日朝接近で儲かるのは名古屋?
日朝接近で儲かるのは名古屋?
このコラムでは、北朝鮮情勢について度々取り上げてきている。なぜなら、「北朝鮮」は東アジア全体のマーケットに対して、良くも悪くも影響を与える壮大な「仕掛け」ともいえる国家だからだ。その背後には、米国、中国、韓国、ロシア、東南アジア諸国などと並び、欧州、とりわけドイツ語圏の諸国がいる。
「まさか?」と思われるかもしれない。しかし、たとえばスイスで次のような新聞記事が最近出た。7月1日付『ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング』の「初心者のための北朝鮮入門:帰国」という記事だ。
北朝鮮から逃れ、日本など各国に移り住んだ人々のことを「脱北者」という。その一人であり、わざわざ東京に「脱出」してきたはずのト・チュジさんという脱北者(女性)が、去る6月26日、こともあろうに中国・北京の北朝鮮大使館で記者会見を行った。「日本で暮らすのはつらい。北朝鮮に帰る」というのである。
これだけでも驚きのニュースだが、この記事ではさらに衝撃の事実が語られている。ト・チュジさんは元来、中国に脱出した兄と会うためだけに「脱北」したのであって、日本に行くつもりではなかったのだという。
普段は「脱北者」に関する情報を日本で売りさばいては生活している兄。彼は「逃避行をフィルムに収めればカネになる」と考え、妹を日本へと「逃亡」させた。―――要するに、すべてが「お芝居」だったというのである。仮にこれが真実であったならば、日本でこれまで何度も騒がれてきた「脱北者」騒動とはいったい何なのかということになる。ましてや、そうした「脱北者」が事実上暮らすのを温存している中国当局の「立ち位置」も気になるところだ。ましてや、なぜスイス勢がこんなことまで知っているのか?
失われた「名古屋・平壌チャーター便」
マネーの世界の「常識」を知っていると、実はこれらの問いに対する答えは簡単に出てくる。
北朝鮮が最もカネを預けているのはスイスだという情報がある。後継者問題も含め、プライベート・バンク業務を「お家芸」とするスイスが、実際には北朝鮮情勢の黒幕である可能性は高い。だからこそ、彼らは何も知らない日本人では想像もつかないような情報を持っており、「ここぞ」というタイミングで出してくるのだろう。
それでは、なぜ今が「その時」にあたるのか?―――この「脱北者」問題一つとっても、要するに関係者の自作自演だったということになれば、もはや「問題」ではなくなってくる。「人権抑圧」「極度の貧困」といった脱北者問題の背景事情までもが疑われてくる。むしろ、「北朝鮮とは、実は壮大な演劇のような国であって、テレビに映し出されているものとは違うのではないか」ということなろう。
最近の米朝接近を見れば分かるとおり、世界は確実にそうした「北朝鮮は普通の国」論へと傾きつつある。その背景には、北朝鮮には莫大な鉱物資源が眠り、それを掘り出すための安い労働力もあり、さらには山がちな地形で大事な金庫を各国が置くには格好の場所だといった事情がある。
北朝鮮をめぐる最近の不可解な各国の動きは、結局のところ、ひそかな利権分配だったというわけだ。ところが日本はというと、完全に出遅れている。「拉致問題」という解決すべき絶対的な問題を抱えているからだ。しかし、米国が動けば、最後は確実に日本も動かざるを得なくなる。
なぜなら、「同盟国」=日本が邪魔となっては、米国も北朝鮮と表立ってビジネス・トークをするわけにはいかないからだ。となると、日本の個人投資家としては「日朝接近」を意識せざるを得なくなる。日本政府には引き続き「拉致問題の徹底究明」を求めてもらっておこう。それが「政府の役割」だからだ。
しかしその間、確実に北朝鮮を中心とした東アジアのマーケットは激動の時代を迎える。個人としての日本人が、そうした「次の時代」に備えて悪いということは決してないであろう。その時、思い起こされるのが、実は90年代後半に名古屋と平壌の間でチャーター便(貨物)が飛んでいたという事実だ。
98年に北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことで、この空路は途絶えた。しかし、日朝が再び接近することになれば、「目立つ東京・関西」を避け、また現状回復という意味も込めて、「名古屋」が選ばれる可能性が高いのではなかろうか。すると、米朝接近、そして日朝接近の「果実」は名古屋を中心とした中京圏へと流れ込んでくることになる。
目先にとらわれず、「外資勢による日本買いの秋」をターゲットに
このように、朝鮮半島に限らず、これから激動の時代を迎える東アジアとの関係で、日本の地方マーケットも無関係ではない。7月22日に名古屋で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでは、その辺りの事情に関する私なりの分析を語るつもりですので、ご関心を持たれた方はぜひお集りいただきたい。
このコラムで以前、「早ければ6月の中・下旬からマーケットが大きく転調する可能性がある」という「6月暴落説」を披露した。その後情勢は変わり、分析も当然、刻々変わってきているのであるが、私たちの研究所のクライアントの方々との関係もあり、各種の無料媒体では「フォロー」の分析を明らかにしてこなかった経緯がある。そうした次第もあり、一部の方々から「あれは何だったのか?」といった声が沸き上がってきているように見受ける。
しかし、北朝鮮をめぐる動きを見れば分かるとおり、マーケットとそれを取り巻く「基本的な構造」は変わってはいない。ただ、そこで関係する諸国、勢力の間での調整が次々と遅延してきているというのが実態なのだ。
したがって「来るべきもの」は確実にやってくる。そのことを前提とし、自ら情勢分析を微調整しつつ投資行動ができないようでは、個人投資家として怒とうの金融資本主義の中で生き残ることはできないのではなかろうか。
いずれにせよ、間もなくマーケットは「真実の時」を迎える。その時、一喜一憂してしまってはいけない。むしろ、だからこそ目線を上げて、「とりわけ外資勢による『日本買い』のターゲットは今秋」にあることを今一度胸に刻み、行動すべきである。
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筆者プロフィール
名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表。
著書『仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理 〜マネーの時代を生きる君たちへ〜-原田武夫の東大講義録-』は1月25日発売。
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