あなたの答えは、残念ながら 不正解 です

今週の解答

[資金管理に関する問題]

トレードで損失を抑え、利益を最大化するには、ストップロス(損切り)のルールを明確にすることが大切です。では、次の3つの考え方のうち、損切りルールとして不完全なものはどれでしょうか?

正解(損切りルールとして不完全なもの)は・・・
(1)自分が冷静に受け入れることのできる損失額を設定し、そこから逆算して決定した価格帯にストップを置く


自分が冷静でいることは大切ですが、大勢の人が集まって成り立つ相場ですから、損切りにも客観的な基準が必要です。(2)と(3)が市場や他の参加者を目安にしているのに対し、(1)は単に自分の都合でしかありません。


したがって、正解である、不完全なものは(1)の、「自分が冷静に受け入れることのできる損失額を設定し、そこから逆算して決定した価格帯にストップを置く」となります。


相場での売り買いの判断に用いるものには、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析とがあります。加えて、市場が今注目している、ニュースなどの材料があります。


ファンダメンタルズは時に、企業破綻などで、市場価格に決定的な影響を与えますので、注目され過ぎるきらいがあります。通常、ファンダメンタルズは市場価格に中長期的な影響を与えるもので、短期的な影響力はさ程大きくないのです。


例えば、拙著「リスク管理資金運用/プロのノウハウ」日本実業出版社・2005年刊(在庫僅少:http://www.tradersshop.com/bin/showprod?a=528&c=9784534039835)の、「あとがきに換えて」に以下のように書きました。


「リスク分散の考え方

2005年5月世界一の自動車会社、ジェネラル・モーターズの社債がジャンク債の仲間入りをしました。ジャンク債とは投機的な(つまり安心して「保有」できない)債券とみなされ、投資不適格ともされます。そして一部のアナリストは満期まで2、3年のGM債は保有していても構わないが、それ以上はリスクが大きいので売却も視野に入れろと助言しました。すなわち、世界一の自動車会社が4、5年後には破綻しているかも知れないと示唆しているのです。企業が破綻すればその株式は紙切れとなります。債券は債務返済の優先順位が高いので、満額とはいえないまでも資金回収できる見込みがあります。しかし、破綻によりもっと大きな損失を被る人たちがいます。その会社の従業員たちです。

1つの会社に勤めているということは会社と自分とは一蓮托生なのですから、株式投資を嫌おうと嫌わまいと、銘柄的にはその会社に100%投資しているのと変わらないことになります。(以下、省略)」


GMが破綻したのは2009年6月1日ですが、2005年時点のファンダメンタルズ分析から見て、GMの破綻は既定の事実だったのです。ここで、2005年に、そのファンダメンタルズ分析をもとに、皆がGM債や株式を売却してしまったなら、おそらくGMの破綻は、債務不履行により、2006年にも起きていたことでしょう。


ところが実際には、2005年の時点に将来の破綻を見越して、自分だけが売り込まれたところで空売りなどしていれば、2009年までのどこかの反発で踏み上げられ、GMより先に自分が破綻していた可能性があります。


また、ジェネラル・エレクトリック(GE)は、格付け的にGMの対極にあるような企業ですが、2000年頃の株価60ドル台から、2009年3月の6ドル割れまで、株価は実に10分の1以下になってしまいます。その時点でもGEは、アメリカの事業会社としてたった6社しかないトリプルAの格付けを得ていましたので、ファンダメンタルズ分析をもとに買っていれば、自分が破綻していた可能性があるのです。


もっとも、GEはその後19ドル台後半にまで反発しましたから(2010年5月末は16.35ドル)、もし、6ドルで買っていたなら、3倍以上にもなりました。これで分かるのは、相場で儲けたいのなら、ファンダメンタルズ分析は参考程度で、売り買いのタイミングが最も重要だということです。


そして、その売り買いのタイミングをはかるものが、テクニカル分析なのです。


私が最も効率的な運用だと提唱している、「谷越えを待って買い、山越えを待って売る」ことは、テクニカル分析により、そのタイミングを見極めることができます。


最も単純な考え方は、高値から60ドルを下回ったGE株が、60ドルを上回って来ないことは、山越えが確認されていることになります。ここは売ればいいのです。そして、安値から6ドル台に浮上してきたGE株が、2度と6ドルを下回らないと、谷越えが確認できていることになります。そこは買えばいいのです。


もちろん、これは結果論です。では、実際に60ドルで売った人はどのようなリスク管理をすればいいのでしょうか? 


60ドル台が山頂だと思っているのですから、その高値を抜いてくれば、山越えかと思った自分の思惑が違っていたことになります。そこで、損切ればいいのです。


同じように、6ドル割れが谷底だと思い買ったのなら、再び6ドルを下回り、前の安値を抜いてきたなら損切ります。谷越えではなかったからです。


ここで、例えば、7.40ドルで買い、6ドルまで下落した時を考えてみましょう。損失は20%に膨らんでいます。損切りを考えるに十分な、損失額です。ここで、選択肢1)のように、「自分が冷静に受け入れることのできる損失額を設定し、そこから逆算して決定した価格帯にストップを置く」ことで、損切ったとします。


ところが、そこ(6ドル)から株価は反発し、結局、底値で損切った結果となったとします。これを、不運だったと片付けていいものでしょうか?


前の安値を下抜けるまでは、谷越えは確認済みのままです。安値が揃えば、ダブルボトムとなり、買いシグナルです。安値を更新しなければ、安値切り上がりで、上昇トレンドが確認されます。そこには、テクニカル分析でも証明される、明らかな株価の底打ちが見られます。


つまり、あなたは自分のコストという主観で物事を判断していたために、株価の底打ちという客観的な事実を見逃したのです。運、不運以前に、すでに冷静さを失っていたのです。


あなたがなすべきことは、7ドルの大台という心理的な節目や、その近辺のテクニカル的なポイントで損切っておくことで、いったん冷静になっておき、6ドルという次の大台からの反発で買い直すことでした。


相場での売買の手掛かりには、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、加えて、市場が今注目している、ニュースなどの材料があります。しかし、いったんポジションを持ったなら、そのリスク管理には、客観的な判断基準を設けなければならないのです。

残念ながら不正解だったあなたは・・・

実際に運用をする前に、ほかの「資金管理に関する問題」で、さらに勉強しましょう。

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【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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