『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

エイズに代わる“不治の病”がマネーの潮目を作り出す?

金融システムだけではない世界システムの大転換

米国を中心とした金融メルトダウンが進み、毎日、大手メディアが騒いでいる。その様な中、11月14・15日にワシントンで行われたG20を、麻生太郎総理は「歴史的会合だったと後世言われるだろう」と評価したが、多くの各国メディアは「何ら具体的な決定はなされなかった」と失望感を露わにしている。金融危機の救世主として期待されていた経済新興国の国営ファンド(SWF)も手を差し伸べることには慎重であり、未だに金融危機の出口は見えないままであるかの様にも見える。


一方、金融メルトダウンは金融セクター以外にも、決定的な影響を及ぼし始めている。その例が代替エネルギーだ。実際、金融システムの変更は、常に基幹エネルギーの変更を伴ってきたというのが、これまでの歴史的事実である。それでは、今回の金融危機で“終焉”を迎えるのは一体どのエネルギーなのか。恐らくは、つい数ヶ月前まで価格高騰の止まらなかった石油であろう。だからこそ、代替エネルギーに関する議論が活発に行われているというわけなのだ。そして、石油の“終焉”は、やがてそれを燃料とする従来型の自動車セクターの“終焉”をもたらし、更にそれは自動車セクターが出してきた巨額な広告費で運営されてきた広告代理店、そして大手メディアたちをもぐらつかせることとなろう。


しかしながら忘れてはならないのは、このような一連の「世界システム大転換」に乗じて、“ひと稼ぎ”しようとする輩たちの存在である。日本はこれから寒い冬の季節に突入していく。冬に毎年流行るものといえば、インフルエンザだ。そのような中、これまで新型インフルエンザの脅威については、メディアでも大々的に報じられており、ワクチンや対抗薬の備蓄が進んでいるのであって、これにより医療業界が大きく動いていることは言うまでもない。しかし、実はこうした良く知られたストーリーを超えて、今、マーケットを揺さぶる動きが、「ヘルスケア」をめぐって地球の裏側では生じているのである。

エイズが不治の病ではなくなることが持つ“意味”

マーケットとそれを取り巻く国内外の情勢をめぐる「潮目」をウォッチする中、この関連で気になる報道が1つあった。「HIV 患者の免疫細胞を回復できる可能性を科学者らが発見」というものだ(11月11日付、米メディカル・ニュース・トゥデイ参照)。これによれば、カナダと米国の科学者が HIV ウィルスに侵されて“弱り果てた”免疫細胞を回復させる方法を発見したのだという。この発見により、将来的には HIV に感染した人間の免疫細胞がウィルスに完全に破壊されないよう、復元させることが可能になるかもしれないというのだから驚きだ。


一方、この記事とほぼ同時期にスイスのジュネーブ大学において、HIV 感染から身を守ることのできる新しい物質が発見されたことが報じられているのも、非常に興味深い事実である(11日付独ハンデルスブラット参照)。


HIV/AIDS は、「後天性免疫不全症候群」と呼ばれる病気で、ヒト免疫不全ウィルスが人間の免疫細胞に感染し、その免疫細胞を破壊することによって、時間を経ったのちに免疫不全を引き起こすという病気である。1981年の症例発表の後、わずか10年足らずで世界中で100万人以上が発症し、現在の HIV 感染者は全世界で5,000万人に達するといわれている。日本でも患者数は増加傾向にあると言われており、2007年には感染者数が9,000人を超えたという。その HIV をめぐっては、未だ根治できる治療薬がないことが最大の問題点であった。


以上を踏まえれば、今回の2つの報道がどれだけ大きな意味を持つものかがお分かりいただけるだろう。しかし、日本の大手メディアはこうした情報を一切報じてきてはいないのだ。


更に言うと、HIV/AIDS をめぐるこうした急展開は、マーケットにも確実に大きな影響を及ぼすに違いない。例えば HIV 感染者が最も多いとされてきたアフリカに対しては、米欧勢から“無償”で薬品供与が行われる一方、その「代金」は、実態として日本のODAから支払われ、いわばその「ツケ」を立て替えるというビジネス・モデルが米国主導で行われてきたのである。ところが、その HIV/AIDS が「治る」ことになったというのである。これによって大量のマネーが別の方向へと動き始め、新たな「潮目」を生み出すことに間違いない。

HIV/AIDS こそ金融サミットにおける隠された議題だった?

ヘルスケア・セクターを含め、このような世界における最新の「潮目」について、私は11月29・30日に横浜、さいたま、東京で、そして12月6・7日に大阪、名古屋でそれぞれ開催するIISIAスタート・セミナー(完全無料)で詳しくお話したいと考えている。


ちなみに、冒頭でも触れた「金融サミット」に米国代表団の主要メンバーとしてオルブライト元国務長官とジム・リーチ元連邦下院議員(共和党)も参加していたことは、読者の皆様も御存知のとおりである。しかし、なぜこの2人が選ばれたのか?


オルブライト元国務長官は2001年に設立したオルブライト・グループを通じ、アフリカの政治的リーダーに対し、HIV/AIDS に関する啓蒙活動を行ってきたという実績を持つ人物である。他方、リーチ元連邦下院議員は、議員時代にAIDS 基金を創設した人物である。その2人が米国代表団のコアとして出席した今回の「金融サミット」における主要な議題は、新興国支援のためのIMF強化であった。日本もそのお題目の下、10兆円の拠出を宣言したわけだが、仮にIMFを通じた資金が、巡り巡って HIV/AIDS に苦しむ途上国へと回される形になれば、これら2人が成した仕事は正に「good job」ということになるのであろう。


来る2009年1月にはオバマ次期大統領の新政権が誕生する。私はオバマ新大統領が就任早々「デフォルト(国家債務不履行)宣言」を行う可能性が高いと分析している。もし「デフォルト宣言」が行われるようなことになれば、米国国内は混乱となり、いわば「何でもあり」の状況になるだろう。そうした社会的大動乱の中で、 HIV/AIDS に代わる新たな「不治の病」を広め、マーケットで新たな「潮目」を起こす勢力が本当にいないのか?私たち日本の個人投資家・ビジネスマンの注意すべきポイントはそこにある。


そのような中、これまで「受け身」だった私たち日本人は、今後どのように考え、行動していかなければならないのか。それに関するIISIAなりの考えは来年1月に開催する「新刊記念講演会」においてお話しする予定である。ご関心を持たれた皆様には、ぜひご参加いただきたい。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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