今週の解答
[ニュースに関する問題]
数年前に株式投資を始めたあなた。政府・日銀の円売り介入は初めての経験です。いま取るべき道は?
(3)個別企業のチャートをチェックし、個々に対応する
政府・日銀による為替介入の効果は、プロでも意見が割れています。株式投資では中級者レベルに達していると思われるあなたでも、為替動向を手掛かりに「決め打ち」するのは、いささかリスクが大き過ぎます。正解は(3)の、「個別企業のチャートをチェックし、個々に対応する」となります。
2010年9月15日、政府・日銀は午前の東京外国為替市場で6年半ぶりの為替介入を実施したのに続き、同日夕からはロンドン、ニューヨーク市場でも相次ぎ円売り・ドル買いの単独介入に踏み切りました。介入額は1日当たりでは過去最大規模となる1.8兆円に達したもようです。16日以降も介入を続ける方針で、日銀は介入で市場に出される円資金をあえて放置することで事実上の金融緩和につなげるとも表明しました。
9月15日といえば、日本の首相を実質的に決める、与党民主党の代表選挙が行われた日の翌日です。それに先立つ週には、代表選を前にした政府・日銀が動けないだろうと、円が対ドルで何度か、1995年以来の高値を更新する場面が見られました。当局はその度に「円高阻止のために断固とした態度をとる」と表明していましたが、市場の目論見通り、代表選前に動くことはできませんでした。
代表選では、剛腕といわれた小沢氏が敗北し、弱腰とみられた菅氏が再選されたことで、15日に投機筋は更に円買いを進め、再度15年来の高値を更新したところで、上の市場介入が入りました。「有言実行内閣」の最初の大仕事でした。
ここで、市場関係者の中には、サプライズを口にする人も多く見られましたが、それまで「代表選中は動けない」としていたということは、「代表選後は動く」ということではなかったのかと、聞きたいくらいです。
とはいえ、リスクを鑑みて当初考えていたことが、ポジションを保有しているうちに、言っていることと、やっていることとが違ってくるのはよくあることです。そういった言行不一致を防ぐには、常に、ポジションを取るに至った理由を振り返ってみる必要があります。忘れっぽい人は、ポジションを取る時に、その理由をメモにでも残しておいてもいいでしょう。
私などから見ると、今回の介入はここしかないというタイミングで行われたものでした。そして、これで当面の円高は終わった可能性があるとも見ています。
その辺りは、ブログ「単独介入でも効果的! なぜか?」を、ご参照下さい。
http://ameblo.jp/dealersweb-inc/day-20100920.html
さて、円安は輸出企業のコストを改善する(見方を変えれば、製品販売価格を引き下げることができる)ことから、企業業績にはプラス要因です。とりわけ、最近の為替水準のように、個々の企業努力で対応するにはギリギリというレベルですと、ここから更に円高に進むのか、あるいは多少なりとも反転するのかは、多くの輸出企業にとって死活問題となっています。
そこで、本当に円安に進むのなら、これまで売られ続けてきた輸出関連株を買うのは、理に叶っています。実際に、介入後には、多くの輸出企業の株価が下降トレンドラインを上抜けしています。
もっとも、代表選前でも輸出企業の株価は、円高が進んでも下抜けすることがなくなってきており、円安が来れば、上放れできる状況にはなっていました。
しかし、これはどんなに円高が進んでも輸出企業が耐えられるようになったというよりは、株式市場では私のように、もうそれほどの円高はないだろうと見込んでいたのではないかと思います。
その見込みは、実際の介入により、いったんは当りましたが、この後、どうなるかは分かりません。今後の展開を政治の判断に委ねるのですから、大きなリスクが存在します。
そこで、個々のチャートを調べてみると、内需関連企業でも同じように上抜けしている銘柄が見受けられます。円安で、多くの内需が値を崩しているなかでは、注意を払っていいかもしれません。
円安で買われた外需関連は、介入効果が一時的で、円高に戻れば、売られる確率が高まります。一方、円安でも買われた内需関連は、円高になったからといって、連鎖的に売られるとは限りません。つまり、為替リスクを回避しながら、個別株のリスクが取れるのです。
選択肢の(1)と(2)は、為替投機、しかも、介入効果というプロでも迷う材料をベースにした投機です。
株式投資家のあなたにとっての正解は、(3)の、地道に「個別企業のチャートをチェックし、個々に対応する」となります。
見事正解だったあなたは・・・
油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。
書籍
プロフィール
- 【監修】矢口新(やぐち・あらた)
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1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。
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