『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

密かに進む米朝接近と逆回転し始めたオバマ

日本勢・中国勢とあからさまに衝突する米国勢

今年(2010年)に入り、米国勢による日本勢・中国勢との“衝突”が日に日に激しくなりつつある。日本では「期待の星」であるかのごとく描かれてきた、オバマ大統領の下での急展開なのでやや違和感を拭えない読者も数多くいるのではないかと思う。


中国勢との“衝突”に際し、表向きの焦点となっているのがいわゆる「グーグル検閲問題」だ。ヒラリー・クリントン国務長官が声明まで発表し、“インターネットの自由は民主主義の維持につながる”と豪語してやまない米国勢に対し、「バブルを米国勢によって突き崩された日本勢の二の舞は決してしない」と、中国勢も反撃に余念がない。オバマ大統領は昨年(2009年)11月に中国を公式訪問したばかりである。それがたかだか2カ月ほどで友好関係の崩壊となっているのだからあきれてしまう。


他方、日本勢との“衝突”はある意味、より深刻だ。今年(2010年)1月に入り、米国勢は突如として日本の“越境する自動車産業の雄”を名指しでバッシングし始めた。その勢いはすさまじく、米連邦議会では2つの委員会が特別調査を行い、しかも制裁のための課徴金まで課すといった有様だ。日本の大手メディアは全く報じていないが、この間、ワシントンにある日本大使館前では、米国勢(その中でも労働組合の大物たち)がこぞって参集し、「反トヨタ」の怪気炎を上げていると聞く。「オバマ演説で英語を学ぼう」などと言っていた一部の日本勢がいかに呑気(のんき)であったのか、がこれでお分かり頂けるであろう。そう、米国勢が狙っているのはただ一つ、黄金の国・ジパング=日本の“マーケット”、そしてそこにある卓越した技術力と莫大な富なのである。

密かに進む米朝接近

この様な視点からマーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。


このように米国勢を中心に緊張が高まっている東アジアの中で、北朝鮮勢が突如、米国勢に対して「朝鮮戦争中の行方不明兵士の捜索許可」を出したというのである。米太平洋司令部最高幹部自身がそうした申し出のあったことを認めており、実際、北朝鮮側と協議を開始するのだという(1月26日付米国:ホノルル・アドヴァタイザー参照)。そう、米朝はこのタイミングで明らかに“接近”しているのである。


これで、賢明なる読者の方々にはお分かり頂けたのではないかと思う。米国勢は明らかに一つの明確な戦略を現在遂行中なのである。すなわち、こういうことだ。――米国勢にとっては北朝鮮勢の持つ各種の経済的利権は垂涎(すいぜん)の的である。したがってすぐにでも直接交渉で、これを奪いたいところなのであるが、どうしても立ちはだかるライバルがいる。一つは中国勢、そしてもう一つが日本勢である。他方で、米国勢は日本勢と中国勢からもその莫大な富をそれぞれ奪いたいと考えている。


そこで一計を案じたのである。まず中国勢との関係では、彼らにとって“弁慶の泣き所”である「政治的自由」に直結するインターネット検閲の問題を強調する。中国勢がこれを忌避しようと躍起になればなるほど、値をつり上げていき、最後は多額の「米国債」を購入させる。他方、日本勢との関係ではその経済の根幹にある自動車産業最大手をあからさまに叩きのめす。当然、日本の財界はどよめくので、同じく値をつり上げていき、最後も同じく多額の「米国債」を購入させる。「米国債」を買えば非難を緩めてやるというわけなのだ。


そしてそうした大立ち回りを演じている間、日中両国は北朝鮮問題がいかに重要であったとしても、身動きをなかなかとれない状況に置かれることになる。その限りにおいて、米国勢は明らかにフリーハンドで、対北朝鮮交渉に臨むことが出来るのだ。だが、万一、そうした実態に気づかれてしまっては困るので、「米国勢にのみ直接関与する人道問題だ。他国は介入しないでほしい」と絶対的に言える問題を、しかも他国が介入出来ない軍部ルートにおいて取り上げる形をとりつつ、実質としての米朝交渉を継続するというわけなのである。その限りにおいて、今こそ考えなければならないのは「米朝接近」なのだ。

逆向きに舵を切り始めたオバマが巻き起こす次なる“潮目”とは?

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は2月(2月)20日に福岡で、21日に広島でそれぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。


対北朝鮮政策については、手も足も出ない感のある鳩山由紀夫政権だが、そもそも昨年(2009年)8月末の衆院選挙が行われる直前から、現在は渦中の人である小沢一郎・民主党幹事長が党内に対し「米朝が近々接近した際に日本がとるべき対北朝鮮交渉ルートを探れ」と指示を出していたとの非公開情報がある。本来であれば正に“その時”がまもなくやってくるはずなのであるが、当の司令塔であるべき小沢一郎幹事長がご案内のとおりの「厳しい状況」に引き続き置かれてしまっているのである。そのために「手も足も出ない」状況にあるのが日本勢というべきだろう。


こうなってみてから思うことが一つある。「オバマ率いる米国勢は決して“死んで”などいない」ということだ。就任2年目にして早々にマサチューセッツ州の連邦議会上院補選で“瀕死のパンチ”を食らった後、これまで掲げてきた政策を続々と変更してきたオバマ大統領。「ボラティリティー(変動性)」の維持こそが、マーケットで収益を上げ続ける最高の手段だが、正にそのための“道化師役”に収まりつつある。私たち=日本の個人投資家・ビジネスマンとしても、予断を排して彼の動きとそれが巻き起こす本当の“潮目”の予兆を細かくウォッチしていく必要性がますます高まってきているようだ。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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狙われた日華の金塊

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