「相場力ＵＰ」に役立つ矢口新の『トレードセンス養成講座』

どの通貨ペアが特にやさしい、あるいは難しいというのは、一概には言えませんが、流動性が大きい、情報が得やすいという点では、ドル円の取引が一番です。正解は（１）の、「比較的値動きが穏やかで、他通貨ペアにも影響を与えやすい米ドル／円の取引からはじめるのが基本。ドル円の取引経験がないまま他通貨ペアを手がけるのは危険である」となります。

今回の問題については、いろいろな考え方があると思いますので、まずは他の選択肢を見てみましょう。

（２）相場つきによりトレードしやすいペアは異なるので、米ドル／円が特別に初心者向きということはない。日本円をベースに取引できるドル円、クロス円の中から通貨ペアを選ぶのがよい

どういった値動きがトレードしやすい値動きかというのは、人それぞれで、これも一概には言えません。あえて、一般的な見方を挙げれば、それなりの値幅はあるが、急激に動き過ぎない、テクニカル的なサポートやレジスタンスが十分に機能するといったところでしょうか？

これは、通貨ペアによっても、相場付きによっても、また取引する時間帯によっても変化します。それを見極めて、自分に合った相場で勝負するというのは、上級者でも難しいことで、なかなか初心者に望めることではありません。

（３）外貨同士の組み合わせも含め、どの通貨ペアで取引を初めてもリスクは変わらない。短期でキャピタルゲインを狙うなら値幅の大きい通貨ペアを、長期でスワップを狙うなら値動きの穏やかなペアを選べばよい

通貨投資に金利差は大きな意味を持っています。とはいえ、金利差は長く持てば持つほど効いてくるもので、短期の売買ではあまり意味がありません。つまり、長期でスワップポイントを狙うなら、外貨預金など「保有する」という意識が必要なのです。

今回の問題は、外国為替証拠金取引で、狙いはキャピタルゲインです。そのためにレバレッジもかけて、素早く利益を獲得しようとしています。キャピタルゲインを取るには、売りでも買いでも、動く方向にポジションをつくる必要があります。スワップポイントに吊られて、買いから入り、やられても持ち続けることは、本来の目的からは離れるのです。

トレードを行うには、何が目的かを明確にしておく必要があります。目的が明確でないと、トレードの成否が曖昧になるので、効率的なリスク管理ができないからです。キャピタルゲイン狙いの外国為替証拠金取引では、長期のスワップポイント狙いは考えないようにしないと、リスク管理が難しくなります。初心者ならば、尚更です。

また、どの通貨ペアも同じ値幅ならリスクは同じというのは、机上での考え方です。実際には流動性や、市場参加者の違いにより、初心者にとってのリスクは違ってきます。例えば、通貨ペアによっては、大きな値動きは特定の参加者の売買によるものだと、ほぼ断定できるものです。例えば、このレベルで、この規模の買いは、ヘッジファンドのＡか、投資銀行のＢに違いないなどというようなことです。

流動性の小さな、目立たない通貨ペアほど、プロが牛耳っているものです。そこに初心者が徒手空拳で乗り込んでも、なかなか勝てるものではありません。

あなたは日々のニュースで、どの通貨ペアのレートを最も耳にしますか？　どこの国の情報が得やすいと考えていますか？　その意味では、ドル円が最も扱いやすい通貨ペアなのです。

また、実需が厚く、一部の投機筋が相場をつくるのが困難なのもドル円です。

したがって、正解は（１）の、「比較的値動きが穏やかで、他通貨ペアにも影響を与えやすい米ドル／円の取引からはじめるのが基本。ドル円の取引経験がないまま他通貨ペアを手がけるのは危険である」となります。

初心者のあなたなら、流動性が大きく、情報も得やすいドル円のトレードから初めて、ある程度、慣れてから他の通貨ペアに移るのがいいと思います。