マーケットに「潮目」を作り出す「越境する投資主体」(その1)
見当違いのマーケット分析、損ばかりする個人投資家たち
世間には溢れるばかりの投資手法がある。「財務諸表分析」、「チャート分析」など、その多くが細かな数字を駆使し、一見したところ、説得力があるようなものばかりだ。このコラムの読者の方々も、無料・有料問わず、上記のような「投資情報」を利用していることだろう。しかし、胸に手をあてて考えてほしい。――「これまでの数字だらけの投資情報で本当に資産を増やすことができたのか」と。答えは「NO」、あるいは、「損はしていないけれども、そこそこのレベル」というのが現実だろう。では、なぜそんなことが生じるのであろうか。
個別の企業を巡り、その会社の財務諸表を分析し、割安な銘柄は「買い」、割高な銘柄は「売り」だとしばしば言われる。これは、株式の時価総額がその企業の創り出す価値(=企業価値)に収斂していくという理論に基づいている。だが、「財務諸表」を書いているのはあくまでもヒトである。間違いもあれば、あえてごまかしもする。最近の日興証券の不正会計騒ぎにも見られるように、財務諸表の世界に絶対はない。
一方、株価の推移を示すチャートは、「過去」を示していても、「将来」については語らないものである。「一番底」「二番底」などといっても、結局は騰がるときには騰がるということでしかない。このような2つの「数字だらけの投資情報」だけに惑わされているようでは、ただでさえ情報の乏しい日本の個人投資家は絶対に勝ち残ることはできない。
誰も語らない国際情勢分析と投資との隠微な関係
それでは一体どうするのか?―― 1つだけ解決法がある。今の日本のマーケットが、5月1日に解禁となる三角合併を控え、「外資による日本買い」というテーマを抱えているのは誰もが知っている。そうであるならば、これから日本を買ってくる外資系ファンドや投資銀行などの「買い手の論理」を徹底して学び、彼らに嵌め込まれるのではなく、彼らの行動を先回りして投資するというのが「正解」である。
でも、「身の回りに外資ファンド・投資銀行の知人はいない。教科書もなければ、参考書もないし、今、彼らが何を狙っているのかなどわからない」という人もいるかもしれない。しかし、そう嘆かないでほしい。米国系を中心とした外資ファンド・投資銀行の発想と行動パターンを把握する方法が1つだけあるのだ。それは、彼らが日本以外のマーケットで何をやらかしているのかを毎日追えばいい。
例えば米国系投資ファンドを考えてみよう。彼らの本部がNYにあったとする。世界中の金利差や、内政リスク、あるいは資源開発の状況などを見て、彼らは世界各地で投資をし、利益確定させては別の場所へと投資することを繰り返している。そう、彼らはいわば「越境する投資主体」なのだ。そうであるならば、彼らが別の国で仕掛けた買収モデルは、日本のマーケットでも使ってくることであろう。それを海外メディアの報道からいち早く読み取ることで、明日の日本のマーケットでの投資に役立てればよいのである。越境する投資主体が国境をまたいでマネーを動かすとき、小波のように世界でさまざまな事件が起きる。これをマネーが織り成す「世界の潮目」と呼んでおこう。
「世界の潮目」を織り成すイスラムファンドの狙いはどこか?
世界中のメディア報道をウォッチすることで「世界の潮目」を連日追い、その中から日本の個人投資家にとってのヒントを読み取るメールマガジン『元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る』の中では、これまでそうした越境する投資主体が織り成す「世界の潮目」としていくつかのパターンを紹介してきた。
その中で、とりわけ昨年末から目立ってきたのが、いわゆるイスラムファンドの動きである。欧米の価値基準とは異なる、イスラム世界独特の戒律に則ったこのファンドは、今や金融界を圧倒するトレンドとなりつつある。なぜなら、中近東を含むイスラム世界とは、とりもなおさずオイルマネーの源泉でもあるからだ。それでは、そうしたイスラムファンドは一体、何を今狙っているのか?日本の株式マーケットとの関係では何がいえるのか?――次回はこの点についてさらに考えてみることにしよう。(つづく)
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筆者プロフィール
名前:原田武夫(はらだ たけお)
1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。
2005年3月末をもって自主退職。
現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表。
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