『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

「米国が社会主義化する」と慌てふためく大手メディア

慌てて舵を切る日本の大手メディア

先日、日本の某大手テレビ局からVTR出演の依頼があった。担当の広報PR嬢曰く、「米国の対日年次改革要望書についてお聞きしたい」とのこと。インタビューのために1時間ほど時間を割けないかということらしい。これを聞いて、私にはピンと来た。「彼ら、いよいよ焦ってきたな」と。


ご存知のとおり、そもそもこの「対日年次改革要望書」なるものが問題とされるべきだったのは、郵政民営化の議論が華やかかりし2005年であったはずなのだ。ところが、テレビ、新聞、雑誌を問わず、大手メディアは当時、この問題について、完全に“黙殺”した。その結果、郵政民営化を唱えるコイズミ一派が地滑り的勝利を遂げたのである。


それが何故、今になって「対日年次改革要望書を取り上げたい」というのか。社内の広報PR嬢からの説明を聞くにつれ、彼らの“策略”がすぐさま私の脳裏に浮かんできた。それはこういうことだ。


まず、「対日年次改革要望書だなんて、米国から日本への命令書を認めるわけにはいかない」と叫ぶ“専門家”を登場させる。


その次に、「こういった指摘がありますが…」と外務省関係者に“直アテ”し、「いやいや、とんでもない。これは日本の国益のためでもありますよ」とのコメントを得る。


その後、私にマイクを向け「実際のところ、どうなんですか?」と質問し、私からは「実際には、米国の言いなりですよ。情けない」というコメントを取る。そこでスタジオへ画面は移り、“コメンテーター”のお歴々が「あーでもない、こーでもない」とやる。


最後に司会が言う。「まぁ、こういうものの存在が隠されてきたのは問題ですが、日本も直すべきところは直したほうが良いですよね」。そして、大団円。


余りにも筋書きが明らかだったので、私は出演を断った。そもそも私が3年半前に外務省を自主退職し、独り立ちした企業人としての言論を展開しているのは、かつての親元と喧嘩するためではない。もっと大きな存在が日本を覆っており、その呪縛から日本人の1人1人が解放されるよう、活動を展開したいと思ったからだ。


これに対し、この「大きな存在」、すなわち米国は、そうした勢力を日本国内でぶつかり合わせ、内ゲバにすることで不穏なエネルギーを発散させようとする。そうすれば、米国の方へとそのエネルギーは向かってこないからである。私は、絶対に彼らのこうした手には乗らないようにしている。


「先読み」をテーマとするこの番組は、正に想定したとおりの構成だった。見ると、外務省の代表としてコメントを取られていたのは、かつて私のことを誰よりも守ってくれた上司の1人だった。

「彼らのいつもの手」に乗らずに良かったと胸をなでおろしたことは言うまでもない。

“社会主義化”する米国?

最近、奇妙なことが日本の大手メディアについて連続して生じている。その1つが、こうした「反米論」のあからさまな展開だ。画面に出てくるのはいつも決まってブッシュ大統領、そして共和党。「ブッシュ大統領、そして小泉総理が世の中を悪くしました」という論調が、そこでは壊れたテープレコーダーのように繰り返されている。


こうした光景を見て、読者の方々は一体どう思われるだろうか?私からすれば、彼ら日本の大手メディアがやりたいことは1つである。来年から始まる米国の新政権が「民主党」になるのを控えて、一生懸命、そのご機嫌を取ろうとしているのだ。「ブッシュ政権が全て悪い」「米国は刷新が必要だ」という論調を引っ提げて。これ見よがしに新自由主義批判をブッシュ大統領の画像と共に垂れ流すのは、正にその典型だろう。


しかし、よくよく見ると米国を巡る「真実」は全く異なることに気づくのである。この観点から、最近、大変気になる報道があった。「オバマ大統領になった暁には、米国は自らの経済を欧州型に切り替えるであろう。そうなれば、もはやかつてのような経済成長は望めない」というインタビュー記事である(10月27日付独版フィナンシャル・タイムズ参照)。


インタビューに答えているのは、ケネス・ロゴフ元IMF(国際通貨基金)首席アナリスト。マケイン大統領候補(共和党)のアドバイザーであった人物である。彼によれば、オバマ新政権では、欧州モデルにならって、米政府は社会・経済の至るところで“介入”を始めるのだという。その結果、社会・経済は勢いが殺がれ、弱くなっていくというのである。


最近、この手の論調もまた世界のメディアにおいては非常に強く流れされ始めている。日本の大手メディアでは、新政権に対する恐怖からか、妙に追従の報道が多いが、世界ではむしろ「アメリカ社会主義合衆国(U.S.S.A.)」が危惧されるとの声すら喧伝され始めているのである。


恐らく、日本の大手メディアはある時から、全く同じ論調を流し始めるに違いない。だから、彼らに私たちはもはや騙されてはならないのである。そもそも、ブッシュ政権が進めた新自由主義政策なるものの根幹にある構造改革という名の破壊ビジネスを、大車輪で開始したのは、他ならぬ民主党のクリントン政権なのである。「共和と民主」などという演出された茶番を超えて、本当の米国を見据えなければ、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を巡る「潮目」を読み取ることは出来ないのである。

これから何が起きるのか?

この点も含め、今後、激動が想定されるマーケットとそれを取り巻く国内外情勢について私は、11月8・9日に東京、仙台で、そして11月29・30日に横浜、さいたま、東京でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある向きは是非ともお集まりいただければ幸いである。


ちなみに米国では来年2月にテレビのアナログ放送が完全に終了し、デジタル化へ一気に転換される予定である。ところがこれを控え、「デジタル化への転換によって、実は多くの人がテレビを見なくなるだけなのではないか」という懸念がますます強まっているのである。ある調査によれば、視聴者の2割がテレビを見なくなるという結果すら出ているのだという。テレビ局のみならず、広告代理店など、これまで大手メディア業界を構成してきた全ての関係者にとって激震となることは間違いない。


日本でも事情は全く同じである。2011年には地上波デジタル放送への全面転換がはかられることになっている。そうなった暁には、一体どうなるかは明らかなのだ。


生き残りに必死な日本の大手メディアたち。その姿は余りにも哀れではある。何せ、自分たちが垂れ流す、つくられた「政治討論番組」で政治を動かし、日本を動かしてきたという自負があるのであるからだ。しかし、これからは全くそうはいかない。もはや、米国に出来すぎたお追従をしたところで、海の向こうが振り返ることはないのである。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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