本当の危機は5月に訪れる
外務省すら把握していないG7会合
私が外務省を離れてから、早いもので3年以上の月日が経った。「官から民へ」を身をもって体験してきたわけであるが、外務省の外側に行ったからこそ見えてきた出来事がいくつもある。
その1つが「7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議」、すなわちG7の位置づけである。1993年、私が外務省でのキャリアを始めたのが経済局だった。その頃、隣の課が担当していたのがG7だったのだが、担当の課長補佐がしばしばこちらにやってきてはぼやいていたことを懐かしく思い出す。
「大蔵省の連中はさぁ、G7について全く教えてくれないんだよ。教えてくれることといえば、G7で出された共同声明のプレスリリースだけ。一体、どんなことが本当は話されたかは教えてくれないんだ」
もちろん、外務省も負けてはいない。今では参加する国が8カ国になり「G8」と呼ばれるようになった「主要先進国首脳会議(サミット)」については、詳細を他省庁には教えないことを当時から慣例にしていた。「いやはや、霞ヶ関の縄張り意識には困ったものだ」と思ったものである。
しかし、外務省を離れ、マーケットで織り成される「マネーの潮目」を読み解くことを生業とするようになった今では、当時の大蔵省の“論理”が分からなくもないと思えてくるのだから不思議なものだ。なぜなら、G7は明らかに国家を超えた、国際金融資本の論理によって動かされている会議体だからだ。
聞こえは良いが、一体なぜそれが正しいのか、表立った説明が全くされない「財務省と日本銀行の分離論」と同じく、超国家の論理がそこにあるのだとすれば、(建前上は)国家の論理を前提に動かなければならない外務省に、G7を触らせまいとするのも当然なのである。
G7会合とIMF総会を読み解く
そのG7会合が、国際通貨基金(IMF)総会と相前後して、4月中旬に行われた(前者は11日、後者は12、13日)。G7は、とりわけ日本で財務省・日本銀行による徹底した秘密主義で守られているせいか、一体そこで何が話されているか分からないものだ。しかし、「マネーの織り成す世界の潮目」を読み解く立場からすると、今回のG7、そしてIMF総会ほど、分かりやすい図式でマーケットをめぐる今後のカレンダーを示した会合はなかったように思う。
ちなみにこれらの会合に先立つ9日、全世界の大手金融機関375社が属する「国際金融機関(IIF)」が自主行動規範を発表した。「今のサブプライム危機を乗り切るには、規制ではなく、銀行による自主規制こそが望ましい。だからそのルールをつくった」というものだ。
ところが今回のG7による共同声明を見る限り、それが認められたとは思えない。英国を代表する経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(4月13日付)にいたっては、「銀行による自主規制プランは回避された」とまで言い切っている。G7はむしろ半ば強いるような形で「今後100日以内に、証券化された金融商品による損失を素直に申告せよ」と金融機関に対して要請したのだ。
一方、IMFはというと、中国やロシアなどが有り余る外貨準備で運用しつつある「国営ファンド(SWF)」についての検討作業を行うこと、そしてその“結果”を次回総会で話し合うこといついて合意したのである。IMFが発表したコミュニケも、G7の共同声明と同じく、複雑かつ難解なものである。しかし、とどのつまりIMFが今回決めたことの中で、この1点がもっとも重要なのではないかと私は思うのである。
本当の危機は5月に訪れる
今回、ワシントンで立て続けに開催されたこうした国際会議から何が読み取れるのかについて、私は5月10・11日にさいたま・横浜・東京、5月23・24・25日に神戸・京都・静岡でそれぞれ開催する無料学習セミナーでじっくりお話できればと考えている。
そこでお話する内容の結論を先回りして記すとこういうことだ。
本当の危機は、4月半ばから数えて100日以内にやってくる。このタイミングで、金融機関は政府に強いられ、損失を申告することになる。とりわけ、米国債をめぐる重大日程がすでに決まっている5月頭からはレッド・ゾーンだろう。それから夏までの間、マーケットは暗転こそすれど、陽転する可能性は乏しいといわざるを得ない。
しかし、一方において、世界でもっとも金満な国々が抱えているSWFによる投資は、その後、IMFによるお墨付きを得る形で始められるのである。その際は、「世界経済はここまで危機的な状況にさらに陥ったので、SWFの手を借りるしかない」といったプレゼンテーションがなされるのかもしれない。だが、そこからマネーの怒涛の流入が始まることはもはや明らかなのである。その結果、どういった歴史的な「潮目」が生じるかは自ずから明らかだろう。
今、世界は歴史的な転換点を迎えている。将来に対しては誰しもが確たることを言うべき立場にはないが、それでもなんらかの「潮目」が生ずる予兆は必ず現れているはずである。それをつかみとる能力、すなわち真の「情報リテラシー」を持っているか否か、私たち=日本の個人投資家は今まさに試されつつあるのだ。
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筆者プロフィール
名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表。
著書『世界と日本経済の潮目 2008年―金融マーケットを先読みせよ メディア情報から読み解くマネーの潮流 』
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