消費税増税を閣議決定、不況下の日本経済に与える影響は?

ついに支持率20%を下回った麻生内閣

現地時間20日、米国ではオバマ氏が大統領に就任しました。24日には米ギャラップ社が、最新の世論調査でオバマ大統領の支持率が68%に達したと発表しました。就任直後としては、1961年のケネディ(72%)以来の高い数字といいます。

一方、日本はどうでしょうか。日本経済新聞社とテレビ東京が23〜25日に共同で実施した世論調査では、麻生内閣の支持率は、昨年12月の前回調査からさらに2%低下し、とうとう20%を割り込む19%となりました。逆に不支持率は3%上昇の76%に達しています。

支持率低迷の要因の1つに「消費税」があると考えられます。景気回復を前提に、早ければ2011年度からの消費税増税を可能にする政府・与党の方針について、世論調査では反対が67%との結果が出ています。

さらに、自民党支持層に限っても、消費税増税に対する賛成は41%にとどまっています。民主党支持層では賛成が16%、反対が80%という結果が出ています。

経済情勢が悪化する中で、そしてこれだけ反対の声が強いにも関わらず、麻生総理はなぜ消費税増税に固執するのでしょうか。

麻生総理が消費税増税に固執する理由

消費税増税に関しては、増税よりも経済成長を重視する「上げ潮路線」を旗印に掲げる中川秀直元幹事長など、自民党内にも反対の声は聞かれます。そうした両派の対立の発端は、昨年10月30日の麻生総理の記者会見でした。

麻生総理は記者会見で、解散の先送りの正式表明と経済対策を発表しました。その中で、「大胆な行政改革を行い、経済状況を見た上で3年後に消費税引き上げをお願いしたい」と述べました。

「3年後」という中長期的な方針であれば反発を招くことはないだろうという読みがあったのかもしれません。しかし、その後、トヨタの赤字決算など未曾有の危機が到来、状況は一変してしまいました。

そうした危機的状況に対し、麻生総理は総額2兆円の定額給付金の交付を発表しましたが、党内外の反発を受け迷走。その迷走ぶりが支持率低下に拍車をかけたと見られています。

であるからこそ、自身の発言の“ブレ”に神経質になった麻生総理が、既に表明している消費税増税に固執している、との見方もできるかもしれません。また、消費税増税の必要性はこれまでも語られましたが、あの小泉純一郎元総理でさえも正面から取り組むことを「逃げてきた」部分があります。その小泉元総理に対する対抗心も、増税に固執する遠因なのかもしれません。

いずれにしろ、消費税増税への道筋を示す税制改正関連法案の付則を巡って繰り広げられた自民党内の攻防は、1月22日、麻生総理と中川氏が折衷案を受け入れ、尻すぼみで終わりました。

その内容は、税率引き上げの実施日については、景気回復の状況を見極めながら別の法律で定める「二段階」の構成。実施日を定める法案の提出を11年度以降に先送りする余地を残し、政府・自民党内の混乱を収拾した格好になります。

「100年に一度の恐慌」で政治家に求められるものとは?

確かに、財政の厳しい現状や高齢化による社会保障支出増を考えると、消費税を早めに引き上げることが望ましいといえるでしょう。しかし、「100年に一度の恐慌」と呼ばれる今がそのタイミングなのでしょうか。

増税の前提として付則では、「経済状況の好転」が挙げられています。しかし問題は、経済を好転させるための短期、および中長期的な政策が明確に示されていないことにあります。

先にも述べたトヨタのように、国際優良企業と呼ばれた日本を代表する企業群が軒並み赤字に転落しているのです。私は、これまでの日本型発展モデルが終わりを告げたのではないかと考えています。そんな状況の中、たやすく経済状況が好転するとは考えられません。

具体的な政策を示すことができないのに、増税だけが先行している…。そう感じている国民も多いことでしょう。

景気は“気持ちの景色”と書きます。政府当局がこれだけ国民の気持ちとかけ離れた言動をしていては、先行きをますます暗くさせてしまいます。消費税増税が必要なら必要として、その前にやるべきことがあるのではないでしょうか。

今、私たちが政府に期待しているのは、自民党か民主党のどちらが政権をとるのか、ということではなく、いかにしてこの閉塞感漂う現状を解消するのか、ということです。

麻生総理、そしてそのほかの全ての政治家の方は、そうした認識をしっかりと持って、言動に責任を持ってもらいたいと思います。そうしなければ、日本の株式市場が、国内外の投資家にとって魅力的なものには決してならないでしょう。

  • はてなブックマークに登録はてなブックマークに登録
  • BuzzurlにブックマークBuzzurlブックマーク数
  • [clip!]この記事をクリップ!

トラックバック

トラックバックはまだありません。

この記事に対するTrackBackのURL

最新コメント

コメントはまだありません。

name
E-mail
URL
画像のアルファベット
comment
Cookieに登録

プロフィール

木下晃伸(きのしたてるのぶ)

経済アナリスト、フィスコ客員アナリスト。1976年愛知県生まれ。南山大学法学部卒業後、中央三井信託銀行、三菱UFJ投信などを経て、現在は株式会社きのしたてるのぶ事務所代表取締役。(社)日本証券アナリスト協会検定会員。著書『日経新聞の裏を読め』(角川SSコミュニケーションズ)発売中。

投資脳のつくり方

マネー誌「マネージャパン」ウェブコンテンツ。ファンドマネジャー、アナリストとして1,000社以上の上場企業訪問を経験した木下晃伸が株式投資のヒントを日々のニュースからお伝えします。「株式新聞」連載をはじめ雑誌掲載多数。

メールアドレス: 規約に同意して

個別銘柄情報はこちら   まぐまぐプレミアム・有料メルマガ

なぜ、この会社の株を買いたいのか?
〜年率20%を確実にめざす投資手法を公開〜

ビジネス誌・マネー誌・テレビに登場するアナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)が責任編集のメールマガジン。年率20%を確実にめざすためには、銘柄選択を見誤るわけにはいきません。日々上場企業を訪問取材している木下晃伸が、投資に値する会社を詳細に分析、週1回お届けします。

【2100円/月(当月無料)/ 毎週土曜日】 購読申し込み