『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

マーケットで「アフリカ」は買いか?売りか?

アフリカを舞台にした欧米勢の“ビジネス”

「アフリカ」と聞いて、まず何をイメージされるだろうか。「貧困」「疫病」「紛争」といった言葉ばかりではないだろうか。


国連貿易開発会議(UNCTAD)では、世界の49の国を“最貧国”に指定しているが、実にその中の33ヶ国がアフリカ諸国なのである。またサハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ・アフリカ)における HIV 感染者及び AIDS 患者の数は、全世界の患者数の60%近くを占めるという。確かにアフリカは、引き続き過酷な現実に置かれている。


一方、アフリカには金(ゴールド)、ダイヤ、レアメタル、そして石油といった豊富な資源が眠っているのも事実だ。昔から欧州勢がこの地を植民地にし、領土の取り合いを行ってきたのもそのためだ。このような資源の搾取に加え、安価な労働力を確保するために、アフリカ人たちに対して行われた仕打ちは凄惨なものであったと言われている。これに対し、最近ではそのような過去を“反省”し、「アフリカの最貧国に発展をもたらそう」と欧州勢が主導で国際機関や民間企業を動かし、アフリカに“救いの手”を差し伸べているポーズを見せつけているのである。そして“援助”という名の下で、アフリカ経済に食い込み続けている。


しかし、これを本当に純粋な“援助”と見なしていいのか。欧米勢が動く時、経済的な目的を忘れるようなことがあるはずもない。例えば、米欧系“越境する投資主体”たちが接近する相手の1つにアフリカの産金国があるが、実質的にみると、欧米勢がいわばこれらの産金国をダシにして、日本などから資金を調達して儲ける次のような仕組みであることに気付くべきだろう。


1)アフリカの産金国が金発掘のために米欧系“越境する投資主体”たちから巨額の借金をする。ただしこの時には目先の金価格が高騰しているので返済できるように見える。


2)ところがその後、思いの外に金相場が急落し、借金を返済出来なくなったアフリカの産金国が途方に暮れてしまう。


3)そこで、重債務国となったこれら産金国に対する救済の必要性を米欧勢が喧伝する。そして最終的に「勘定書」を回されるのは日本。気前よく対アフリカ協力資金を出す日本のカネはもちろん、米欧系“越境する投資主体”たちの懐に入る。


去る11月4日の米国大統領選挙では民主党のバラク・オバマ候補が初の黒人大統領として選出されたのは御存知のとおりである。オバマ次期大統領の父親はハーバード大学大学院で博士号を取得した最初のケニア人だ。そうしたオバマ次期大統領の選出をアフリカ勢は喜び、またオバマ新大統領もアフリカ政策に力を入れることを公言している。今後、アフリカは米国の外交・軍事・経済政策の中で更に重要な位置を占めていくものと考えられるわけであり、そこで米国勢がどういったビジネス・モデルを展開し始めるのか、大変気になるところなのである。

アフリカの市場化は進んでいるのか?

マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢をめぐる「潮目」をウォッチする中、この関連で気になる報道が1つあった。環境規制が高まる中でもアフリカ諸国が経済を「持続的に」発展させられるよう、EUがアフリカ諸国に対して再生可能エネルギー技術の供与及び基金設立の申し出をするのだという(11月7日付米ブルームバーグ参照)。


EUに限らず、これまでも欧州各国はアフリカにおける代替エネルギー政策に積極的に関与する意向を示してきた。例えば、先ほどのケースとは別に、EUは去る10月に、中国と協調してアフリカ政策を進めるとの内容の白書を作成した。そこでもアフリカ大陸への代替エネルギーの普及が主な共通のポイントとなっている。また、フランスのサルコジ大統領が提唱し、今年7月に発足した「地中海機構」には、エジプト、アルジェリア、モロッコといった北アフリカ勢が参加している。そこでも域内における代替エネルギーの普及を目標として掲げているのだ。また、オランダ政府はこれまで再生可能エネルギー計画の一環として、南アフリカでの風力発電施設の建設計画を進行させてきた実績を持っている。


このように欧州勢がアフリカを舞台に再生可能エネルギー計画を大いに推し進めているのは何故だろうか?1つには、アフリカにおける従来型のビジネス・モデル、つまり“越境する投資主体”たちがアフリカに援助し、その代金を実質的には他国(特に日本)からのODAで賄うというモデルを変える可能性がある。なぜならば、今後広いアフリカで再生可能エネルギー・ビジネスが加速すれば、「環境ビジネス」を通じてアフリカ自身の“市場化”も進んでいくと考えられるからだ。


他方で、最近になって目立って語られるようになってきた感があるのが「ケニアの市場化」だ。アフリカの中でもケニアが特徴的なのは、「民営化」「上場」といった“破壊ビジネス”という名の構造改革が進行している点である。米欧勢、そして日本においては、むしろ構造改革から規制へ、「破壊」から「創造」へとフェーズが移っているので、正にこれは一周遅れの動きというべきかもしれない。


そのケニアでは、ケニア商業銀行(Kenya Commercial Bank)がウガンダ証券取引所への上場を開始したという。同行は既にケニア、ウガンダ、タンザニア、南スーダンなどに150の支店を持つ他、来年にはブルンジにも進出する予定である。更に、この銀行における資本構成の98.2%を東アフリカの投資家が占めていることも、アフリカ市場化の観点からは見逃せないだろう。その同行が今年の第3四半期の利益成長率を64%としていることは見逃すことのできない事実である。


また、ケニア商業銀行の支店が広がっているケニア、タンザニア、ウガンダ、ブルンジ及びルワンダは、「東アフリカ共同体(East African Community)」という経済共同体を設立している。日本の大手メディアではほとんど取り上げられていないが、この東アフリカ共同体は、既に関税同盟もつくっている。域内における貿易に際して関税障壁を次第に無くす他、将来的には「東アフリカ連邦」へと統合する計画すらあるのだという。こうしたイニシアティブを取ってきたのは市場化が最も進んでいるケニアである。これからはこうしたケニアを中心とした地域統合を中心に東アフリカが発展していくというシナリオも見えて来ている。


以上を踏まえれば、「環境ビジネス」「ケニア市場化」そして「地域統合」といった形で、アフリカでマーケットが拡大しつつある、すなわち市場化が進みつつあることがお分かり頂けるだろう。当然、その裏には、アフリカの貧困をいわば“利用”することで利益を得てきた米欧系“越境する投資主体”たちの陰が見え隠れするのである。

“貧困”という役割を受け継ぐ場所とは?

アフリカとそれを取り巻く各国の動きを含め、世界におけるこのような最新の「潮目」について、私は12月6・7日に大阪、名古屋で、そして20・21日に東京・横浜でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話したいと考えている。

アフリカの発展には様々な勢力の利益が絡んでいる。そして、そこではこれまで「貧困のアフリカへは支援を!」とアピールしつつ、特に日本ODAからの支援より利益を得るという「貧困ビジネス」とも言うべきモデルが確立してきたのだ。しかし、市場化が進むアフリカでは、先程見たとおり、この「貧困ビジネス」のモデルからのシフトが進みつつある。それでは今後、アフリカで「貧困ビジネス」が通用しなくなった場合、“越境する投資主体”が狙う次なるターゲットはどこになるのか。


国連貿易開発会議(UNCTAD)の発表している世界の最貧国49ヶ国のうち、33ヶ国がアフリカ、そして次に多いのがユーラシアの10ヶ国である。その中にはアフガニスタンやバングラデシュといった国々が入っている。特にアフガニスタンは対テロ戦争という名目で米軍が2001年から居座っている。米国勢は撤退するどころか更に増派する意向すら示している。他方、バングラデシュといえば、最近は隣のミャンマーと資源を巡って領土争いをしている。これらの国々が、今後起こり得る戦乱によって、更に貧国へと姿を変えていくのだとすると、アフリカで適用していた「貧困ビジネス」を掲げ、“越境する投資主体”たちが押し寄せてくるかもしれないのである。


このような来るべき新たな「潮目」は国内の大手メディアによる報道ばかりを追っていたのでは見えてこないのである。それでは私たち日本の個人投資家・ビジネスマンたちはいかに情報を収集し、どのように「潮目」を読み取ればいいのか。それについては来年1月に開催する「新刊記念講演会」においてお話する予定である。志高い読者の皆様にはぜひお越しいただきたい。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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