『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

騙されない日本勢への最後の言葉

日本勢は「騙されない」か?

早いもので、このコラムを書き始めてから4年近くの月日が経つ。ご縁あってこのコラムでの執筆を委ねて頂いたのであるが、その間、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を巡っては実に様々なことがあった。


このコラムで、私が読者の方々に訴えかけてきたことはただ一つである。――「日本勢よ、これ以上、騙されるな!」ということである。このコラムでも繰り返し引用してきたマーケットの格言に「アラブ人と日本人がやってきたらば、そのマーケットは終わりだ」というものがある。“情報リテラシー”が相対的に乏しいこれら二つの勢力がやってきたらば、既にそのマーケットは旧聞に属するものなのであって、新規参入ではなく、むしろ「EXIT(=売り抜け)」をすぐさますべき代物に他ならないという趣旨である。しかし、ここでいうアラブ人たちはまだ良い。どんなに“騙され”“奪われ”たからといっても、さしあたっての間は地球の生み出す錬金術=「原油」がその財布を満たしてくれるからだ。だが、日本人はそうはいかない。日本人にあるのはその「頭」と「体」だけである。戦後日本が必死になって貯めてきた富が“騙され”“奪われ”た先にあるのは、もはやその肉体を使って最低限の富を日々の暮らしのために生み出すことしかできなくなる日本人の哀れな姿しかない。――だから、絶対に日本人はこれ以上、米欧系“越境する投資主体”たちが巧みに仕掛けてくるあの手この手に“騙され”てはいけないのだ。

2020年まで世界は「陥没」する?

こうした観点で、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。


この7月に入って、米ワシントンに所在する国際金融協会(Institute of International Finance)が今後の実質GDPに関する予測を発表。その中で、実に2020年までの間、とりわけ米欧勢が長期低落を続ける可能性が高いと、ご丁寧にも予測グラフ付で発表したのである。(米国「The Big Picutre」参照)。国際金融協会とは、日本勢の一部メガバンクも所属している国際的な銀行組織だ。名うてのバンカーたちがつまりは2020年までの間、米欧勢はリカヴァリー(復活)することは無いと世界に向かって断言したのである。これは「事件」だ。


一方、大変気になることがこのグラフにはもう一つだけある。――米欧勢と同様に、いやもっと正確にいえば欧州勢と同じくらい急なカーヴで崩落するはずの日本勢も、2013年を迎えると一転して上昇基調となり、ついには米欧勢よりも遥かに良い状態へと到達するというのである。その理由は正直、IIF(国際金融協会)が公表した文書を見ても定かではない。しかし冷静沈着をもって、よしとするバンカーたちのことである。何らかの重大な根拠があって、こうした「予測」を“公表”しているとしか考えられないのである。日本勢の中ではほとんど語られてはいないが、こうした米欧勢を中心とした「相場観」が、向こう10年間について既に描かれていることを、読者の皆さんは既にご存じであっただろうか。

お別れのご挨拶に代えて

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で米欧勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は8月7日(土)に東京、8日(日)に横浜、28日(土)に福岡、29日(日)に広島、神戸にてそれぞれ開催する「IISIAスクール」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。


「日本勢が米欧勢との比較で相対的に“よりマシな状態”となる」――これはかねてから、私がこのコラムでも繰り返し申し上げてきたことである。したがってそうした予測に事実が追随する可能性がますます高まったということが出来よう。しかし、だからといってもろ手を挙げて嬉しがっているだけで本当に日本人は良いのだろうか。


率直に言おう。これは大きな「罠」である可能性が高い。引き続き、崩落する米欧勢は私たち=日本勢に2013年頃を目途にして表面的には「恨み節」にも近い事を言い出すに違いないからだ。「日本勢は“よりマシな状態”にある。だからもっと世界に貢献せよ、マネーを出せ」と。いやそのように言われ、自らなけなしの虎の子を少しずつ出すのであればまだ良い。もっとひどいのは無意識の内に“奪われ”たにもかかわらず、気付いた瞬間に米欧勢が一斉にそのように言い出すような場合である。正に“騙され”た日本勢はその時、例によって“ぐうの音”も出ないことであろう。


しかし、明日の日本を守り、その繁栄を保つためには絶対にそうした「騙され方」を許してはならないのである。コラムの最終回を迎えるにあたり、だからこそあらためて申し上げておきたい。日本勢よ、もはや“騙され”てはならない。そしてそのために絶対に必要なもの、それが“情報リテラシー”なのだと。――これまでのご愛読、誠にありがとうございました。願わくば、黄金に輝く我が国=日本(ジパング)の繁栄がさらに続かんことを!

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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狙われた日華の金塊

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