あなたの答えは、正解 です!

今週の解答

[投資心理に関する問題]

あなたが利食った後、その銘柄がさらに値上がりし、上げ幅の半分も取れなかったことが何度か続きました。「損小利大」を心がけているつもりでしたが、我慢が足りなかったのかもしれないと思っています。今後はどのようなスタンスが最も望ましいでしょうか。

正解は・・・
(1)、(2)、(3)のすべて

一所懸命考えたのに、どれを選んでも正解なのかと白けないで下さい。私は相場に関しては誰よりも突き詰めている人間の1人だと自負していますが、こと利食いに関しては、これが正しいというものが分かりません。状況によっては上の選択肢のどれもが正解になりえます。


私が利食いというものをどう捉えているかをお伝えするために、拙著『実践・生き残りのディーリング』から、利食いの難しさについて触れた項目を引用します。


92. 利食い千人力 −簡単に利食うな、確実に利食え−

利食いこそが勝負を決めると信じる私にとって、「利食い千人力」という言葉の響きはいかにも安易で、長らく受けつけない言葉でした。


この言葉を嫌うあまり、利食いそのものが遅くなり、何度利食い損ねたことでしょうか。そこで、考えに考えたあげく、サブタイトルを付け加えました。とたんにこの言葉が生きてきたのです。


決して忘れてはならない言葉、「損は切るもの」とともに、相場で最も重要な言葉が「簡単に利食うな、確実に利食え」です。


思えば千人力などという、いかにも簡単に利食わせようとする姿勢が、私は嫌いだったのです。利食いそのものを嫌いなわけがありません。辛抱して大きく育て上げた利益を確定する瞬間は、気持ちのよいものです。そこが相場の転換点であれば、なおのこと快感です。至福の瞬間とも言えます。だからこそ、利食いを安易に取り扱ってはならないのです。真剣勝負なのです。


相場に入るにはコストがかかります。人件費や設備などの諸々の費用はもちろんのこと、ポジションを取って逆にいった場合の損切りコストも頭に入れておかないと、ネットで収益を上げることは困難です。単純に考えると、相場の上げ下げは5分5分の確率、勝ち負けは5割の確率です。勝ち負け半々で収益を残すには、大きく勝って小さく負ける、こと以外にありません。そこで、私たちは利食いと損切りの値幅を2対1、ないしはそれ以上に設けることによってより大きく勝とうと試みます。ところが、その試み自体が負ける確率を高めてしまいます。すなわち、値幅が小さくレベルが近い損切りオーダーの方が先につく可能性が高まるのです。したがって、勝率5割でも、実は望み過ぎだとも言えるのです。つまり、損少利大のディーリングを行い、少ない勝率でも、確実に残せるようにしなければなりません。


損切りとは、どこまでやられるかが分からないから行うのです。ずるずると引きずっても、結果が良くなるとはいえません。損切りの場所は、通常の価格の「ゆらぎ」を、どれほどと見るかだけで決めるべきです。損切りオーダーは機械的に入れてもよいでしょう。それによって、損の総額は限定されるのです。


反対に利食いは限定してはなりません。損切り幅の2倍で利食うというのは、あくまで最低限の目安です。利食えるからと千人力を発揮していては、コストをカバーして儲けを残すことはできません。利食いは、反転の兆しが見えるまで引っ張る気持ちが必要です。どこまでやられるかわからないから、損切りオーダーを入れるのと同様の発想で、どれだけ儲かるかわからないのに、利益を限定してしまうことはないのです。


とはいえ、忘れてはならないのは、評価益は絵に描いた餅にすぎないことです。確定してこその利益です。せめて一部だけでも確実に利食うことを勧めます。


また、為替や主要国債など流動性の高いものはまだしも、流動性に欠ける商品の評価益と実現益とは、似て否なる物と考えていた方が無難です。私はそういった商品は、強い営業力が背景にあって初めて扱える商品だと思っています。高いオファーで買わせ、安いビッドで買い取るという強い営業力さえあれば、流動性のないものはむしろ高収益が約束される商品でもあるのです。個人投資家が扱うときは、まだ上がりそうなときに売り逃げるのが賢明です。


こうした利食いに対する姿勢を元に、今回の選択肢を検討すると、以下のようになります。


(1)利食いを急ぎすぎているので、もう少し我慢するようにするのは、利益を大きく伸ばすためにはどうしても必要です。


(2)半分近くも取れれば十分なので、今のままのスタンスで続けるようにしていれば、利食い損ねることがなく、増えた資金で新たな投資をする自由度が高まります。


(3)いったんは利食ったあと、さらに値を上げるようであれば買い戻すのは、状況に臨機応変に対応する意味で大切です。


これだけだと、ますます混乱するかも知れません。もっと実用的な利食いの手掛かりをいくつか与えましょう。


一)標準偏差のシグマ2で利食う。シグマ2とは、以下のページの説明では95.4%の確率とされているところです(参照:「日経平均暴落時、各指標が売られ過ぎのサインが出ていたら、買っても良いでしょうか?」)。仕掛けや損切りを標準偏差に頼ると危ない目にも合いますが、利食いの場合は、間違えてもかなりの利益が残ります。


二)マネーマネジメントでの損失の許容量の2倍の利益で確定する。

三)他のもっと良さそうな銘柄に入れ替える。

買った銘柄が下げ始めたと確認できてから利食うのが基本です。しかし、これらの方法のように、まだ上がりそうな時に利食うと、より大きな利益が得られることも多いのです。


私が運用中のタペストリー・キャピタル・ファンド(プログラム)のスキームでは、多くの銘柄を扱い、他にも買い候補や売り候補の銘柄を用意しておくことで、単一の銘柄に入れ込みすぎることを防いでいます。まだ上がりそうでも、(一)や(二)といったそれなりの利益が得られるものは利食って、これから上がりそうな銘柄に入れ替えたり、半分だけ利食ったりしています。そうしておけば、買い直しや買い増すことも容易になるのです。

見事正解だったあなたは・・・

油断は禁物、ほかのカテゴリの問題にも挑戦してさらにセンスを磨く努力を怠らないようにしましょう。

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プロフィール

【監修】矢口新(やぐち・あらた)
テクニカル指標の成績表

1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。野村證券(東京、ニューヨーク、ロンドン)、ソロモン、UBSなどで為替、債券のディーラー、機関投資家セールスとして活躍。著書『生き残りのディーリング決定版』は、現役ディーラーの“座右の書”として、高い評価を得ている。現在は会社社長兼ファンド・マネージャーとして、資本金を株式市場などで運用。主著に『実践・生き残りのディーリング』『なぜ株価は値上がるのか?』など。新著『テクニカル指標の成績表』は2009年11月11日発売。

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