『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

オバマを再び追い詰めているのは誰か?

「ヒラリー・クリントン大統領」の芽はもう無い?

米国勢の歴代大統領の中で、とりわけ尊敬されているのがアブラハム・リンカーンだ。その理由は様々であるが、米国の内政史という観点から見ると、リンカーンが評価されている「最大の理由」は大統領選挙において“敵対”していた相手方候補者たちを閣僚に選任し、彼らの能力を存分に引き出した点がしばしば注目される。


なぜこのようなことからこのコラムを書き始めたのかというと、「同じことが現在のオバマ米大統領についてもあてはまる」との評価がしばしばなされてきたからだ。2008年を通じて行われた米大統領選挙。この中で激戦に次ぐ激戦を繰り広げてきたのが同大統領とヒラリー・クリントン候補(当時)であった。ヒラリー・クリントン候補はこの時の激しい選挙戦を戦うために用いた借金を未だ完全に“返済”出来ていないことで依然、知られているほどだ。しかし、結果はまず民主党内でオバマ候補(当時)が勝利。ヒラリー・クリントン陣営がその直後、くすぶっていなかったわけではないが、しばらくするとそれも立ち消えになった。こうして、ヒラリー・クリントン候補は歴史の藻屑(もくず)として消えさる運命にある、かのように思えた。


しかしそうしたヒラリー・クリトン女史を、今度は「国務長官」という要職に就けたのがオバマ大統領だったのである。その理由もまた様々であったとはいえ、結果として見ると、一面では「度量の深さ」をオバマ大統領が世論に対してアピールする結果となった。もちろん、今後オバマ大統領に「不測の事態」が生じ、バイデン副大統領ですら職務執行が不能であるといった緊急事態が発生するならば、「ヒラリー・クリントン大統領」が例外規定により誕生する可能性が無いわけではない。だが、基本的にこのような形で“取り込まれた”以上、時間が経てば経つほど、ヒラリー・クリントン国務長官としてオバマ大統領との距離感をとることは難しくなってくる。そして今年(2010年)1月頃、私の耳にも海の向こう側から聞こえてきたのである。――「オバマ大統領に2期8年勤め上げさせることで、米国勢のエスタブリッシュメント層は概ね合意した」もはや、“ヒラリー・クリントン大統領”誕生は夢として消えたかのように見えた。

再び追い詰められ始めたオバマ大統領

こうした観点でマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。


米ハワイ州で2008年の大統領選挙に際し、「選挙管理委員会」の一員を務めていた人物が突如、「オバマ大統領がハワイ州で誕生したという“出生証明書”は存在しなかった」旨、間もなく裁判所で証言することが公表されたというのである(6月13日付米国「WND」参照)。実はこの問題、すなわち米大統領職に就く大前提としての「米国籍保有者」であるという条件をオバマ大統領が満たしていないのではないかという問題は、大統領選が始まる前から噂されていた。しかし結果として、オバマ陣営は「出生証明書」を提示。これによって沙汰やみになったのである。ところが大統領選挙そのものを公的に監視する立場の人間が、今度は裁判所における「証言」という法的な拘束力を持った形で暴露しようというのである。「果たしてオバマは米国人なのか」――日本勢の伝統的な大手メディアは一切黙殺したままだが、全世界の関心が再びこの問題にそそがれ始めている。


この関連で大変気になることがある。それはこの人物が、ヒラリー・クリントン候補(当時)の支持者として知られていた人物であるということだ。もちろん政治的な発言ということであれば「また例によってポジション・トークか」ということになろう。しかし、今回はそうではない。なぜならば裁判所における「証言」という形をとる予定だからだ。仮にそこで虚偽を述べるならば、当然、それは「偽証罪」に問われてしまう。確信犯にしても、もはや決着がついた話をここまで蒸し返すような愚行を行う人物はそうそういないであろう。ということは、考えられるのはただ一つ、すなわち「仮に“偽証”とされたとしても、彼の人生の行く末を見守ってくれる大物がバックにいるからこその蛮行なのではないか」ということである。――ここに再び、ヒラリー・クリントン国務長官の例によって得意げな笑みが見え隠れし始めるのだ。


これから何が起きるのか?

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は7月3日(土)に東京、23日(金)、24日(土)、25日(日)にそれぞれ神戸、大阪、名古屋にて開催する「IISIAスクール」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。


降って湧いたようにして始まりつつある、古くて新しい話としての「オバマ大統領の非米国人疑惑」。その今後の展開から目が離せないことは言うまでもないが、それにしても気になるのはイラン問題、あるいは北朝鮮問題も同じく降って湧いたようにしてここに来て「沸点」を新たに迎えつつあるという事実である。これらは外交案件であるため、当然、その所管である国務長官=ヒラリー・クリントン女史が連日の様に全世界のテレビで映し出されるようになっている。その一方でオバマ大統領といえば、メキシコ湾で英系BP社が発生させた原油流出事故という、ある意味、完全にドメスティックな案件の処理に終われ、なかなか自らの快活さをアピールできず苦しんでいる感がある。


対照的な両者を取り巻く国際環境が次々に激変していく中、結局のところ、本当に「ヒラリー・クリントン大統領」が誕生することはないのか。――その“可能性”が極めて乏しくとも実現してしまう悲劇、あるいはそれが「未遂」になるにせよ途中まで駒が進められた時のあり得べき惨劇を、私たちはあらかじめ念頭においておくべき時が徐々に到来しつつある。このように思うのは、果たして私だけだろうか。世界の“潮目”を巡り、緊張する日々が続く。


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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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