『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

地球温暖化という壮大な虚構

アル・ゴアという道化師

2008年11月中旬、アル・ゴア元副大統領が訪日した。その前年に「ノーベル平和賞」を受賞したことを契機に日本側が招請したものであったが、縁あって、とあるクライアント経由で来日記念講演会への入場チケットを入手することができた。もっとも、こちらは米国勢との関係では色々とある身である。そこで
弊研究所調査部の研究員に代理出席してもらうことにした。


そして講演会の翌日。やや上気した感のある表情で、報告に来た研究員女史の言った言葉が今でも忘れられない。「驚きましたよ、実に。ゴアさん、日本語のパワーポイント資料で全く分からないはずなのに、ぴったり画面とあった話を英語でしてくれるのですよ。こんなプレゼンテーション、後にも先にも見たことがありません」。


アル・ゴア元副大統領たるもの、日本語でスピーチなどするわけがない。しかし、それにしても完璧なまでに行った英語のスピーチで語られたのは、とにかく「温暖化は怖い。温暖化は恐怖だ。温暖化は今から備えないと大変なことになる」というメッセージであったのだという。「ゴアさん、相当練習したんとちゃいますかね?」と関西弁で語る研究員女史の言葉も忘れられない。


「フリーダム・オブ・スピーチ(発話の自由)」が米国合衆国憲法上、基本的人権として定められているにもかかわらず、しかも「副大統領」という要職を務めたにもかかわらず、なぜあたかもシナリオどおりに演ずる俳優のような振る舞いをアル・ゴアがしたのか。――有り得べき答えはただ一つ。“もっと偉い人”からそうするように命じられ、かつそのようなものとしてふるまうことで然るべき報酬を得ているからであろう。どんな滑稽(こっけい)な役割であっても、これを演じなければならないのが役者だ。そう、それがたとえ「道化師」の役割であったとしても、だ。

もはや米国民ですら見放した地球温暖化という虚構

「ゴア元副大統領によるあの巧みな振る舞いは一体何を意味していたのか」――そのように考えつつ、マーケットとそれを取り巻く国内外情勢を東京・国立市にある我が研究所でウォッチしていると、一つの気になる情報が飛び込んできた。イェール大学等の有名研究機関が最近行った調査によると、地球温暖化という「問題」にそもそも関心があると答えた米国民は、実に全体の50パーセントに過ぎなかったというのである。しかもこの数字は前回調査時よりも、13パーセント少ないのだという(9日付米国テラ・デイリー参照)。またより衝撃的なのが、そもそも地球温暖化が“人為的”な現象であると答えた人物の数も極端に減っているという「事実」である。


つまりはこういうことだ。米国民にとって、もはや地球温暖化は「問題」ではなくなりつつあるのだ。それもそのはず、“温暖化”といいつつ、この2月になって米国東部地域を襲ったのは歴史上稀に見る「豪雪」であった。“温暖化”していれば、本来あり得ないと考えるのも当然だろう。しかし現実に雪、また雪という毎日が続く中、ワシントンでは政治が事実上マヒするという異常事態すら発生している。


去る1月27日にオバマ米大統領は一般教書演説を実施。その中で「排出権取引」について言及した上で、これを推進する旨述べたという。しかし、こうした状況に鑑(かんが)みれば「何を今更」といわざるを得ないだろう。アル・ゴア元副大統領と同じく“道化師”を演じているのかもしれないが、そのことを米国民らは徐々に気づき始めているのである。ここに「理性の狡知(かんち)」が再び垣間見えている。



次はどんな虚構が待っているのか?

この点も含め、今後、激動が想定される“マーケットとそれを取り巻く国内外情勢”と、その中で日本マーケットを取り囲む米国勢が密かに描き、着々と実現してきている戦略シナリオについて私は今月(2月)20日に福岡で、3月7日に大宮でそれぞれ開催する「IISIAスタート・セミナー」で詳しくお話できればと考えている。ご関心のある方は是非ともお集まりいただければ幸いである。

実に気になるのは、これまで要領よく「道化師」を務めてきたアル・ゴア元副大統領、ひいてはその「上司」であったビル・クリントン元大統領のことだ。「役割」を適時的確に演じている間はそれなりの待遇を約束するが、用済みとなれば一気に切り捨てるのが米欧勢のエスタブリッシュメントである。きっと彼らの身にもそろそろ何かが起きるのではないかと思っていた矢先、12日朝(日本時間)、ビル・クリントン元大統領が「胸が痛いので緊急入院した」との情報が飛び込んできた。確かに“何か”が動きつつある。

さらに気になって仕方がないのが、こうした米国勢におけるこれまでの“道化師”役とあうんの呼吸で日本勢における“道化師”役をつとめてきた人物たちの行く末である。既に大きな“潮目”が時々見え始めてはいるが、決定的な段階が訪れているわけではない。果たしてそうした「真実の時」はこの春なのか、夏なのか。そしてまた「その次」には一体どんなビジネス・モデルのために、誰が“道化師”を演ずることになるのか?――引き続き緊張する日々が続く。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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