『国際政治経済塾』
投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

人知れず地政学リスクが高まる日本マーケット

日本をめぐる「地政学リスク」は本当にないのか?

2001年9月11日の「同時多発テロ事件」を境にマーケットが決定的に変わった点を1つ挙げよ、と言われたら読者の皆さんは何を挙げるだろうか?


私なら「地政学リスク」を挙げる。この言葉、様々な文脈で使われているが、簡単にいうと、「ある国のマーケットを考えるにあたって、その国の地理的な意味での位置から考えると、どうしても逃れられないリスク」ということになるだろう。


中東の油田を抱えている国々がその典型だ。イラク、あるいはイランといった厄介者を隣国に抱えるこれらの国々は、とかく争いごとに巻き込まれそうになる。そのたびに「原油の供給量が少なくなるのではないか」との不安が飛び交い、原油が高騰していく。当然のことながら、油田は地理的に動かすことができないからである。


それでは日本についてはどうか。これまで何回かにわたって、北朝鮮が「弾道ミサイル」を日本に向けて発射したことがある。そのたびに日本についても地政学リスクが語られてきた経緯がある。しかし、それはあくまでも一過性のものであったというべきだろう。中東諸国のように、下手をすると戦火そのものが国土に広がるといったことは、これまでのところ無かったからだ。そのせいだろう、「地政学リスク」というとどこか遠くの異国のことのように聞こえてしまう。


だが、どうしてもネガティブな含みのあるこの「地政学リスク」は、冷静に考えると、むしろそれこそマネーが織り成す「世界の潮目」のサインなのではないかという疑念が浮かび上がってくる。「地政学リスク」が生ずるのは、その地域に何らかのお宝があるからであって、それをめぐって争いが生じているに違いないからだ。それではそのようにコントラリアン(マーケット分析で通常とは反対解釈を常にとる戦略家)からみた場合であっても、日本について本当に「地政学リスク」は見えないものだろうか。

日本をめぐって鞘当てする米国とロシア

この観点から見た時、大変興味深い「事件」がここにきて発生した。在日米軍として日本に駐留していた米国第7艦隊の空母「キティホーク」に代わって、日本に配備されることになっていた空母「ニミッツ」が、2月9日、西太平洋上でロシアの爆撃機・ツポレフ95に異常接近されたのである(2月11日付時事通信ほか)。これに対して米軍機がスクランブル発進して警告。ところがそれにもかかわらず空母の上空600メートルまでロシア機が接近したのだという。軍事的な目線でみるときわめて「異様」な出来事である。


おそらくここまでは通常の報道で広く知られた出来事であろう。その後、空母「ニミッツ」は無事に佐世保港に入港、配備が完了した。しかし、金融インテリジェンスの目でこの出来事をさらに掘り下げて調べていくと、非常に興味深い事実にぶつかる。


第7艦隊は作戦行動として通常3か月周期で航海してきたのであるが、昨年後半より2か月周期となっていた点に注目が集まっているという情報がある。周期が短くなれば当然、日本から遠くには行けなくなるため、第7艦隊、ひいては米海軍のターゲットは日本の近隣諸国である中国・北朝鮮・ロシアに絞られているのではないかという推測が広まっていたのである。今回のロシア爆撃機による異常接近によって、ロシア側も警戒心をあらわにしたわけで、この「推測」を裏付ける材料の1つといえる。


それではなぜ、米国は日本の近海でここまであからさまな鞘当てを演ずるのであろうか?

人知れず地政学リスクが高まる日本で生き残る方法とは?

その答えは、無関係そうにみえる「日本」、そして「日本マーケット」にあるというのが私の考えだ。米国が悪名高き対日年次改革要望書を通じ日本に「構造改革」という名の破壊ビジネスに対する協力を強いる中で、「郵政民営化」が行われつつあることはもはや自明の事実である。


その一方で、今や世界最大の産油国として、あり余る米ドル(外貨準備)を抱え、「国営ファンド」を通じた外国買いに奔走するロシアが、日本を狙ってきたのもまた事実であり、そのことを私は1月に上梓した『世界と日本経済の潮目 メディア情報から読み解くマネーの潮流』(ブックマン社)においても記した次第である。2月24日に名古屋で、3月8・9日に福岡・神戸で、3月22日には横浜で開催する無料学習セミナーでも、こうした「狙われる日本」をめぐる現状と、その中で日本の個人投資家が一体どのように動くべきかについてじっくりと語りたいと考えている。


米ドルのとめどもない低落の中にあって、米国が最も恐れているのが、中国と日本による「米国債および米ドルの投げ売り」である。その一方で、日本の空はどうなっているのかというと、最新鋭戦闘機(F-22)を米国はついに同盟国・日本に売ることはなく、さらにこれまでの主力戦闘機F-15もなぞの機体故障によって修理中なのだ。しかも国産の支援戦闘機F-2もこれまたなぞの事故で実戦配備からは外されている。そのため日本の空は「丸裸」なのであって、その気になれば近隣諸国はいつでも日本を空から攻め込むことができる状態がつづいている。


ここではまず、こうした一連の軍事的な出来事が、日本株マーケットが売られに売られるという状況と、なぜか同時に生じている点に注目しておきたいと思う。なぜなら、見方を変えれば「日本における地政学リスクの高まり」を米欧の越境する投資主体たちはしっかりと認識しており、そのために売りに入っているという見方もできなくはないからだ。


しかも、そんな日本マーケットが今年後半には復活することをあらかじめ察知している米国勢とロシア勢が昨年より盛んに工作を展開してきた気配がある。ところが今度はこれら両者の間で取り合いが生じており、日本人が知らないところで「日本マーケット」というパイの奪い合いがついには軍事的な側面でもあらわになりつつあるという分析はあながち否定できない。


「日本長期経済低迷論」を叫んでやまない自称エコノミストたちに騙されることなく、砂糖にむらがるアリのように日本にかじりついてきている米国、そしてロシアの各勢力をしっかりと見据えること。これこそが、明日の日本を担う個人投資家にとって必要な「情報リテラシー」をめぐる最新のレッスンなのかもしれない。

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筆者プロフィール

名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表
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