投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。
フランスに決闘を申し込んだウラン大国・ニジェールの野望
「飼い犬」に手を噛まれたフランス
かつてはアフリカ大陸を大英帝国と二分していたフランス。そのフランスに、最近、「決闘」を申し込んだ国がいる。かつての植民地国・ニジェールだ。
7月28日に出されたフランスの経済紙『ラ・トリビューン』によれば、フランスを代表する原子力メーカーであるアレバ社がニジェール北部で活動する反政府ゲリラを支援したとしてニジェール政府が糾弾。ついにはその代表を「国外追放」したことで火がついたのだという。
これに対して、旧宗主国・フランスを率いるサルコジ大統領は、怒るどころか、「アレバ社とニジェール政府との間の調停を試みたい」と平身低頭な姿勢。ニジェールがしかけた決闘の第一ラウンドは、どうやらニジェール側の優勢となっているようだ。
なぜニジェールがここまで高飛車な態度に出られるのかというと、そこに豊富にあるウランにその秘密がある。ニジェールは世界第3位のウラン産出国だ。私たち日本人にはあまりなじみがない国だが、この国にそっぽを向かれると、フランスの原子力・兵器メーカーは立ち行かなくなる。そこで、何につけても実利志向のサルコジ大統領は、まずはポーズとしてニジェール政府をなだめにかかったということなのだろう。
リビア・ディールで声高に批判されるフランス
来年12月に迫った米国大統領選挙。原子力関連企業の後押しを受ける民主党がそこで勝利する可能性が高い今、世界的に「原子力ブーム」が起きている。そうした流れを米国とともに推し進めているのがフランスだ。
しかし、そのフランスの時にあくどいやり方に、今、特に欧州で反発の声があがっている。とりわけ糾弾の的となっているのが、フランスがリビアに対する原子炉供与に応じたことだ。
リビアといえば、あのカーリー・ヘアにサングラス姿の「カダフィ大佐」が率いる国である。そのリビアを、ブッシュ政権はついこの間まで「悪の枢軸」と激しく非難し、イラク、北朝鮮とならぶ「世界のならず者」扱いをしていた。
そのリビアについて、米国、そして英国が手のひらを返すように政策を変更したのが2003年。それ以降、リビアはあたかも「普通の国」のようにふるまい、欧米はせっせとリビアとのビジネス・トークに励み、ディールを行ってきた。
フランスにしてみれば、今回の原子炉供与はそのリビア・ディールの1つにすぎないということなのだろう。しかし、何せついこの間まで大量破壊兵器をつくっていたと糾弾されていた国なのである。そこに、ひょっとしたら軍事転用されるかもしれない原子力技術を与えるとは、素人でもすぐに「矛盾」しており、「何かが違う」ことに気づくことだろう。
フランスは一体、何に焦り、何を奪い取ろうというのか。大義なきサルコジ外交の向こう側に、大きな落とし穴がないかどうか、マーケットでも注目が集まっ
ている。
欧米の戦略に巻き込まずに個人投資家が生き残る方法とは?
まさに「欧州事情は複雑怪奇」としか言いようがない状況が、フランス、そして原子力をめぐる現状にはある。そしてそこを巧みに突き、かつてのボスであるはずのフランスまで脅そうというのがニジェールの目論見なのだろう。
金沢(9月15日)、そして仙台(9月22日)で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでは、このような複雑怪奇だが、明らかに日本の個人投資家にとっても無視できない、原子力をはじめとする世界のマーケットとそれを取り巻く内外事情の今を御説明していきたいと考えている。ぜひ、ご来場いただきたい。
もっともこのように言うと、「ニジェール?関係ないでしょ」と思われるかもしれない。しかし、フランスのアレバ社が日本を代表する原子力メーカーである三菱重工の提携パートナーと聞けば、この問題の深刻さはきっとおわかりいただけるだろう。そう、もはやマーケットに国境はなく、個人投資家が得るべき情報にも国境はないのだ。
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- 筆者プロフィール
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- 名前:原田武夫(はらだ たけお)
- 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
- 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
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