『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

新100米ドル札発行から見る米国勢の狙いと“日華の金塊”

いよいよ始まったスケープゴート弾圧

「金融メルトダウンがいよいよ“最終局面”を迎える中、これまで隆盛(りゅうせい)を極めてきた米系“越境する投資主体”の雄が、突如として弾圧の対象とされ、スケープゴートになる可能性が高い」――マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を巡る“潮目”を追う中で、私はこれまで繰り返しそのように述べてきた。そして4月16日、米証券監視委員会(SEC)は米系“越境する投資主体”の雄であるゴールドマンサックス社を「詐欺的行為」の嫌疑で民事提訴した。これを受けて、マーケットは世界中で激しく動揺。「ショック」とまではならなかったものの、いよいよ「終わりの始まり」を告げるファンファーレが鳴り響いたものとして、警戒感が日に日に高まる展開となってきている。


もっとも、この事をもって金融資本主義が終焉(しゅうえん)の日を迎えるなどと、努々(ゆめゆめ)考えてはならないだろう。なぜなら米系“越境する投資主体”たちは、「この日」「この時」が来るのをあらかじめ念頭に置きつつ、行動していたからだ。順次“デフォルト(国家債務不履行)”危機を迎え、その中で国内的な混乱を余儀なくされていく米欧マーケットを離れ、2008年11月頃から、“よりマシなマーケット(safe haven)”としての日本マーケットへと殺到し始めていたのだ。今、問題とされている“越境する投資主体”についても、実際はその例に続くと非公開情報ベースでは聞く。したがって「マネーは廻る、どこまでも」なのである。


しかし、だからといって金融メルトダウンがいよいよ“最終局面”を迎えることには変わりがないのである。問題はむしろ「If」ではなく「How」、そして「When」、すなわちそれがどのような形で、かつどのタイミングで到来するのかなのだ。マーケットの“猛者”たちの視線は、正にこの点に集中して注がれつつある。

なぜ今、「新100米ドル札)なのか?

こうした観点でマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。


4月21日、米連邦準備制度理事会(FRB)と米財務省は合同で新100ドル札の図柄を公表。精巧な新100ドル札は偽造防止のために造られたものであり、来年(2011年)2月10日より流通に付されると発表したのである(21日付スイス「ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング」参照)。


しかし、この「公表」を巡っては大変不可思議なことがある。米財務省はこの新札発行のため、特設サイトまで設けてPRしているのだが、不思議なことに「新札」とはいえ、なぜか「100米ドル札」にだけ言及しているのである。通貨の価値からいえば、「100米ドル」は日本円で1万円弱相当だ。だが、日常生活において頻繁に1万円札の行き交う日本においてとは異なり、米国や欧州で「100米ドル」や「100ユーロ」の紙幣はどちらかというと脇役であり、むしろより小額の紙幣こそが一般的なのである。したがって、本気で紙幣を入れ替えたいというのであれば、むしろこうした小額紙幣から順次行っていくべきなのであろうが、なぜかいきなり「100米ドル札」からなのだ。“素人眼”には全く気付かない点だが、マーケットの“猛者”の間ではこの奇異な事実が今、静かな波紋を呼んでいる。


このことが持つ「意味」を読み解くカギを私はかつて拙著『北朝鮮VS.アメリカ』(ちくま新書)の中で書いたことがある。――普段、見慣れているはずの米ドル札だが、実は100ドル札に限っていうと、その発行権限を米系情報工作機関も持っているのだと、欧州勢の通貨当局関係者たちは語る。ただし、プロから見れば分かるとおり「ほんの少しだけ」印がついており、そのことをあえて言えば「偽造」と称することもできるのだというのである。では誰がこうした「あまりにも精巧な偽100米ドル札」をもらい受けているのかというと、「各国で米系情報工作機関に協力する者たち、すなわち“エージェント”たち」なのだと欧州勢は説明する。拙著がこのような指摘をしたところ、「そんなはずは無い」といった反応が、日本の読者の方々の間で渦巻いた。しかし、あの時も述べたように繰り返し言おう。欧州勢のプロたちの間では、ここで記したことはもはや「常識」なのである。未だに「北朝鮮が精巧な偽米ドルを刷っている」などと豪語する御仁がいるが、本当にそうした離れ業を北朝鮮勢がこなせるのであれば、「その“錬金術”を使っていくらでも「米ドル」を刷り増せばよく、麻薬や大量破壊兵器などといった危険な物資を売りさばくことなど一切必要がない」という真っ当な反論に彼らは答えられるのだろうか。


一方、このタイミングで米国勢は、あえて「新100米ドル札」を公表したわけである。このことを、欧州勢の語る上記の“常識”と重ね合わせてみると、浮かびあがって来る「可能性」が一つあるのだ。それは、これまで対米協力を行ってきた外国人エージェントたちは、米系情報工作機関から与えられてきた「旧“偽”100米ドル札」を急いで使わなくてはならない立場に追い込められたのではないかということである。そしてまた、紙幣を変えるのと同時に、与える先もまた変更する可能性のあることも念頭に置いておかなければならない。つまり、米国勢はこの意味でも“世界システムの大転換”を企てているのだ。金融メルトダウンが「最終局面」をいよいよ迎えるのと表裏一体となって、これから起こることの本質がこの“大転換”なのかもしれない。

米国勢が狙うのは「日華の金塊」

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は、5月16日(日)に東京、5月29日(土)、30日(日)に大阪・名古屋でそれぞれ開催する「新刊記念講演会」(無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。


米系情報工作機関による、日本での展開動向を巡る「今」が公表されることはまずないが、私自身がインテリジェンス機関ルートで得た情報を総合すれば、概ね200人程度の米系工作員が日本で作戦行動を展開している。もちろん彼らはそれぞれの「チーム」の頂点に座しているのであって、自らが最前線で行動することはまずない。常識的に考えて1人の工作員あたり20名の日本人エージェントと接触しているということになると、200人×20人=4,000人ほどの「対米協力者」が日本社会の随所にいることとなる。そんな彼らが、恐らくはこれから起きる大転換の中で、かつてのボスであった「米国勢」に捨てられる時が日に日に近づいてきているのである。これを“潮目”と言わずに何と言おうか。


政界、官界、財界、そしてメディア界に学界と、幅広く配置されていた彼らは一様にさまよい始めることは間違いない。そしてその結果、日本社会は内部から大混乱へと陥っていくことも確実なのであって、それがまた日本のマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を混沌へと突き落としていく。


同じことは東アジアにある他の諸国についてもあてはまる。そしてその混乱は表向き、金融マーケットにおける「メルトダウン」の激化として現れることであろう。しかし、だからといってこれから生じることの本質を見失ってはならない。なぜならば、混乱をあえてこのように巻き起こし、その意味での“潮目”を米国勢が醸成するということは、必ずや日本勢、そして東アジア勢からそれによって奪うべく、狙っているものが何かあるに違いないからである。しかもそれは、2度にわたる原子爆弾の投下というむごたらしい攻撃を行っても、米国勢が奪うことのできなかったほどの規模・価値のものである可能性すらあるのだ。――米国勢がそこまでして奪おうとしているもの、それは一体何なのだろうか?


こうした問題状況を踏まえ、私は来る5月10日に上梓する拙著最新刊『狙われた日華の金塊』(小学館)の中で、米国勢が狙っているのは、日本勢と華僑・華人勢力が過去数百年間にわたって貯め込んできた金(ゴールド)を中心とする、大規模な“簿外資産”であると論じた次第である。いわばこの「日華の金塊」とでもいうべきものが、これから起きる金融メルトダウンの終決点において、私たちがついに目の当たりにするものなのである。このことについては上記に示した「新刊記念講演会」(無料、5月16日(日)東京、5月29日(土)大阪、30日(日)、名古屋で開催)にて詳述したいと思う。いずれにせよ、そうした光り輝く壮大なドラマからすれば、「ゴールドマンサックス提訴」や「新100米ドル札」などという既に明らかになった現実など、全くの“序章”に過ぎないのである。――そのことを胸に刻み込んだ者だけが、これからの「大転換」の向こう側で生じる“潮目”を透徹することができるということを、私たちは今こそ改めて想起しておくべきなのかもしれない。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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