題]

新規上場申請時から売上高を水増し計上していた東証マザーズ上場の半導体製造装置メーカーが、わずか7カ月で上場廃止となることが決まりました。株価は連日のストップ安となっています。あなたが、日本株のスイングトレードを手がけるとして、この手の粉飾銘柄をつかんで大きな損失を出さないために注意すべきことは?

正解は・・・
(2)開示資料もある程度は参考にするが、最終的にはポジションサイズや保有期間の調整、銘柄の分散でリスク低減をはかる


相場はすべて自己責任の世界です。この中で、自己責任で管理できるのはポジションなどの、資金管理だけです。正解は(2)の、「開示資料もある程度は参考にするが、最終的にはポジションサイズや保有期間の調整、銘柄の分散でリスク低減をはかる」となります。


東京証券取引所や金融庁などの発表件数を集計したものによれば、2004年度以降、売り上げの水増しなど、不適切な会計処理が発覚したのは88社で、うち29社が上場廃止、13社が倒産しています。


また、東京証券取引所は2010年5月18日、東証マザーズ上場時の提出書類に売上高を水増し記載したとして、半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」を6月19日付で上場廃止にすると決定しました。


上場から7カ月での上場廃止は過去最短で、上場審査時の粉飾決算が明らかになったのは初めて。粉飾額は約100億円で、届け出書に記載した売上高の8割が水増しだったといいます。


新興市場に上場する企業の粉飾決算が後を絶たず、今回は上場から7カ月での廃止が決まったため、東証は上場審査体制見直しを検討する方針だということです。


ここで、まず、他の選択肢を見てみましょう。


(1)短期投資であっても、目論見書や決算書を徹底的に読み込むようにし、安全と判断できる銘柄に絞って資金を投入する


目論見書や決算書を徹底的に読み込むというのは、それらの資料に書かれていることが、嘘偽りないと信じることが前提です。資料を徹底的に読み込み、「資料にあるように、うちは素晴らしい会社です」という会社と、「資料にあるように、うちは苦戦していますが、なんとか頑張っています」という会社を比べて、前者がより安全だと言い切れますか?


また、粉飾決算で処分されるのは極端な例で、通常の決算の範囲でも、経費や償却費の計上や、在庫などの評価方法に、会社の作為は入ってきます。「解釈の違い」によっても、数値は変わってしまうのです。


それらすべての数値の裏を取り、「解釈の違い」によるバイアスを取り除いた後の、投資物件としての魅力や安全性を知るのは、容易ではありません。また、投資の成否を決める最も大きな要素は売買のタイミングなので、マニアックに資料が読めても、投資家にとってはあまり役立たないのです。


(3)このようなケースでは証券取引所や主幹事証券の責任が大きい。スイングトレードにファンダメンタルズ分析は不要だし、そもそも個人投資家の手に負える問題でもない。運・不運の問題と割り切る


証券取引所や主幹事証券が、粉飾会社とグルになって、不正会計をすることはまずありません。こういう事例は、自らの汚点となるので、彼らは彼らなりに一所懸命に数値の裏を見抜こうとします。それでも騙されるほど、会社側が巧妙だったと考えていいかと思います。


いずれにせよ、会社が出す資料や、それに対する第三者の「お墨付き」を信じて、得するのも、損するのも投資家自身です。運・不運と割り切るしかない部分はあるのですが、生き残るためには、自分自身でできることはやっておくことが必要です。


交通ルールを守らない人がいるからといって、また、警察の取り締まりが不十分だからといって、外出もせずに、家に閉じこもっているわけにはいきません。交差点を青信号で渡る時にでも、一応左右を確認するなど、自分の身は自分で守らねばならないのです。


相場で、自分自身でできることは、資金管理です。想定外のことが起きても死なないように、ポジションの量や保有期間を、自分のリスク許容度に応じて調整するのです。


この問題の正解は2)の、「開示資料もある程度は参考にするが、最終的にはポジションサイズや保有期間の調整、銘柄の分散でリスク低減をはかる」となります。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「個別銘柄に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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