08年11月14日(金)のトップニュース
金融ショックがマカオ翻弄[観光](NNA.ASIA)

資金調達に成功しなければ、事業継続に疑問が生じる−。米ラスベガス・サンズは先週、米証券取引委員会(SEC)に提出した報告で経営破たんの可能性に言及した。本体が倒れれば、同社が巨額を投じて進めているマカオ開発事業も水泡に帰す。カジノに依存するマカオ経済に計り知れない打撃を与えることは必至だ。米国資本の導入でこの世の春を謳歌(おうか)していたマカオが、米国発の金融危機に揺さぶられている。

マカオ政府は2002年、それまで1社独占だったカジノ市場を複数の企業に開放。同社は04年5月のサンズ・マカオの開業で、外資系の先陣を切ってマカオ上陸を果たすと、どこか陰鬱なイメージがつきまとっていた“賭場”を誰もが入りやすい“アミューズメント施設”に生まれ変わらせて見せた。続いて何もない埋め立て地に建設したザ・ベネチアンでは、本場ラスベガス式のカジノ総合リゾートの概念を本格的に導入。02年から昨年までの5年間に、マカオのカジノ収入は3.7倍、域内総生産(GDP)は2.8倍に拡大した。

そのサンズを金融危機が襲った。外電などによると、同社は6日のSECへの報告で、第4四半期(10〜12月)に銀行の財務制限条項に抵触する恐れがあり、新たな資金調達に成功しなければ債務の繰り上げ履行を求められ、事業継続に疑いが生じると明らかにした。

サンズはマカオで1万5,000人を雇用しており、倒産すれば社会的な影響も極めて大きい。マカオ日報などによると、エドムンド・ホー行政長官は11日に行った施政報告(施政方針演説)後の記者会見で、「絶対に1社たりともカジノ企業の営業停止は認めない」と強調。サンズの名指しは避けながらも、「もしどこかの企業が倒産したなら、直ちに事業を政府管理下に置く」と述べた。

金融危機によってカジノ企業は軒並み打撃を受け、マカオで事業展開しているラスベガス系の株価(11月12日終値)は、52週高値との比較でサンズが95.8%、ウィン・リゾーツが67.6%、MGMミラージュが89.2%、それぞれ暴落している。

木下コメント

今回の危機で分かった事は、借金をベースに事業を行ってきたビジネスは、まやかしの成功に酔っていたということだ。日本で破綻が続く不動産市場は、典型的な分野だ。

特に、エンターテインメントは、まやかしの成功が如実に体現される。最近では著名音楽プロデューサー小室哲哉氏が詐欺の容疑で逮捕された事は記憶に新しい。外資系金融機関の高給取りと食事をしているときにマカオの話題になったことは何度もあった。

借金をして大きな成長を遂げる。それもまたひとつの考え方。しかし、ここはジッとこらえて現金の強さを実感する企業がしぶとく生き残る。不況もまたよし、松下幸之助翁の言葉を噛みしめ、経営者の視点で投資を考えていくタイミングだ。

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