『国際政治経済塾』

投資のチャンスを確実にモノにするには、世界にアンテナを張り巡らし、お金の流れを機敏に察知する必要があります。元外交官の経験を活かし、一見違う視点で、世界の政治とお金の関係を、リアルタイムで説明します。

ミャンマー情勢の緊迫化と中国バブル崩壊の関係

北朝鮮問題の「裏番組」としてのミャンマー情勢?

日本では何気ない日常が続いているが、世界は巨大な渦に巻き込まれ始めている。怖いのは、その渦が見える人には見えるのに、見えない人には全く見えないということだ。


その渦の1つが、緊迫するミャンマー情勢。選挙で大勝したのに幽閉され続けている悲劇のヒロイン、アウン・サン・スー・チー女史によるあからさまな呼びかけがなかったにもかかわらず、突然はじまった僧侶たちの大デモ行進。その数は日ましに増え、やがて何万人もの人々が街路へと出た。まさに、「書を捨てよ、町へ出よう」(寺山修司)といった展開だ。


なぜ突然「今」、こんなに大規模なデモが始まったのか、必ずしも納得の行く説明をメディアが行う暇もなく、軍事政権側が「お決まり」の大弾圧を開始。僧侶たちへの殴打はやがて外国人にも飛び火し、ついには日本人カメラマンの尊い命までもが失われた。


そんな中、ワシントンから聞こえてきた声がある。


「ミャンマー情勢が風雲急を告げた背景には、米国がいよいよ中国を追い詰めはじめたという事情がある。とりわけポイントは、北朝鮮問題。六カ国協議が北京で行われるのと相前後して、緊迫化してきたミャンマー情勢が解決に向かうとしたら、そこには米国の仕掛けがある。なぜなら、米国は北朝鮮問題にからめてマカオの銀行に発動したのと同じタイプの『金融制裁』を、ミャンマーに関係する国や企業にかけようと動いているからだ。中国としては、そんな最悪の事態は是非とも避けたいはず…」


六カ国協議は9月28日に事実上閉幕。不思議なことに、それと同時にミャンマーをめぐっても「軍事政権が再び事態を掌握。デモ隊はせん滅」といった報道が流され始めた。北朝鮮とミャンマー。両者と緊密な関係にある中国が、その間に見せた「本当の動き」が気になるところだ。

衛星がとらえたミャンマーでの大弾圧

もっとも油断はできない。米国は「あの手この手」で、ますますミャンマー、そして中国を追い詰めつつある。そのことは、世界のメディアをウォッチするとくっきりと浮かび上がってくるのだ。


たとえばドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙は、「衛星写真がはじめて証拠を示す」(9月28日付)と題する記事を掲載。米国の商用衛星の写真を分析することで、2001年から今日まで、ミャンマーの東部で組織的な破壊行為・人権弾圧が行われてきたことが判明したと大々的に報じた。


こうした衛星写真分析を行ったのは、American Association for the Advancement of Science という団体。科学者による民間団体であるとはいうが、あまりにも精緻な分析には驚かされる。


しかも、この記事によれば、ブッシュ政権の要人たちもこの「写真分析」に少なからず関与しているようだ。少数民族であるカレン族が住んでいる地域で、集落が次々に消えている写真を見れば、もはやミャンマー政府をかばう者はいないであろう。


しかし、ここで怒りのこぶしを振り上げる前に考えるべきことがある。「なぜ、よりによって今、こんな写真の存在が大々的に報じられるのか」ということだ。


そしてまた、写真におさめられているのがミャンマー東部の上空写真であり、基本的にはタイ国境に沿っているが、少し北に行けば中国と国境を接している地域であることも、大変気になるところだ。「ミャンマーでの大弾圧」に「中国」というファクター(要素)が混ざり合っていることが、「動かぬ証拠」である画像の形で残されていたとしたら、いったいどうなるのか?

すでに「カウントダウン」は始まっている!

福岡(11月10日)・広島(11月11日)で開催する情勢分析セミナーでは、このあたりの最新事情分析について、私なりの考えをじっくりと述べ、聴衆の方々と一緒に考えてみたいと思う。


ミャンマー情勢については、実は私たちの国=日本も大変なやり玉にあげられつつある。なぜなら、ミャンマーには現在の軍事政権になって以降も、私たちの税金によって成り立つ「経済協力(ODA)」が大量に与えられているからだ。ワシントンでは早くも、仮に米国が金融制裁をかけるとしたならば、日本企業も「ミャンマーの軍事政権を支えたもの」としてその対象になる危険性があるとの情報が駆け巡っている。


同じことは、日本だけではなく、フランス、そしてインド、韓国などについてもいえる。これらの国々は、中国に負けじとミャンマーへの投資を広げてきた経緯がある。そこへ金融制裁がかけられたとしたら。まさに「一網打尽」とはこのことだろう。


マーケットの深部では今、中国バブル第一次崩壊への1つの「仕掛け」として、ミャンマー問題がクローズアップされつつある。現地の人々の意向とは無関係に、金融資本主義の中、翻弄されるミャンマー。その運命を嘆くばかりではなく、「その次の世界」を思い描き、あるべき道を探る勇気と努力が、私たち日本の個人投資家には必要になってきている。

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筆者プロフィール
  • 名前:原田武夫(はらだ たけお)
  • 1971年生まれ。1993年東京大学法学部を中退し、外務省入省。
  • 経済局国際機関第2課、ドイツでの在外研修、在ドイツ日本国大使館、大臣官房総務課などを経て、 アジア大洋州局北東アジア課課長補佐(北朝鮮班長)を務める。2005年3月末をもって自主退職。現在、原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。
  • ⇒原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)公式ウェブサイト

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